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普通だと言い張る男のVRMMO  作者: 黒色猫


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最初の街エーナ

 人の声が聞こえて目を開けると、巨大な木の門前に立っていた。街に入りたいプレイヤーたちの長蛇の列も見える。最後尾には『初めて街に入る旅人はこちら』というプラカードが。中に行くには今からあれに並ぶのかーちょっとご遠慮したいところではあるな。だけどモンスターと戦うには俺は弱すぎるし…。仕方ない、大人しく並ぶか。


 今から入る街の名前は『エーナ』。主要ギルド────冒険者、商人、職人、農業の4つのギルドが揃っており、その他にも木こりギルドや釣りギルドといった特殊ギルドも有している大きな街だ。ムービーでも取り上げられていて、ヨーロッパ風の建物がファンタジー感を演出している。街中を歩くだけでも、現実世界を忘れられることができそうだ。


「次の方」


 お、ついに自分の番がきた。老年だが体格のいい門番の前まで近付き、まずは軽く挨拶。


「こんにちは」

「はい、こんにちは。旅人で間違いないでしょうか?」

「はい」

「それではこちらのプレートをお持ちください。どこかのギルドに登録する際に渡してくだされば、無料で手続きしてくれるので。あとは街中での注意事項を伝えます」


・無許可の情報売買の禁止

ー勝手な情報売買はトラブルのもとになるので、ギルドの許可なしにやり取りするのは止めましょう


・武器抜刀の禁止

ー街で武器を抜刀した瞬間、衛兵が駆け付け拘束されます


・露店の妨害行為禁止

ー露店の前で騒ぐ、他の購入者の妨害する行為は非常に迷惑です


・住居や特定のエリアの無断侵入禁止

ー入る前に必ず家主、または権限がある者に許可をとりましょう


「あとは非人道的行為をするのも禁止となります。それをした場合、一発で牢屋いきとなるのでくれぐれもお気を付けください」

「分かりました」

「はい、それではエーナへようこそ」


 門をくぐると、ムービーで見たままの光景が広がっていた。そしてたくさんのNPCが普通の暮しを送っている。本当に人間にしか見えない。最新のAIは進歩が目覚ましいな。

 さて、まずは冒険者ギルドに行こうか。ギルド通りは街の北東のエリアにある。今俺は南門付近にいるから、だいたいあっちに行けばいいはずだ。


「…どうしよう」


 歩いて数メートルもしないうちに、困ったような声が聞こえてきた。周囲を見渡すと、両手に赤ちゃんを抱えて途方に暮れている女性が。その足元には指を口に咥えている3歳くらいの幼い少年と大量の荷物が置かれている。

 んーちょっと声かけてみようかな。


「こんにちは」

「!こ、こんにちは」

「俺はテトと言います。この街に来たばかりの旅人です」


 まずは自己紹介。初対面の人にいきなりどうされました?って聞かれても、大丈夫ですって言われて手伝いを提案する前に断られるパターンもあるからな。


「テト、さん」

「はい。…あ、お子さんの靴紐がほどけてる。結んであげてもいいですか?」

「え?あ、ほんとだ…。すみません」

「いえいえ。こんにちは、くっく触ってもいい?」

「…あい」

「ありがとう」


 きつくなりすぎないように結ぶ。子ども────僕ちゃんからの視線がすごく刺さるな。何もしないよー。


「これでよし」

「あの、ありがとうございました」

「俺が気になっただけなので。…もし迷惑でなければ、荷物を持つの手伝ってもいいですか?」

「え、あ、でも…」

「お子さんたちから目を離すわけにもいかないでしょう?俺でよければ手伝わせてください」

「……お願いしてもいいですか?」


 会ったばかりの俺をまだ信用しきれないだろうが、子どもたちのこともある。女性はかなり迷っていたが、最終的に人の手を借りることを選んでくれた。

 足元の荷物を持つ。うん、重い。インベントリに入れて運びたいくらい重いが、目に見える形で運んだ方が相手も安心できると思い我慢。男は根性。


「重くないですか…?」

「こう見えて筋肉はあるので、任せてください!」


 重くないですと見え見えの嘘は付けないので、ちょっと言葉を選ぶ。だってかっこつけたいじゃん。


 女性は自宅に帰る途中で力尽きたらしい。どうやって家に帰るか悩んでいたところ通りがかったのが俺というわけだ。声を聞き逃さなくてよかった。

 腕はムキムキ、顔はにこやかに会話していると、どうやら自宅に到着したみたいだ。…どこまでもっていけばいいかな?さすがに女性の家に入るのは…ちょっとあれだと思う。けどこんな重い荷物を玄関に置いてはいさようなら、というわけにも…。


「あなたー!ちょっと来てちょうだーい!」


 扉を開けた女性が、家の中に向かってそう叫ぶ。少しすると、奥から熊のような大柄な男性がのっそり現れた。


「荷物を家の中に運んでちょうだい」

「…わかった」

「ありがとう。あ、テトさん、ここまで運んでくれて本当にありがとうございました。ぜひ上がっていってください」

「いえいえそんな……」

「さ、どうぞどうぞ」


 あ、これ断れないな。気付いたら俺のズボンを握っている子もいるし。……お邪魔しまーす!


 だいぶ女性との会話は悩みました。どうすれば不審者だと思われないか、どの言葉だったら断られにくいか。最終的に主人公の顔面があればいける!とゴリ押ししました。

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