戦況報告
血みどろの闘いを想像した方には、申し訳ありませんがありません。
白のダンジョン最下層の戦いが始まり、3日が経過していた。
戦況は一進一退、初日は優勢、翌日は敗戦一歩手前までに陥り、仁やマルスら主力メンバーによって押し返すことに成功した。
そして、3日目にジュリアとルナの参戦により、戦況は好転したのであった。
現在のところ、封印の完了には約7日程掛かることが判明して、アリアが封印の再構築に専念しているという状況である。
都合3日の戦いにおいて、戦死者300と数名、負傷者千名弱という状況ではあるが、倒した敵の数約3万弱という結果は、かなりの戦果でもあった。
そして、本日の殊勲を立てた約2名を労っているのではあるが……
「はぁ、美味しいわぁ。 やっぱり日本の食べ物は良いわね」
「うんうん、馴染みのある食べ物は尚更美味しいよね」
ジュリアの回復もすこぶる良く、思ったより早い参戦により、腹具合の方も良いらしく、ルナと一緒にかなりの量を平らげたのであった。
「あ、デザートはクレームブリュレがいいわ。 飲み物は紅茶で」
「クレームブリュレとか…… 私はなんにしようかしら」
そんな大食漢の二人に、イラッとした仁は文句をたれる。
「お前ら、ここを何処だと思っている、レストランじゃないんだぞ」
「「だって、ここに来ないと食べられないんだもん」」
「ちっ…… わかった、作ってやんよ!」
文句を言ってはみたが、殊勲を立てる程の二人の働きに対し、納得は出来ないが対価を払う為にも我慢する仁であった。
「ルナは、クレームブリュレだったな、ジュリアは何にするんだ」
「えっと、クリームあんみつが食べたいな」
「あっ、それいいかも。 あたしもそれにする」
「ふむ、クリームあんみつだな。 食べたら帰れよ、村の奴らも心配して待っている筈だ」
「「はーい」」
仁は仕方なく、ルナには特大のクリームあんみつを、そしてジュリアには業務用特大サイズのボールに、クリームあんみつをこれでもかと盛って渡すと、目を輝かせた二人は無言で食べだした。
夢中でクリームあんみつを食べる二人に、抹茶をいれた茶碗とドラム缶サイズのお椀をそれぞれの前に置き、仁は戦線へと戻っていった。
「はあ、美味しいわ。 またこうやって、美味しい物を食べられるなんて幸せだわ」
「そうね。 でもさ、ケロちゃんは如何すんの? あいつに付いていくの?」
ルナは、仁と町に行くと決めてはいるが、守護者であるジュリアではダンジョンから出られないという現実に疑問が残っていた。
「うん、そのつもりよ。 ダンジョンからは出られないけど、よそのダンジョンには転移出来るみたいだし」
「へぇ、そうなんだ。 意外だなぁ、ケロちゃんならもっとカッコいい人に付いていくと思ってた。 なんでなの?」
ジュリアは仁に興味があった。
なぜこれほどに精強な部下たちをもっているのか?
また、なぜ女神のアリア様が仁の傍に居るのか気になり、色々と興味津々であった。
そして、彼の眷族であり同じ種族であるジェットと出会い、その強さの異常性に気がつき、より興味が湧いたのである。
「フフフ、それはナイショよ」
「えっ? なにそれ? どういうこと?」
ルナの質問をかわしたジュリアは、謎多き仁に惹かれ始めていた。
いつか目的を達成し、人として戻れる日を夢見ているジュリアであった。
◇ ◆ ◇
最前線に戻ってきた仁は、戦況の確認を始める。
「どうかな? アイツらの後で何とか為りそうか?」
「はっ、邪魔な魔物はすべて排除され、負傷者の治療も終わり、戦線を押し上げることに成功致しました」
仁は、戦況を把握する為の地図を見やり、キングとジェネラルからの報告を受けた。
「そうか、それならいい。 アイツらを養うことで有利に為るのなら、幾らでも食わしてやるか」
「ん、あたしらもそろそろお腹がすいたニャ」
「そうだな、今のうちに食べておくか」
「「「やった、飯だ!」」」
やっとひと息つける時間も出来たことで、マルスやミケたちも空腹に気付き、仁は食事の許可をだした。
この日の戦いにおいて、ルナとジュリアが戦線に参戦し、不利な戦況の場所で暴れまわり、戦線の押し返しに一役かってくれた事は、大きな戦果でもあった。
そして、こうやって出来た時間的余裕を有効的に使い、戦線を維持しつつも兵員を入れ替えながら糧食を配り、全員に食事と休養を取らせる事も出来たので、彼女たちの功績は大きかった。
◆ ◇ ◆
「アリア様、食事をお持ちしました」
「はい、ありがとうございます」
アリアは封印の構築で動けないので、少量の水分と固形食で過ごしていた。
女神である彼女には、食事や睡眠も必要ではないのだが、ずっと一人での作業に対する仁なりの心遣いであった。
「どうですか? 辛くはないですか?」
「はい、ここから離れられないだけですし、危険もないですし大丈夫です」
仁に笑顔で応えるアリアは、やはり何時もと違っていた。
「そうですか、では少しですがここに居ますので、何かあれば言って下さい」
「はい」
そうは言ったものの、仁の用意した物を口にするだけで、アリアは何も言わずに封印の構築に勤しむだけであった。
そして、仁は去り際に思いついた。
作成の中から、あるアイテムを選び作りだした。
完成したアイテムをテーブルに置き稼働させる。
『ピピピン、ピピピン~♪ ピピピン、ピピピン~♪ ピピピピ……』
「あら、綺麗な音色」
「そうですか? お気に召したようですし、ここに置いて行きますね」
それは、仁が子供の頃に好きであった曲のオルゴールである。
駆動部のモーターには、極小の魔石をはめてあるので、スイッチをONにさえすれば、全自動で選曲出来る優れ物であった。
「お気遣い、ありがとうございます。 あの、仁さま……」
「はい?」
アリアは少し不安な顔をしていたが、仁の顔を見て不安を振り払う。
「いえ、何でもありません。 彼らも居るのですし、信じましょう」
「そうですか? では、行ってきます」
そう言って去っていく仁の背中に、アリアは祈る。
「ご武運を……」
7日という数字には、これと言った理由はありません。
フラグは……




