覚醒するルナ
メシテロ回?です。
「う、う一ん…… スンスン!? カ、カレーのニオイだ!! ど、どこなの!?」
見知らぬ建物の中で目が覚めると、夢にまでも見たカレーの鮮烈な香りが鼻に纏わり付く。
「どこっ!? カレー!?」
建物内を走りまわり、一心不乱にカレーを探した。
カレーの香りに導かれ、突き当たりの扉を力いっぱい開く。
バーンッ!! と勢いよく開け放たれた扉は壊れ、部屋へと突入してきた闖入者のルナが吠える。
「カレーはどこっ!? カレーライスを早くちょうだいっ!! カレーライス、ナウッ!!」
見開かれる瞳に、開けっ放しの口は、涙と涎によって濡れていた。
「ちょっ!? 何ちゅう顔してんだ」
「そんなことは、どうでもいいのよ! 早くカレーをちょうだい!」
「ニャハハハッ、ルナの顔おもろいニャ」
「カレーーっ!!」
仁やミケの声は、聞こえていな様子でカレーライスを懇願しだす。
「カレー…… カレーライスをちょうだい…… ずっと、ずっと食べたかったの…… うっ、うわーーん」
ルナの涙腺が決壊した。
「ごめんニャさい。 いま、持ってくるニャ」
ミケは厨房内に話し掛け、ひと皿のカレーライスを受け取った。
トレーにカレーライスを乗せて、スプーンと水の入ったコップ、付け合わせの福神漬けを乗せてテーブルの上へと運んだ。
「はい、貰ってきたニャ」
ミケが運んできたトレーをガン見しつつ、トレーがテーブルに置かれると同時に立ち上がる。
「カレーライス…… ありがとう!」
ルナはミケに飛び付きハグをするが、次の瞬間テーブルの前に陣取り着席した。
「いただきます…… ああ、カレーだわ、カレーライス!」
流れる涙でよく見えず、だがカレー独特の香りがルナを誘う。
震える手でスプーンをつかみ取り、カタカタと震える指の先にあるカレー皿へとスプーンを差し込む。
カチカチと鳴る皿とスプーンの音が、カレーをすくい上げると同時に音も止む。
「スーッ、はあ…… パクッ…… ンーっ!!」
震える手でカレーを口元へと運び、香りを楽しみ口の中へと入れた。
「ハムハムハム…… 美味しい。 おかわりー!」
「はいはい、ちょっと待つニャ」
ひと皿目のカレーライスを、あっという間に平らげると、すぐに次の皿を要求する。
「お待たせニャ」
「ありがとう! ハムハムハム……」
その後もおかわりする事20皿、そこでようやくルナは周り目に気付いた。
「すごい喰いっぷりだったな」
「ええ、どこにあんな量が入るのかしら」
「ルナさま……」
ミケは勿論、仁やマルス、お付きの巫女など見知ったものに、見知らぬ数名の女性たちの視線に晒されていた。
「どうかな? もう落ちついたかな?」
「えっ? え、ええ……」
「落ちついた処で少し話そうか、まずは自己紹介だな。 俺は田中仁、ダンジョンマスタ一だ」
「えっ!? ダンジョンマスタ一?」
ルナはダンジョンマスタ一と聞き首を傾げる。
「ん、いわゆる非戦闘員だな。 一応、勇者でもあるが」
「なにそれ? 色々おかしいんですけど」
「まあ、色々とあってな。 次に剣神のマルス」
「よろしくな」
「次は、俺の配下でサチコにミケ、レド、リウだ」
「「「よろしく」」ニャ」
「最後はアリア様だ」
「アリアです」
「はい……」
仁達の自己紹介も済ませたので、本題に取り掛かる。
「今回、このダンジョンをクリアする為に、一度封印を解くことにする」
「はあ?」
封印を解くと宣う仁に対し、ルナは驚愕する。
「どういう事? 封印を解くって正気なの?」
「まあ、詳しい話は飯を食ってからにしよう」
「え? 飯って……」
「お前に食われてな、俺らの飯が無くなったから、また作らんとな」
ルナが辺りを見回すと、テーブルの上には空の器がたくさん並んでいる。
「あっ…… ハイ」
仁達の昼食をすべて平らげた事に気付き、ルナは赤くなり恥じた。
「ちょっと、何これ。 聞いてないわよ」
「ングングング…… なんだ? まだ食べ足りないのか?」
「いや、そうじゃなくて、何でカツカレーなのよ。 私のは普通のカレーだったでしょ」
「しょうがないだろ、カツ揚げる前に喰ったんだし」
ルナは唇をかみ、ぐっと堪える。
「カツカレー……」
仁達の食べるカツカレーを、文字通り指を咥えてみているルナであった。
「ふう、久しぶりのカツカレーは美味かったな。 デザートは何にする?」
「バニラアイス!」
「えっ!? バニラアイスあるの? どういう事?」
デザートにバニラアイスを頼んだサチコのオーダーに、ルナは目を見開きバニラアイスが乗った器を見た。
仁の手元からフッと出現したバニラアイスと器はどう見てもおかしい、何もない空間から出現するのだから、ルナの疑問は至極当然のことであった。
「ん? お前もバニラアイスなのか? 食い過ぎて腹こわすなよ」
仁はルナのテーブルの前に手を出し、バニラアイスと器を作りだして見せた。
「ちょっ!? 今何したの? これって魔法?」
「あ、そっちか。 これはダンジョンマスタ一のスキル、作成で作ったものだ」
仁の発言にルナの頭に様々なことが思い浮かぶ。
「ちょっと待って、もしかして何でも作れるとかするの?」
「ん、まあ知ってさえ為れば、材料からでも作れるぞ」
それを聞いたルナは、仁の手を掴み上下させて喜んだ。
「ケーキなら何でもいいの、作って……」
「何でもいいとか、せめてフルーツとかチーズとか指定しろよな」
そんな会話を聞いた女子たちも、参戦してくる。
「あたしはイチゴがいいニャ」
「私はフルーツパフェをもう一度……」
「えっ!? パフェもあんの?」
仁は、じりじりと壁へ押し遣られ、室内はもはやカオスである。
「ええい、分かった。 分かったが一人一品までだぞ、いいな!」
何だかんだと全員のリクエストに応え、色々と作ったのだが肝心の自分のデザートは作らずに、やる気をなくす仁であった。
(女子に甘味は禁句だな)
ルナの願望をと思ったら、こんなんに為りました。




