#6
ハンドルが重い。アスファルトを擦る鋭い音が聞こえる。
三郎「くっそ…!」
強引にハンドルを切りアクセルを踏む。
なんとか運転できているが次、まともにもらったら終わる。
三郎「撒くぞ!シートベルト確認しろ!」
大きい街道に向かう。バックミラーに黒塗りのバンが数台、こちらに向かってきた。
三郎「もう追いついてきたか…」
どうする。タイヤが一個潰れてスピードは出ない。んでもってあいつらはまだ銃がある。数でも負けてる。ここまでか。いや…
三郎「舐めんな!」
T字路にフルスロットル。パーキングブレーキに手を添え、衝突寸前。0.1秒のズレも許されない。
次の瞬間。ーー曲がった。90度。
ドリフト。タイヤが地面を掴む力。それを巧みに使い、車の向きを変える。
90度。本来なら無理である。しかし、三郎の身体がその人間離れした曲芸を憶えていた。
バンは急には止まれない。
三郎「まるで闘牛だな」
マントに魅せられて、それらは慣性によって次々とぐしゃぐしゃにされていった。
街道を横切り、人気の少ない住宅街へ入る。
車は、片輪を失いながらも、なお三郎の操縦に応えていた。しかし、限界は近かった。
残る二台バンが距離を詰める。
三郎「そろそろタイヤ交換したいんだが…」
住宅街の網目のように入り組んだ細道を三郎は次々に曲がっていく。ガタガタと揺れる車体。
しかしまだ後ろからエンジン音が聞こえる。
三郎「しつこい!」
三郎は鋭くステアリングを切る。狭い十字路。
カーブを曲がる時、僅かに見えた左後輪。彼らは見逃さなかった。
ーーーバン!
鋭い音と同時に、車体が傾いた。
三郎「しくった!」
左後輪が弾けた。しかし、それと同時に左から声が聞こえる。
??「次の角を右に曲がりな」
左を向くと、そこには別の車体。普通のsuv。ただ、何処から来たかわからなかった。
助手席の男が窓から身を乗り出す。アサルトライフルをバンに向け、次の瞬間、バンのタイヤの前輪がパン!と音を立てて弾けた。
走行不可になったバン二台をバックミラーで見ながら右に曲がり、車を止める。
先ほどのsuvも、こちらのそばに止まった。
2人が車から降りてきた。助手席に座っていた男が口を開く。
助手席の男「久しぶりだな、スマッシャー」
久しぶり、と言われたがやはり全く憶えていない。しかし一つ確かなことがあった。
俺は、この声を聞いたことがある。




