軍勢とロマン
クライマックスとは……
済みません。
25階層での戦いも6日目となり、敵の現れる数と頻度も増えた事で、戦況も悪化しつつあった。
「うーん、そろそろ増援の投入するか」
「今は持ち堪えてますが、増員の二千名も疲弊し始めましたし、残りの三千名の投入も致し方ないかと」
ミノタウロスを駆逐し、現在の敵モンスターは大型昆虫へと変わっている。
ミノタウロスが出なくなってから、大型のアリモドキが現れたのだが、これがヤバかった。
倒せばたおす程に数が増えてゆき、対応しきれない数となって押し寄せてきたのである。
最終的に、仁の魔法で焼き払い事なきを得たが、やはり配下の者達が倒せば増えることとなり、対応に追われることとなった。
そして、仁の二度目の魔法で数が減ったことで魔法で焼却、もしくは凍らせて砕けば増えないと分かり、大半の兵力を前衛に充てて、魔術師たちに倒させている最中である。
「わかった。 召喚モンスターも増やして対応しよう」
「はっ、私も戦略を練り直し、対応致します」
「うむ、あと1日だ。 何が起きてもアリア様だけは死守するぞ、いいな」
「「「はっ!」」」
キングやジェネラル達は仁の訓示に従い、各々の陣へと戻っていった。
◇ ◆ ◇
戦線の後方に、対昆虫用にゴブリンメイジやシャーマンの召喚魔方陣を設置する。
MPを使い切り次第に帰還為るようにと命令を与え、シャーマンが前衛に強化と回復魔法で支援し、メイジ達がアリモドキ共を焼き払い、中には自爆する者達すらいた。
この戦法に仁は頭を抱えたが、MPを使い切って帰還するなら、『見事に散ってみせます』と特攻を仕掛け始めたのである。
ファイアを放ち、敵に纏わり付き自爆する様に味方陣営から賞賛の声があがり、次々とアリ共を屠り焼き払っていった。
「お前ら、忠誠心が高すぎだろ…… 疑似生命体であるからできるんだ。 いいか、お前たちは生きて戦線の維持に注力しろよ!」
「「「ハイッ!!」」」
戦線の維持に、まさに肉壁となって戦う戦士たちは涙を流しながら、仁に敬礼をする。
◇ ◆ ◇
「今度は何を作っているの?」
「ん? 粘着剤と発火薬だな」
陣幕の片隅で薬を調合し、量産を開始した処でジュリアがやってきた。
「ふーん、何に使うの?」
「アリモドキに投げて、ファイアを放てばMPを節約できるだろ」
「なるほどね。 なんだかんだで、部下たちに優しいのね」
「そうでもないさ。 この内の何割かで事故が起きるから、その対応もせにゃならんのだ。 ただで楽は出来ないよ」
「フフフ、貴方わかってないわね。 あの子達のことも分かってないでしょう?」
「なんの事だ?」
「あの子達の忠誠心は、貴方の優しさより、そういったケアをちゃんと考えて、実行しているところよ」
部下達に何かをやらせるには、対価はもちろん、サポートやケアも必要だと考えて動くことは上の役目であると、仁は常々思っていた。
「なんだそれは? 当たり前のことだろうが、何を言っている?」
「はいはい、私はもう行くわ。 お邪魔しました~♪」
仁の疑問には答えぬままに、微笑むジュリアは戦場へと向かった。
「なんの事だかさっぱりだ。 これだから女は解らん…… まあいい、早いところ持っていかんとな」
ジュリアが去って、手が止まっていた仁は薬品の量産を再開するのであった。
◇ ◆ ◇
戦線に戻った仁は、『発火瓶』の使い方を教えて後衛に持たせる。
MPを回復しながら、発火瓶をアリモドキに当ててファイアを放てば、MPが少なくとも戦力になるので、魔術師たちはこぞって持参していく。
「あとは回復薬の追加だな」
「ありがとうございます」
大量に作った発火瓶をアイテムボックスに詰めて、キングやジェネラルの陣幕に届けると感謝された。
テレポートが可能な仁には朝飯前の事であるのだが、仕える主が物資の配送をしていること自体がおかしいのである。
「構わんよ、猫の手も必要なんだ、これぐらい問題ない」
「呼んだかニャ?」
仁の言葉で、ヒョッコリと現れたミケは猫化していて、ルナに抱かれている。
「お前たちも来ていたのか」
「ん、あたしらはアリンコをイジメにきたニャ」
「これが『発火瓶』ね? アリに当てればいいのよね?」
ルナはアイテムボックスから発火瓶を取り出し、自分のポーチへと移す。
「お前たちには、こっちが良いだろう」
「ん? 何これ?」
「なんニャ?」
仁は自分のマジックバッグから、細長い棒を取りだす。
「これは氷結魔法『フリーズン』をこめたアイスロッドだ。 アリ共の腹に撃ち込めば、躰を氷結魔法で凍らせることが出来る。 試作品だから使い方に難があってな、お蔵入りしたものだ」
魔法をエンチャントして、撃ちだすことを目的として作ったロマン武器であった。
「なんでそんな物を……」
「まあゲームみたいに、魔法を撃てるか実験したんだが、どれも殴らないと発動しなかったんだ。 要するに失敗作だな」
「普通はファイアとかじゃないの?」
「んなこと出来るか! 実験で、そこら辺に火を放つなど馬鹿の極みだ。 危なくて実験にならんわ」
実験が成功していれば、ファイアボールで作ってはいた筈であるが、実験段階でのファイアボールは躊躇するものがあった。
「ニャハハハ、そらそうニャね」
「確かに…… 放火魔には為りたくないわね」
「場合によっては、火だるまになるかもな……」
「「ひっ!」」
失敗して、全身の毛が黒焦げとなる姿に二人は身を震わせる。
「おヒゲが燃えるニャ……」
「それは避けたいわね……」
「まあ、この失敗によってこんなのが出来た」
新たに取り出した真っ赤な剣に、全員が喉をならす。
「うわぁ……」
「カッコいいニャ!」
「レドにはちょうどいいか」
「おお…… こ、これは」
「フレイムブレード、斬ったものを燃え上がらせる、炎の剣だ」
「「「おおー!!」」」
この日、調子にのったマルス達によって、アリモドキたちは駆逐され、残る七日目を迎えることとなった。
最終日には何がやって来るのか
乞う御期待。




