達成
奴が来ます。
それだけです……
ジュリアに、封印の再生手順を説明したのち、仁は結界の解除に取り掛かる。
「結界を解除後、君はルナと一度撤退して欲しい。 ルナにはエリクサーを渡してあるから、完全回復するまでは待機して欲しい」
「エリクサー…… ゲームと同じエリクサーなのかしら?」
ジュリアはエリクサーを知っていたようで、知識のすり合わせをしてくる。
仁の作ったエリクサーは、仁の知識が基準となっているが、効果はこの世界での効果となっているので、ルナやジュリアが知っているものとは違う、仕様となっているのである。
「効果は同じだが、完全回復するのに時間が必要なんだ。 だから、余り無茶はするなよ。 一応、ここは現実の世界でもあるから、回復した後の躰の負担もでるはずだ。 ならし程度なら動けるだろうが、しっかり休んで、戦闘は俺たちに任せとけ。 いいな」
仁の忠告を聞き、ジュリアはニッコリと微笑み承諾した。
「はーい。 貴方って良い人みたいね、安心したわ。 でも、戦力的にキツかったら、私もでるからね」
「まあ、こっちにも切り札は何枚かあるし、君と同じくケルベロスのジェットが居るから、たぶん出番はないと思うぞ」
今回の作戦には連れてきてはいないが、いざとなれば召喚で呼べるので問題はない。
「あら、そうなの? ならお任せしましょうか。 頑張ってね」
「ああ、頑張るさ。 こっちもたまには本気を出さないと、部下たちに示しがつかないからな」
ジュリアとの話しも終わり、結界の解除に取り掛かる。
「では始めるからな、結界が無くなれば無防備となるが、直ぐさまルナが回収にくるから安心してくれ。 また後で会おう」
「はい。 また後でね」
ジュリアは疲れたのか眼を閉じ、眠りにはいったようだ。
「よし、気張りますか」
仁は再び瞑想にはいり、結界の解除にはいった。
── ── ──
仁が守護者に寄り添い、瞑想に入ってから数分後、結界が揺らぎ始める。
守護者と巫女たちの魔力のリンクも途切れ、守護者の躰が揺らいだ。
「貴女たちは撤退を開始、あとは私がケロちゃんを回収するから、村に受け入れの準備を始めさせて。 いいわね」
「「「はい!」」」
巫女たちが、ルナの指示で撤退を開始。
その直後に、守護者が倒れ仁の周りからマナが溢れだした。
仁から溢れだしたマナは守護者を包み、足下にある魔方陣が明滅を始める。
「ルナさん、準備を! もう直ぐ結界が消えます!」
「はい!」
アリアの言葉で、ルナは身構え守護者の回収に集中しだす。
魔方陣の明滅が早く繰り返すこと数秒、突然それは起こった。
ビキキ、ピキキという音と共に空間にヒビが入り始め、空間が揺らめき『ビシッ!!』と大きな音が鳴ったと同時に、空間に裂け目が現れた。
そのひき裂かれた空間から、何者かの手が出て来て、裂け目を無理矢理こじ開けようとする何者かの影が見え隠れする。
突然起きた不測の事態にルナやマルス、アリアでさえ呆気にとられていた。
次の瞬間、バリバリバリと再び大きく空間が裂けて、何者かの上半身が現れる。
「ハーハッハッハ! やっと出られたぞ! ん? なんだここは?」
驚きと焦りに動きが止まり、空間の隙間に挟まり、動けなく為っている正体不明の何者かが暴れだす。
「ふぬっ、ぐぬぬ! なんだこれは!? 出れぬではないか!」
空間に挟まった、正体不明の何者かが暴れている姿を見入るルナとマルスだったが、アリアは微かな声を拾った。
その声の主、仁の声を聞き取ったのである。
『マルス、そいつを斬れ』
微かではあったが、アリアにはそう聞こえたのだった。
「マルスさん! アレを斬りなさい!」
「えっ? アレをってアイツですか?」
「いいから、早く!」
「分かりました……」
いつになく命令口調のアリアに困惑したが、マルスは直ぐさま思考を切り替え『明鏡止水』を発動して、裂け目に挟まる正体不明の何者かに飛び掛かった。
「なっ!? なんだその剣は!?」
正体不明の何者かが見たものは、光りを纏った聖剣とは違う輝きを放つ、神性を帯びた剣であった。
驚き叫ぶ正体不明の何者かが次の瞬間に見たものは、鬼神の如き荒ぶる神の姿が見えた。
『あっ、またか』
そう呟いた正体不明の何者かの声は、誰の耳にも届かない程の小さな声であった。
「ふぅ…… アリア様、これでいいですか?」
「はい、おめでとうございます。 マルスさま」
「はい?」
アリアの命で斬った後、マルスの頭の中で声が鳴り響く。
『汝、魔を退けし者よ。 其方に祝福を授けよう』
『称号:魔を退けし者を獲得しました』
「えっ!? マジでか……」
念願の称号を獲得したマルス君でありました。
正体不明の何者かは、皆様におまかせします。
ええ、出落ちといえば……




