支援ギルド
大きなダイニングテーブルがある部屋に通され、シックなイスに座らせてもらう。ソワソワしながら家の中を観察していると、テーブルに人数分の紅茶とお菓子が置かれた。
「どうぞ、召し上がれ」
「ありがとうございます。いただきます」
紅茶を一口飲む。うん、美味しい。あ、僕ちゃん口にお菓子のカスがついておりますよ。そっと取ってゴミ箱に入れる。
「ふふっ、テトさんは本当に優しい方ですね」
「え、そうですか?」
「はい。……自己紹介が遅くなりました。私はミラと申します。こっちは旦那のクーガ。そして長男のホークに長女のアリスです」
「……どうも」
「改めてテトといいます。旅人で、この街には来たばかりです」
旦那さんに会釈する。無口な方なのか、あまり多くはしゃべらない人だな。っとこれこれ、僕ちゃんもといホークくん、紅茶がこぼれますよー。
「ね?テトさんは優しいでしょう?」
「……そうだな」
「え?」
「ふふっ。そうだ、お礼を渡したいんだった。ちょっと待っててくださいね」
ミラさんがどこかに行ってしまい、部屋がシンっと静まりかえった。な、なんか旦那さんからの視線が熱いな。
「……お前は、この街で何をする予定なんだ?」
「え?そうですね……魔法を練習したり農業したり、畜産したりですかね?」
「……そうか」
「はい」
「……頑張れよ」
「はい!」
クーガさんとゆったりと会話しながらホークくんたちを眺めていると、ミラさんが両手にお菓子を抱えて戻ってきた。
「はい、これ全部持っていってください」
「こんなにたくさんは……」
「いいのいいの。うちでは消費しきれないから、テトさんにもお裾分けです」
俺も全部食いきれなさそうだけど…。でもここで断るのも失礼に当たるので、お礼を言ってすべてインベントリに収納した。
「テトさんはこの街に来たばかりなんですよね?」
「はい。ほんとついさっき」
「ギルドにはもう行きましたか?」
「あ、まだですね」
「あら。ね、あなた。あなたのギルドを紹介するのはどう?」
「……あぁ」
お?なんか話の内容的に、クーガさんはどこかのギルドに所属しているのか?
「……俺は支援ギルドで働いている。主な仕事は図書館の棚の補強と、本の管理だ」
「街の雑務や依頼、公共サービスを担うギルドなんです。家事代行から他ギルドのヘルプ、図書館や博物館といった公共施設の管理も担っています。支援、とついていますが、支援魔法とは関係のないギルドですね」
特殊ギルドか。しかも聞いたことのないやつ。話を聞く限り、街の中で動くことが多そうなギルドだ。
「……支援ギルドは、街に寄り添うギルドだ。ミラを助けてくれたお前には向いていると思う」
「本当は紹介状や試験を受ける必要があるんですが、ギルド職員からの推薦というシステムを使えば、色々免除されると思います。テトさんがよければ、どうでしょうか?」
「俺はありがたいんですが…なんか貰いすぎな気がします」
「……こちらにもメリットはある。支援ギルドはいつでも人手不足だ」
「ふふっ。テトさんが来れば即戦力になるだろう、だそうです」
ふむ、ゲームの世界でも人手不足であることは変わらないらしい。まぁ最初に所属するギルドにこだわりはないし、クーガさんたちが良ければお言葉に甘えさせてもらおうかな。
「ぜひよろしくお願いします」
「……あぁ」
「それじゃあ善は急げ。早速行って来たらどうですか?」
「……そうする」
そうするそうです。紅茶を全部飲み切って、ホークくんとハイタッチ。ミラさんに改めてお礼を言ってクーガさんと外に出る。支援ギルドは北西のエリアにあるそうだ。
俺がクーガさんの後をついて歩いていくと、少しだけ歩幅を小さくしてくれた。気遣いもできるなんて、男じゃなかったら惚れてたぞ。曲がり角を曲がるときはかならず立ち止まって俺を見てくれるし、人混みに入っていくときは背中に隠れていろと言わんばかりに盾になってくれた。無口だけど、行動で示す人ってかっこいいよね。
大きな灰色の建物が見えてきた。正面のアーチ状の入り口をくぐり、中に足を踏み入れる。華やか、というよりは街の1部といった印象だな。
内装は茶色で統一されていた。正面には巨大な依頼掲示板。右手は受付カウンターがあり、左手は休憩スペースなのかたくさんのイスとテーブルが並べられていた。その奥には廊下もある。
受付に行くと、書類を見ていた職員さんが顔を上げて柔らかい笑みを浮かべた。
「こんにちは。ご用件をお伺いいたします」
「えっと、ギルド登録に来ました」
「はい。紹介状はお持ちですか?」
「……職員の推薦だ」
クーガさんがバッチを懐から取り出し、カウンターに置く。それを見て職員さんはハッとした顔をしたが、すぐに顔を引きしめた。
「推薦制度をご利用ですね。それでは紹介状及び試験は免除となりますので、こちらの書類を書いていただいてもよろしいですか?分からない場合は空欄でも構いませんので」
割と王道な物語を書いているつもりです。つもりなんです。
話の途中で区切っちゃいましたが、続きはまた次回。




