ささやかな抵抗
やっと書けました。
全員が着席したところで話の続きを始める。
「先ほども言ったが、今回の作戦には、アリア様にも参戦して貰います」
「はい、よろしくお願いします」
仁の隣に座り直したアリアは、軽く頭を下げる。
「封印の間を包む結界を解除するんだが、問題が幾つかある。 まず、封印の間の結界を解除すれば、魔物たちが発生する可能性が大きい。 次に封印が解けかけて、それを防いでいる結界を張った守護者なんだが、生きている可能性が低い。 若しくは、結界解除時にもろとも消えてしまう可能性があること。 最後に、結界解除後に発生した魔物たちの排除、また守護者の生存確認と救助が終わり次第、封印を解除し再度封印を開始、その間の防衛戦を如何するかが問題だ」
仁は色々な可能性を考え、作戦を立ているが、回避不能の問題点をあげた。
「ケロちゃんなら大丈夫。 必ず生きている筈だし、私が助けだすわ」
「そうか、ならば守護者の救助はルナに任せるとして、俺とアリア様で封印の準備をする。 その間の防衛戦はマルス達に任せるからな」
ルナに守護者の救助を任せ、マルス、ミケ、レド、リウには防衛戦の要となって貰う。
「ん、引き受けよう」
「うちらも頑張るニャ」
「「おう」」
最後に、封印を解除した時に現れる魔物たちの排除役に『始まりのダンジョン』より、ゴブリンキング率いるゴブリン軍、オークジェネラル(リーダーからの進化)率いるオーク軍から、総数約1万名を投入する予定である。
最初は召喚魔法による戦力増強を考えたが、戦略会議の前にゴブリンキングやオークジェネラルからの進言により、参戦する事となった。
「作戦の決行日は明後日、それまでは各自で万全の体制で挑めるよう、準備を始めて欲しい、以上だ」
作戦会議は解散となり、各々が明後日に向けて行動を開始する。
そんな中で、仁はルナに捕まり詰問される。
「ちょっといいかしら」
「ん、何かな?」
「貴方、チーターなの?」
「は? チーターって……、まあ似たようなものか」
仁は、ルナの言いたい事は分かったので、あえて否定はしなかった。
「認めるのね…… なら貴方は神様に会ったってことかしら?」
「ああ、そうだ。 俺は神々からの試練で、この世界へ送られて来たんだ」
「やっぱりそうなんだ…… 私とは違う世界の人なのね。 私はね、前の世界で死んでから、この世界に来たのよ。 一応、この世界の神様らしき声を聞いたけど、私の同意もなく一方的に、この世界へと転生させられたの……」
予想はしてたが、ルナの証言により、多数の転生者が存在する可能性は高くなった。
「そうか、それは酷いな」
「それは良いのよ、私は前の世界が嫌いだったし、ここに来てからは結構楽しかったから」
「左様ですか……」
「でもさ、貴方。 この世界って、なーーんも無いのよ。 転生してからあちこち行ったけど、なんも無いしモンスターしか居ないのよ、信じられる? 人っ子一人いない世界で、ずっとモンスターと戦って来たのよ……」
これはアカンやつだと思ったが、彼女はずっとモンスターと戦い、モンスターの仲間たちと長い時を過ごして来たのだと、仁は観念して話を聞いた。
ルナの話では、この世界に転生して数年は、ずっとひとりで旅をしていたそうだ。
生まれは犬耳の獣人だったらしく、魔物を避けて食べられそうな物を食べて暮らしていたそうだ。
なんとも言えず、ただ苦労をして弱いモンスターを倒してレベルを上げたそうな。
洞窟を見つけては探検したとか、最初のダンジョンで死にかけたとか、人を探す旅をしつつ色々な場所を彷徨ったらしい。
結局、何処へ行っても強い魔物が蔓延っている世界で誰にも会えず、元の場所へと帰ってきたのだと……
「100年200年は数えていたけど、もうさどうでもよくなったわけ。 レベル上げて進化する度に若返ってね、ワーウルフになってからはまったく年取らなくなって、獣神変化覚えてからは、ずっとこうなわけ、いいっしょ」
「ルナさんは見た目と違って、ご苦労なさったのですね」
なんだかんだと話し出してから、既に4時間たったが終わりの見えない会話が続く。
途中から、アリアにルナの話を任せ、転移魔方陣を設置しつつルナのボヤキを聞かされる。
途中、話疲れたのか会話が止むと、アリアが茶菓子を用意しつつお茶を飲んでいた。
終わる気配どころか、お茶会に突入し、様子を見に来た女子たちが増えて、かえって話に花が咲いたのだった。
「えっと、作業も終わったので帰っていいですか?」
「「「えっ?」」」
仁が終わらない話に嫌気がさして言った言葉に、全員が『何を言っているの?』という顔で仁を見ていた。
「あー、何でもないです。 ハイ」
する事もなく、居場所のない仁はひとり黙々と菓子を作り、女子たちに提供し続けるのであった。
後日、女子会を開こうとする彼女らは、仁に菓子の提供を頼むのだが、とある一言で考えを改める。
『最近ふっくらしてるよね』
仁の術中に落ちた女子たちは、互いの体を見比べて苦笑いを浮かべて、イソイソとダイエットをし出すのであった。
ルナはやっと人らしい人と出会い、色々と溜まっているのだろうと思います。
数百年、千年単位のうっぷんとは如何に……
考えると怖いですね。




