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まだ静かなキャンパス。
変わらない朝。
教室に入り、いつもの席に着く。
「詞おはよ、今日も早いね」
前の席に座る詞が、ゆっくり振り向く。
「おはよう、真愛はちゃんと起きたかな」
鞄からノートを出しながら、壁の時計を見る。
針はまだ余裕のある位置。
「来年は同学年かもね」
「…残念ながら、来年も先輩だよ」
「真愛、おはよう」
「今日は少し早いね」
真愛が隣の椅子を引いて、そのまま腰を下ろす。
机に肘をついてこちらを見ている。
「結愛が起こしてくれた」
「相変わらず仲良いね」
「澪花ちゃんは元気?」
少しだけ、今朝のことを思い出す。
「今日も走って改札抜けてたよ」
「澪花ちゃんも相変わらずだね」
教室の中に少しずつ人の気配が増えていく。
「結愛と澪花ちゃんて?」
詞が小首を傾げる。
「詞は会ったことないか。結愛は私のお姉ちゃん」
「真愛お姉ちゃんいたんだ」
「そ、で澪花ちゃんは律のお姉ちゃん」
「あれ、律ひとりっ子じゃなかった?」
「お姉ちゃんみたいな人ってだけ」
「お姉ちゃん兼、未来のお嫁さんでしょ?」
「まあ、そうだね」
一瞬、空気が変わった気がした。
「恋人ってこと?」
「恋人じゃない、幼馴染」
真愛が呆れたように息を吐く。
「産まれてからずーっと澪花ちゃんしかみてないくせに、いまだに何も言わないんだもん。へたれ」
「言う必要がないんだよ」
「言わなきゃ永遠に幼馴染だよ」
「…律には理解できないみたい」
言わなきゃ永遠に幼馴染。
僕しか道がないのに?
「澪花だって流石に一本道で迷子にはならないよ」
「なんの話してるの…」
教室のざわめきが少しずつ大きくなっていく。
ドアが開く。
「詞、前向いて」
ノートを開き、ペンを握る。
隣はノートすら出していない。
本当に同学年になってしまいそうだ。




