女子力の高み
ちょっと息抜きがしたくて……
「第1は後退! 第4は左側面より前進せよ!」
ミノタウロスとの戦闘が開始されて、3時間が経過した。
今のところ、主導権はこちらが握り、戦力はこちらの方が上となった。
戦闘開始早々にマルス達が突撃し、ミノタウロス達の数を減らしたところで、第1から第3分隊が突入して戦線を押し上げることに成功した。
ルナやジュリアはミノタウロスを牽制したり、数を調整しつつ討伐隊との連携をとり、戦線の維持に協力していた。
◇ ◆ ◇
「お疲れさま。 うん、何とか収まったな」
「お疲れさま~って、なに見てんの?」
仁はルナとジュリアを労うが、仁の視線は別のものを見詰めていた。
「これか? 現在の戦況を確認していたんだ」
仁は、情報パネルを可視化して二人に見せる。
「へぇ、便利ねそれ」
「どこまで見れるの?」
「んー、こんな感じだな」
仁はスキル『情報』を操作して、現在確認できる場所のパネルを開き、ルナたちに見せた。
白のダンジョンの入り口から、白の居る制御室に各所の施設や集落、ワーウルフの里の各所を映しだす。
「うわぁ…… あっ! 子供がいるわ。 この子はなんでここに居るの?」
「ん、どこどこ?」
ルナはジュリアに、子供が映されているパネルを指差して教える。
「ああ、白か。 こいつはこのダンジョンの『ダンジョンコア』だ」
「えっ? ダンジョンコアなの?」
「へぇ、こんな子供がねぇ……」
「因みに、こんな感じで俺が設置した監視カメラの映像も見える」
カーラの町や、王都に設置した監視カメラの映像も映しだす。
「あっ! 人間の街だわ!! ねぇねぇ、ここ? ここに行けるのよね?」
ルナは王都の町並みを見詰め、目を輝かせている。
「ふーん…… 私は行けないからアレだけど、ルナは入れるの?」
「ああ、認識阻害の指輪を為ていれば入れるぞ」
「えっと…… あ、あった。 コレを…… ど、どう?」
ルナはポーチから指輪を取り出し、指にはめると姿が獣人へと変わる。
「あら、かわいいわね。 いいわねそれ」
「フフフン~♪ いいでしょう? でもね、これって鏡で自分を見ても、どう変わったのかが見れないのが残念なのよね」
「なるほどな、今後の改良点だな。 ほれ、これなら見えるだろ」
仁は、自身の肉眼に見えるルナの今の姿を情報パネルに映しだす。
「えっ? こ、これって…… これが私なの?」
「そうね、私にもそう見えているわよ」
ルナの視線の先、ルナの姿が映しだされている情報パネルには、銀髪の美少女が映っていた。
「う、うそ…… 私がこんなに……」
「なんだ? 不満なのか?」
「違うわよ。 貴方のその目は節穴かしら? 何処から見ても美少女でしょ?」
ワナワナと震えるルナを横目に、仁は首を傾げて『誰が?』という顔をして、『馬鹿なの?』という顔をして仁を見詰めるジュリアがいた。
ルナの普段の姿は、15~16才の小柄なワーウルフであり、銀髪の美少女(?)といった犬顔の少女であり、顔を含め全身に毛が生えてるので、人間の眼からして見ればかわいいワンコ系女子である。
そんなルナを見ている仁にとっては、いくら人間に近い今の獣人のルナを見ても、仁がうんともすんとも思わないのは、美少女であっても子供としか思わず、女性として認識していないのである。
すべては、いつも仁の傍らに寄り添う『女神アリア』の影響であるのは言うまでも無いことであった。
★ ☆ ★
「フンフンフン~♪ フフフンフン~♪」
「…………、ご機嫌ね、ルナ」
仁が前線に戻り、食事を済ませたルナとジュリアはゆっくりとしていた。
「そう? この戦いが終わってからさ、あの街に行けると思ったら、楽しみなのよね~♪」
「そうね、たぶんモテモテになるでしょうね」
獣人へと変わった姿に、我を忘れて見惚れていたルナは、恥ずかしさでごまかし始める。
「えっ? エヘヘ、バレてたか~。 でもね、それだけじゃないのよ。 街で暮らしたいの」
「わかっているわよ。 貴方はずっと人を求めて居たんだもの……」
ジュリアは、ルナと出会った時のことを思いだす。
ルナはジュリアから逃げまわり、ジュリアはルナを逃さぬように追い詰めていた。
そして、ルナは逃げ場をなくして『これはダメだ』と死を覚悟した時、ジュリアはルナに日本語で訊ねた。
『貴女、転生者よね?』という言葉で、ルナはジュリアに泣きつき喜んだのである。
当時、ルナが泣きじゃくり人を求めて縋る姿に、ジュリアは共感を覚え共に生きてきたのであった。
「ごめんねケロちゃん…… でもさ、今はあいつの転移魔方陣があるし、何度でも帰ってくるからね」
「大丈夫よ、気を遣わなくとも私には皆が居るし、彼についていくと決めたのだし、もう寂しくはないわ」
ルナとジュリアは共にしんみりとしたが、ルナはそんな空気に堪えきれず話題を変えた。
「でもさ、あんなに可愛い私を何とも思わないってさ、絶対どこかおかしいわ」
「あら、そんなこと彼女たちの前では口にしちゃダメよ。 罰が当たるかも……」
「ん? あっ! そっか、アリア様が居たわね。 納得、女神様がいらしては勝てる要素は皆無でしたね。 失礼致しました」
そんな会話を聞いていたサチコがふっと現れる。
「大丈夫よ、私なら」
「「ひいっ!?」」
ルナとジュリアは跳び上がる程に驚いたが、サチコは我関せずとその場から去っていった。
「こわっ!」
「そ、そうね…… まったく気付かなかったわね」
去りゆくサチコを目で追いながら、底知れぬ彼女の実力を垣間見る二人であった。
次回はクライマックス?の予定です。
書けるかどうかが不安ですが、頑張ります。




