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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
124/206

進軍開始

いよいよ仁達と、魔神との長い長い闘いの始まりです。





「ぐはっ!」


 マルスが称号を得たと同時に、仁は崩れ落ち結界が消えた。


「大丈夫ですか!?」

「ケロちゃん!」

「だ、大丈夫。 それよりジュリアを早く……」


 倒れた仁をアリアはステータスを確認し、MP譲渡をしようとしたが仁に止められる。


「えっ? ジュリア?」

「えっと、『ジュリア』はケロちゃんの名前なの」


「「はい?」」


 仁の発した『ジュリア』という名前が、守護者の名前だと語るルナに、アリアとマルスが困惑する。



「ごめんね。 詳しい話は後でするわね」

「いいから、早く連れていけ」


 ルナは焦りながらも、守護者であるジュリアを抱え封印の間から撤退を開始する。



 ルナと守護者が封印の間から出た辺りで、聖なる気が徐々に薄れ始める。


「やはりジュリアが出ていくと、流石にここの空気も澱むか」

「守護者に、何か関係あるのですか?」


 アリアは仁の言葉が気になり、その答えを聞いた。


「彼女は『聖獣』の称号を持っていたんです」

「聖獣ですか……」


「封印の番犬として身を捧げ、結界を張ると同時に獲得したようです」

「なるほど、それで階層ごと聖なる気で満ちていたのですか」


 封印が解けかけて、その封印ごと結界で閉ざすなど、それだけでも高等すぎる技能であるのに、階層ごと聖なる気で満たすなど不可能である。


 実際、守護者ジュリアの張った結界は、何者かの助力がなければ『時空間を統べる』など、夢のまた夢でしかないのだ。



「早速、封印の解除を始めないと時間が……」

「あ、はい」


 仁は、解けかけた封印を見やり立ち上がった。


「マルスはここで待機してくれ。 もう直ぐ、ミケたちもやって来るはずだ」

「おう! 任せろ」


 封印の間の結界が解けて、封印自体が剥き出しになっている。

 仁はその封印を観察し、アリアはその後ろに控えていた。


「では始めます。 封印の解除が済み次第、アリア様は再度封印を開始して下さい」

「はい、お任せ下さい」


 仁はアリアに一礼をして、封印の解除を始める。



 仁の本来の役目として、封印の解除はダンジョンマスタースキル『分解』で可能である。


 だが、再度封印をしようというのであれば、話は違ってくる。

 分解は、対象を分解する能力であり、結界や封印を()()技能とは違うものである。


 分解で封印を解除すると、その地のマナや地脈すら分解してしまい、神獣の加護が篭もっているこの地の力すら、無くしてしまうのである。


 魔神の使徒を含め、魔獣の封印には神獣の加護がなくては為らない。


 なので、神獣の加護を残し、再度封印を構築して封印を施すには、女神であるアリアの力に頼るしかないのであった。



 すると封印の間の入り口が開かれ、ミケやレド、リウを含め配下の者達も現れ始める。


「皆、無事かニャ!?」

「まだ魔物は居ないようだな」

「ん、間に合ったみたいだな」

「早かったな、これからが本番だぞ」


 マルスと合流した援軍たちを、仁は認識する。


「うん、順調のようだな。 俺も頑張らないといかんな」


 仁は封印に向き直り、封印の解除を始める。


 封印の一部分が解けかけているので、その箇所には仁自身のマナで補強を試みるが……


「なるほど、こりゃ無理だな。 MPが足りそうにないな…… 仕方ない、解除を優先します」

「はい」


 仁はマナポーションをあおり、封印の解除を優先しだす。


 封印に触れて瞑想にはいった仁は、封印の解析にはいる。


 仁には解除に関するスキルは無いので、ダンジョンマスタースキルの情報と鑑定を駆使して、その解き方を解析して、封印の解除方法を探るしかない。


 この方法は、直接対象触れるしかないので、あまり使われない方法であった。


 同じ日に、同様の方法を取るなど殆どないのだが、今回は特殊な状況下であるので仕方がない事である。


「ふむ、なるほどな…… では、解除しますので、アリア様は少し離れて下さい」

「分かりました。 私は、封印の準備に入ります」


「よろしく、お願いします」


 そう会話を交わして、アリアは少し距離をとり、仁は封印の解除を実行する。



 封印の解けかけている箇所に、仁はマナを流し込み、封印の欠損部分から侵蝕を始めた。


(ん、やはりこれだな……)


 封印の欠損箇所に、魔神の使徒が残したウイルスを発見した。


 仁はそのウイルスを分解で消し去り、封印を魔方陣の知識を応用して、もう一度正常に書き換える。


(よし、次は封印の解除だな)


 封印の欠損部分を分解で削り、その箇所を魔方陣に置き換えていく。

 少しずつではあるが、すべてを魔方陣に置き換えれば解除は可能と分かり、それを実行するだけである。


 じりじりとMPが減ってはいるが、マナポーションの回復とあわせ、自動回復部分で補えているので問題はなさそうだ。


 マナポーションをあおりつつ、作業を進めること20分。

 封印すべてを魔方陣に置き換え、封印の解除を成功させた。


「封印の解除に成功! アリア様、お願いします!」


「はい、では封印を行います」


「マルス、ミケ、レド、リウはアリア様の護衛につけ! 他の者達は、魔物との戦闘体制に移行しろ!」


 仁の合図で、今も封印の間に入って来ている配下の者達も、行動を開始する。



 そして、封印が解かれたその開かれた空間から、ポロポロと小さな黒い塊が転がり落ちてくる。


 その黒い塊が集まり形を変え、やがて一匹の魔物へと変わり、産声をあげる。


「オオオ……」


 次々と産まれ、お互いを仲間と認識しているのか、徐々にその声が響き始める。



「始まったぞ!! 総員戦闘体勢! 順次、突撃を開始せよ! アリア様に、近寄らせるな!」


「「「オオーー!!」」」


 仁の号令は全配下にとどき、やがてうねりとなって突撃を開始する。



 仁がこの地に降り立ち

 始まりのダンジョンを制覇し

 モンスター軍を組織して

 主と呼ばれること9年と数カ月

 約10年の時が経過していた。


 仁達の軍勢と、魔神の使徒たちの軍勢との闘いが、この時を以て開始為れたのである。




時間経過は概ね10年としましたが、違和感がある方は感想の方へお願いします。

まだ始まったばかりで、話数に不安を覚える作者です。



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