作戦決行前日、1
守護者の救出ならび封印の再生をする作戦、長いので封印再生作戦とする。
封印再生作戦の前日、仁は転移魔方陣を使い『始まりのダンジョン』から、援軍を『白のダンジョン』24階層へと移動させていた。
「うーん、どれ位行けそうかな?」
「5千名は入れそうですな」
仁とリッチは、25階層の階段手前を拡張した陣地で話し合う。
「今回は、最大1万を予定しているが、向こうの連中はどうしている?」
「それはもう張り切っていますな。 主の為に戦えるチャンスなどほぼ無いゆえ、キングやジェネラルすらやる気に満ちていますぞ」
「そうか、今回の作戦は不測の事態もあるだろうし、危険度も高い。 場合によっては、全滅もあるだろう」
「でしょうな。 だからこそ、主の役にたてる今回の戦は、彼奴らにとって晴れ舞台なのですぞ」
「すまんな……」
「大丈夫ですぞ。 すべてはそんな貴方の為。 そして、己の為の戦いなのです。 我々は主だからこそ死地に赴けるのですぞ」
いくら主の命だからとて、モンスターであっても死地に送らねば為らない状況に、仁は納得はしていない。
何もしなければ滅びる世界で、何も知らず死んでいくのであれば仕方がない。
だが、知っているのに何もせず、周りの者達が巻き込まれ死ぬ位なら、戦う方がまだ救いはあると思うからこその謝罪であった。
魔神側が、何をしたいのかは分からないが、抵抗せず巻き込まれる位なら、戦う道を選択しただけの事。
だが、すべてを一人で出来る訳でもないので、仲間たちの力を借りて作戦を実行するしかないのだ。
ルナにチートを指摘されようとも、戦闘が得意でない仁では戦争に勝てる見込みは低いのが現実でもある。
「もっと戦闘スキルがあればなぁ……」
「我らの役目は主の補佐。 主の足りない処を補ってこその僕であるのです。 笑いながら死んでこいと云って下されば何時でも逝く覚悟は出来てますぞ。 ハッハッハ」
5千名の移動も終わり、翌日までの待機を命じるようにと、キングとジェネラルに声をかける。
「明日の作戦はお前達の働きに掛かっている。 十分に休み英気を養って欲しい」
「「はっ!」」
キングとジェネラルは、仁の言葉に跪いて応える。
「物資は十分にあると思うが、足りない様なら言ってくれ」
「「ありがとうございます」」
仁はここぞとばかりに、酒や食料品を解放し作戦参加者を労うのだった。
白のダンジョン側の準備を済ませ、仁はリッチを連れて始まりのダンジョンへと向かう。
◇ ◆ ◇
始まりのダンジョン10階層にある中央拠点へとやって来た。
「ん、ここもかなり馴染んできたな」
「そうですな」
拠点の外では、新たな仲間たちが召喚魔方陣から生まれてくるザコモンスターと戦っている。
「順調で何よりだ。 この先の戦いでもここは必要だし、人間達がここを使うように為るまでは、このままの管理を頼むぞ。 戦士たちを鍛え、抗う力を養っていかないとな」
「畏まりました」
「残る5千名は明日の開戦の状況次第で転移魔方陣を開くからな、こっちはこっちで参加する戦士たちを労っておいてくれ」
「お任せ下さい」
リッチに後を任せ、仁は19階層へと転移した。
◇ ◆ ◇
19階層の奥、階層間の階段から離れた場所に、幾つもの扉が付いた通路がある。
その扉の先に、仁専用の実験場があった。
ここは魔方陣や魔法の練習、実験場として使われている。
今回、仁は幾つかの秘薬を作る為、ここに来たのだ。
エリクサーとエクスポーション、それにMP回復用のエーテルを大量に作る為の施設があり、素材も備蓄されているのである。
幾つもの扉を抜けて、試験場を通り一番奥にある錬金術施設に入った。
「さて、とっとと作りますかね」
仁は壁にかけてある防護服を着込み、施設の奥へと入って行った。
ここも幾重もの扉が設置してあり、エリクサーを作る時に発生する波動を軽減させるべく、魔法防御力の高いミスリル銀を壁や床、扉のすべてに使い波動を受け止める魔方陣を書き込んであるのだ。
実際、ここまでやらなくても良いのだが、仁の気分的に造られた施設なので、誰も何も言わないだけであった。
◇ ◆ ◇
「うぅ…… た、ただいま」
「ふぇ? ど、如何したの?」
ふらふらと歩く仁は、今にも倒れそうな雰囲気を漂わせていた。
エリクサーを作り、賢者の石による波動を受けて、マナ酔いを起こしているのである。
「エリクサーを作って来たんだ……」
「えっ? エリクサーなんてあんの?」
「ええ、作るのが大変らしいですが、仁さまなら作れます」
サチコが仁の介抱をしていると、ルナとアリアが近寄ってきた。
「ああ、ちょうどいいルナに渡しておこう」
「ん? なにこれ?」
ルナの手には、3つ指輪とミスリルで作られた武器があった。
「指輪は、力の指輪と魔力の指輪のステータスアップの指輪に、もう一つは認識阻害の指輪、武器はミスリルクローだな」
「ステータスアップは分かるけど、認識阻害って必要?」
「ん、認識阻害の指輪はルナが獣人として見えるように調整してある。 作戦終了後は、このダンジョン以外にも行かねば為らないし、何より人々の町へ行ってみたいのだろう?」
ルナの溜め込んでいたストレスは、人との交流や文明との断絶から来ているものである事は明らかであった。
「本当なの? この指輪をはめれば人間の町に入れるのね」
「ああ、サチコやアリア様での実証実験後の最新作だからな、安心していいぞ」
ルナは認識阻害の指輪をはめて、サチコやアリアに確認をとる。
サチコは親指と人差し指で丸を作り、アリアはニッコリと笑った。
「やった! これさえあれば町で暮らす事も出来るのね」
ルナは全身を震わせ、大きく身を翻して喜びを表現するのであった。
まだ本調子ではないので、数日に1話のペースになりそうです。




