作戦決行前日、3
書ける時は書けるものですね。
「さて、今夜はなにをつくるかな」
仁は、皆を集めて夕食のメニューを決めようと、わざとらしく呟いた。
「あいあい! ほっけの一夜干しニャ!」
「ん、俺もほっけの一夜干しで」
間髪入れずに、ミケとリウはリクエストを入れる。
「俺らは何でもいいぞ」
「うむ」
マルスとレドは特にリクエストはなく、ルナやサチコ達は話しあっている。
「ルナは何にする? なにがいい?」
「えっと、そのぉ…… 決められなくて、如何したらいいの?」
何やら食べたいものがあり過ぎて、決め倦ねているようだ。
「いいから言ってみろ。 作れるものなら、少量ずつ作れば食べられるだろ?」
「えっ? 出来るの? ならハンバーグにすき焼き、お寿司にピザ……」
「ちょっ!? マジか、全部ジャンルバラバラだな」
「えぇー、だってずっと食べれなかったんだし、我慢出来なーいー!」
ルナは地団駄を踏みながら抗議しだす。
「分かった、だが寿司は難しいから作成からだな、それでいいか?」
「やった! お寿司が食べられるなら何でもいいわ! お願いします」
「お寿司ってなあに?」
「ん? そうだな作った事が無かったな。 えっと、生の魚の切り身、刺し身と言うんだが、それを『お酢』で味付けしたご飯『酢飯』を握ったものに乗せたり、『海苔』で酢飯と具材を巻き込んだりして食べるものだ。 要するに、生魚と一緒に食べるご飯って感じかな」
「ん? 生魚のご飯ニャ? 食べてみたいニャ!」
「おお、美味そうだな」
魚というワードに惹かれたミケとリウが、寿司を食べてみたいと涎を垂らし始める。
「そうか、なら最初は寿司を作るか、人数もいるし色々と作ってみるか」
「やった! 私、『えんがわ』が好きなの作って!」
「えんがわ? それ美味いのニャ?」
ミケはルナの注文した『えんがわ』という響きに惹かれたようだった。
「そりゃ美味しいわよ、淡泊な味なのにぷにっとした食感と淡い甘さがあって、それが酢飯とあわさって何ともいえない味わいなのよ」
「フンフン、分からニャいけど美味そうニャ!」
ルナとミケは興奮して、寿司談義を始めた。
「とりあえず、俺が知ってるネタで適当に作るからな。 欲しいものがあればその時に言ってくれ」
仁がテーブルに移動し、握り寿司を一通り作り始める。
「わっ、わっ、わっ、懐かしいー! これよ、これ! じゃ、いただきまーす!」
「ニャ! おしゃかニャたくしゃんあるニャ! こりもおしゃかニャかニャ?」
「ん? それはホタテだな。 貝柱を薄切りにしたものだな」
「貝柱? うミャいの?」
「食ってみろ。 美味いぞ」
ルナがひょいひょいと寿司をつまみ食いしている側で、ミケがホタテの握り寿司を、おそるおそる口の中へと運ぶ。
「んーっ! うミャいニャ! ングング……」
「ちょっ!? なくなるぞ! 俺らも食わねば!」
ルナとミケで寿司の取り合いとなり、握り寿司の寿司桶から寿司がどんどん消えゆき、呆気に取られていた連中も競って食べ始めた。
そして、見る間に無くなる寿司桶の寿司を見て、仁は寿司を追加し始める。
「お前達! もっと味わって食え! 食べたいだけ食わしてやっから、焦るんじゃない!」
「「「ん″ん″ー!」」」
ルナとミケはともかく、リウやレド、マルスやサチコまでも口をパンパンにして、夢中で寿司を頬張っていた。
「お寿司ですか、おひとつ頂いても良いですか?」
アリアが珍しく、仁に寿司をリクエストしてくる。
「いいですよ、一人前でいいですか?」
「はい、お願いします」
仁はアリアの前に、握り寿司一人前を作成する。
「まあ、これはおにぎりと違って、ご飯の上に具材が乗っているのですね。 では、頂きます」
アリアは両手をあわせて、一礼してから箸を取った。
仁は小皿と醤油をだして、アリアの前へ置いた。
「好みで、醤油を垂らして食べると美味いですよ」
「ありがとうございます。 では頂きます」
アリアは最初に、まぐろの赤身から箸をつけ、小皿に移してから醤油を垂らした。
「あら、綺麗な色……」
まぐろの赤身に醤油が光り、よりいっそう赤身が映える。
箸をまぐろのにぎりにそえるように挟み、それを口元へと運ぶ。
「…… ああ、これは素晴らしいですわ。 ほろほろとご飯がほどけて、ほんのり良い香りがします。 赤いお魚の身と刺激的な味も程よく、お醤油の味と相まって味が一段とはえますね。 これは何というお魚ですか?」
「それは、まぐろといって大型の魚です。 背中の赤身や腹身のトロとかが良く寿司に使われます。 好みによって様々な調理方法があって、捨てるところが少ない魚でもあります」
仁はアリアにマグロ料理を幾つか出して見せる。
「赤身の醤油づけに、煮物に佃煮。
各部の刺し身と兜焼き、こっちはあぶり焼きに、マグロのカツです」
「まあ、こんなにあるのですか? これは研究のしがいが、ありそうですね」
アリアに作ったまぐろ料理を試食していると、寿司に夢中であったミケとリウがやってくる。
「なんか美味そうな匂いがするニャ」
「うむ、これは魚の頭か? デカいな」
ミケはまぐろ料理の匂いをスンスンと嗅ぎ、リウは兜焼きを繁々と観察しだす。
「これも食べていいかニャ?」
「是非、ご相伴になりたいのだが……」
見たこともない魚料理に、他の者達も興味津々であった。
「ああ、いいぞ」
「どうぞ、私はもう一通り味見もしましたし、皆さんで食べて下さい」
「やったニャ! あたしはこの煮物がいいニャ」
「なら、俺はこの美味そうな頭を食べて見たいぞ」
「こっちの切り身は、寿司に乗ってたやつだよな……」
それぞれが興味をもった料理に箸を付けだした。
「「「これは、うまい!」」」
「あっ! お刺身ちょうだい!」
ミケやリウの魚好きだけでなく、レドやマルスもまぐろ料理を堪能しだし、ルナは久しぶりの寿司や魚料理を美味そうに食べている。
仁とアリアの二人は、嬉しそうに食べる仲間たちの食事風景を眺めている。
「やはり美味いものには、人間もモンスターも関係ないよな」
「ええ、こんな世の中も良いものですね」
「ん″ん″!! あのぉ、私も居るんですけど……」
「「!!」」
「因みに、某も居ますぞ」
「「「!!!」」」
仲良く二人でいた仁とアリアだったが、サチコに目撃され、そのサチコの背後には報告にきたリッチが立って居たのであった。
次回はイベントバトルに突入です。




