和解
「貴様たちは何者だ? なぜ長のことを知っている」
「ん? 長が守護者なのか、俺はダンジョンマスター、田中仁だ」
「ダンジョンマスターだと……」
ワーウルフは仁を訝しむ。
「ああ、始まりのダンジョンで、守護者のリッチから話を聞いた。 各地の守護者は、俺を待っていると」
「そうか、お前たちが神の使徒なのだな。 なるほど、我を斬ったあの剣士も、神の使徒と云うことか……」
「まあ、そういう事だな」
仁は、ワーウルフの答えに同意した。
「我々ワーウルフの長、ルナ様は25階層にて待って居られる。 この先、24階層に我らの村がある、そこを使うがいい」
「24階層か、有難く使わせて貰おう。 だが、その前に治療をしないとな」
「ん? 時間は掛かるが治る。 治療はいらん」
「治るって、どれぐらいなんだ?」
「そうだな、半日ぐらいだな」
「マジでか、ワーウルフはヤバいな。 まあいい、とっとと治すぞ」
仁は、ワーウルフの下半身を持ってきて、上半身の近くに置き生活魔法『クリーン』をかける。
「ふむ、エグいな」
「な、何を為る気だ?」
「ん? くっつくかと思ってな。 ちと待ってろ」
仁は、ポーチから『エクスポーション』を取り出し、ワーウルフの傷口に振り掛けた。
「「「おお!」」」
「な、なんだと!? おお!? あっああああ……」
ワーウルフの傷口から薄ら煙りが出ると、モリモリと肉が蠢きブクブクと泡を立てつつ、内蔵から繋がっていく。
「うわぁ…… キショッ」
「見ては為らんものを見てしまった」
真っ二つだったワーウルフの胴体は完治したが、何ともいえない空気になった。
「成功だな」
「ウプッ………… す、すまん」
仁を除く、全員がドン引きであった。
★ ☆ ★
「うーむ、これは凄いな。 完璧に治ったぞ」
ワーウルフはストレッチのような動きで、躰のチェックをしている。
「もういいか? 話があるんだが」
「おお、そうだったな」
仁は、先日までの出来事をワーウルフに伝える。
「そうか、お前たちを襲って返り討ちにあった。 そういう事だな」
「ああ、此方も被害が大きくてな、咄嗟のことだったが、俺の一撃が彼奴の命を奪った形になった。 済まなかった」
仁はミケのことは話さずに、ワーウルフの同朋を殺めたことを謝罪した。
「彼奴をやったのはミケだニャ。 主は悪くないニャ!」
「ああ、構わんよ。 嘘ではないのだろう? 奴が襲い、返り討ちにあった。 それで十分だ。 我々ワーウルフの掟は、強さが肝要。 そして、誇りを忘れ弱者を襲い、返り討ちに遭うは万死に値する恥ずべきことだ。 それで死んだので在れば、捨て置いても構わんよ」
「なるほど、ワーウルフは高潔なのだな」
「ん? まあそうだな。 最近は、軟弱で無鉄砲な馬鹿が増えてしまったが、今回こうして相見える切っ掛けとなった。 それで十分、という事だ」
マルスに高潔と評されたが、ワーウルフはそうでもないと語った。
そんな会話をしつつ、仁は疑問をワーウルフに問う。
「しかし、あのまま殺していたら、今の話もなかったんだが、どういたった訳で襲って来たんだ?」
「ああ、そうだったな。 うっかり忘れるところだったな。 いきなり襲って悪かった。 すまん。 お前たちから奴の血のニオイが為たもんで、狩られたと思ったんだ。 同朋の恥を雪ぐのは我らの慣習だからな。 本当にすまない」
「なるほど、ニオイか。 狼だし、当然そう判断するよな。 よし、分かった。 これでこの話は終わった。 互いに、不幸な出会いをしたという事だ。 我々も、すべてを水に流そう。 いいな?」
「「「ハイ」」」
「と言うことで、今後はよろしく頼むな」
「ああ、こちらこそ宜しく頼む」
こうして、仁達とワーウルフの間での、わだかまりは無くなった。
◇ ◆ ◇
ワーウルフ襲撃のリスクも無くなった事で、予定を少しだけ変更する。
「仮拠点はこれで良いだろう。 後日、ここを狩り場にして、改めて拠点を造ろう」
仁は野営地を作り、その周りに防護柵を並べて、召喚魔方陣をひとつ設置した。
オーガをLv30で50体と設定し、防衛のみを命じる。
「ほう、これが召喚魔法か」
「ああ、魔方陣に召喚魔法を組み込んで、戦力として配置するんだ」
定期的に召喚されるオーガ達を見ながら、ワーウルフは感嘆する。
「主殿は、多才であるのだな」
「そうニャよ、主は最強ニャ」
一瞬、ワーウルフの眼が仁に向いたが、すぐにミケに視線が戻った。
「そうか、最強であるか。 一度手合わせをしてみたいものだな」
「無理ニャよ、主は強すぎて相手をしてくれニャいくらい、差があるニャ。 自信を無くすのがオチニャ」
ミケは仁との出会いを思い浮かべ、ワーウルフへ忠告する。
「それは残念だ」
「それより、ご飯ニャよ。 主のご飯も最強ニャ」
「そうか、飯の時間か」
「今日はなにかニャ~♪」
何やら怪しげであったが、飯の時間だとミケが炊事場へと向かう。
「最強か、あの方の封印が解けると良いのだが……」
ミケの後ろ姿を見ながら、ワーウルフは呟くのであった。
暑かったり寒かったりと、体がむず痒いです。
皆さんも体調に気を付けて、お過ごし下さい。




