進軍開始
いよいよ仁達と、魔神との長い長い闘いの始まりです。
「ぐはっ!」
マルスが称号を得たと同時に、仁は崩れ落ち結界が消えた。
「大丈夫ですか!?」
「ケロちゃん!」
「だ、大丈夫。 それよりジュリアを早く……」
倒れた仁をアリアはステータスを確認し、MP譲渡をしようとしたが仁に止められる。
「えっ? ジュリア?」
「えっと、『ジュリア』はケロちゃんの名前なの」
「「はい?」」
仁の発した『ジュリア』という名前が、守護者の名前だと語るルナに、アリアとマルスが困惑する。
「ごめんね。 詳しい話は後でするわね」
「いいから、早く連れていけ」
ルナは焦りながらも、守護者であるジュリアを抱え封印の間から撤退を開始する。
ルナと守護者が封印の間から出た辺りで、聖なる気が徐々に薄れ始める。
「やはりジュリアが出ていくと、流石にここの空気も澱むか」
「守護者に、何か関係あるのですか?」
アリアは仁の言葉が気になり、その答えを聞いた。
「彼女は『聖獣』の称号を持っていたんです」
「聖獣ですか……」
「封印の番犬として身を捧げ、結界を張ると同時に獲得したようです」
「なるほど、それで階層ごと聖なる気で満ちていたのですか」
封印が解けかけて、その封印ごと結界で閉ざすなど、それだけでも高等すぎる技能であるのに、階層ごと聖なる気で満たすなど不可能である。
実際、守護者ジュリアの張った結界は、何者かの助力がなければ『時空間を統べる』など、夢のまた夢でしかないのだ。
「早速、封印の解除を始めないと時間が……」
「あ、はい」
仁は、解けかけた封印を見やり立ち上がった。
「マルスはここで待機してくれ。 もう直ぐ、ミケたちもやって来るはずだ」
「おう! 任せろ」
封印の間の結界が解けて、封印自体が剥き出しになっている。
仁はその封印を観察し、アリアはその後ろに控えていた。
「では始めます。 封印の解除が済み次第、アリア様は再度封印を開始して下さい」
「はい、お任せ下さい」
仁はアリアに一礼をして、封印の解除を始める。
仁の本来の役目として、封印の解除はダンジョンマスタースキル『分解』で可能である。
だが、再度封印をしようというのであれば、話は違ってくる。
分解は、対象を分解する能力であり、結界や封印を解く技能とは違うものである。
分解で封印を解除すると、その地のマナや地脈すら分解してしまい、神獣の加護が篭もっているこの地の力すら、無くしてしまうのである。
魔神の使徒を含め、魔獣の封印には神獣の加護がなくては為らない。
なので、神獣の加護を残し、再度封印を構築して封印を施すには、女神であるアリアの力に頼るしかないのであった。
すると封印の間の入り口が開かれ、ミケやレド、リウを含め配下の者達も現れ始める。
「皆、無事かニャ!?」
「まだ魔物は居ないようだな」
「ん、間に合ったみたいだな」
「早かったな、これからが本番だぞ」
マルスと合流した援軍たちを、仁は認識する。
「うん、順調のようだな。 俺も頑張らないといかんな」
仁は封印に向き直り、封印の解除を始める。
封印の一部分が解けかけているので、その箇所には仁自身のマナで補強を試みるが……
「なるほど、こりゃ無理だな。 MPが足りそうにないな…… 仕方ない、解除を優先します」
「はい」
仁はマナポーションをあおり、封印の解除を優先しだす。
封印に触れて瞑想にはいった仁は、封印の解析にはいる。
仁には解除に関するスキルは無いので、ダンジョンマスタースキルの情報と鑑定を駆使して、その解き方を解析して、封印の解除方法を探るしかない。
この方法は、直接対象触れるしかないので、あまり使われない方法であった。
同じ日に、同様の方法を取るなど殆どないのだが、今回は特殊な状況下であるので仕方がない事である。
「ふむ、なるほどな…… では、解除しますので、アリア様は少し離れて下さい」
「分かりました。 私は、封印の準備に入ります」
「よろしく、お願いします」
そう会話を交わして、アリアは少し距離をとり、仁は封印の解除を実行する。
封印の解けかけている箇所に、仁はマナを流し込み、封印の欠損部分から侵蝕を始めた。
(ん、やはりこれだな……)
封印の欠損箇所に、魔神の使徒が残したウイルスを発見した。
仁はそのウイルスを分解で消し去り、封印を魔方陣の知識を応用して、もう一度正常に書き換える。
(よし、次は封印の解除だな)
封印の欠損部分を分解で削り、その箇所を魔方陣に置き換えていく。
少しずつではあるが、すべてを魔方陣に置き換えれば解除は可能と分かり、それを実行するだけである。
じりじりとMPが減ってはいるが、マナポーションの回復とあわせ、自動回復部分で補えているので問題はなさそうだ。
マナポーションをあおりつつ、作業を進めること20分。
封印すべてを魔方陣に置き換え、封印の解除を成功させた。
「封印の解除に成功! アリア様、お願いします!」
「はい、では封印を行います」
「マルス、ミケ、レド、リウはアリア様の護衛につけ! 他の者達は、魔物との戦闘体制に移行しろ!」
仁の合図で、今も封印の間に入って来ている配下の者達も、行動を開始する。
そして、封印が解かれたその開かれた空間から、ポロポロと小さな黒い塊が転がり落ちてくる。
その黒い塊が集まり形を変え、やがて一匹の魔物へと変わり、産声をあげる。
「オオオ……」
次々と産まれ、お互いを仲間と認識しているのか、徐々にその声が響き始める。
「始まったぞ!! 総員戦闘体勢! 順次、突撃を開始せよ! アリア様に、近寄らせるな!」
「「「オオーー!!」」」
仁の号令は全配下にとどき、やがてうねりとなって突撃を開始する。
仁がこの地に降り立ち
始まりのダンジョンを制覇し
モンスター軍を組織して
主と呼ばれること9年と数カ月
約10年の時が経過していた。
仁達の軍勢と、魔神の使徒たちの軍勢との闘いが、この時を以て開始為れたのである。
時間経過は概ね10年としましたが、違和感がある方は感想の方へお願いします。
まだ始まったばかりで、話数に不安を覚える作者です。




