14 これでいいんだ
また、数日経ったある日、教室に着くと、
「黒田、放課後話がある。」
と呼び止められ、白坂から教室に残るように言われた。
放課後、教室に誰もいなくなると、
「返事を聞きたい。」
と、言ってきた。
他の女子とあんなに楽しそうに二人でいるのに、まだ、私のこと言っているの!?
とても嫌な感情が全身を満たしていく。
白坂と会って、赤山さんという友達ができて、少し薄れてかけていたあの暗い渦が、また色濃く私を静かに沈めていく。
「なんで私に付きまとうの?なんでこんな態度とっているのに一緒にいてくれるの?他に仲がいい子がいるじゃない!分からない…分からないよ…。」
あんな笑顔私にはくれないのに。
自分の心が苦しすぎて行き場のない、答えを出したくない心を、白坂にぶつけてしまっていた。
それが分かっても止められず、
「分からない!全然わからない!」
「じゃあ、考えてみてよ。」
この状況で、こんな私をみて、やっぱりそんなふうに笑うんだね。
余裕そうな、駄々っ子をみるような目で。
その目を見ていたら、どうしようもない感情が込み上げてきた。
「…迷惑なの。本当に嫌!白坂のこと大嫌い!もう私に付き纏わないで!」
勢いで口から出た言葉はもう戻ってこない。
絞り出すように叫んで白坂を見ると、はっと我に返った。
何の感情も読み取れない、怖いくらい無表情の白坂の顔が目に映ったからだ。
「えっ…!?」
それからすっといつもの表情に戻って、
「悪い、黒田。もうしないようにする。」
それだけいうと、教室を出て行ってしまった。
「…ふぇ…。」
その場に座りこみ、静かに泣いた。
もう、本当に白坂は、私の前からいなくなったのだ。
自分でそうした。しばらく泣いて落ち着くと、深呼吸をした。
これでよかったんだ。私みたいなボッチの人間に、あの人気者は手に余る!
「うん!よし!」
自分に気合を入れると思い切り立ちあがる。
「いつもだったら、「黒田、涙腺緩すぎ~」とか言って笑ってそばにいてくれるんだろうな、白坂は。」
乾いた笑いが出た。
もう…いない…んだな。私がそうした。私がそうしたんだ。
苦しかったじゃない。だから、これでよかったんだ。
私は一人で大丈夫だから、私みたいなのにかまっていたら、白坂の人生台無しにしてしまうよ、きっと…。
そうだ、これでよかったんだ。これで…。
今、気のすむまで泣いて、そしたら忘れよう。そうしよう。私はできる。
自分の人生で最後まで一緒にいるのは自分だけ。
出会っても、人とはいつか分かれる。
それが“今”なだけ。それだけだ…。
気が済むまで泣いて、家に帰った。




