008
翌日、二人で村にある家々を見て回ると、村は死んでいた。殆どが老齢の死体だったが、中には一家で亡くなっている死体もあった。
全員死傷はなく、炊事中であったり、食事中であったりと、その場で急に死んだように見えた。
外にあった死体は腐食が早く、なおかつ動物達に食い荒らされていた。昨日は暗かったから気が付かなかったが、庭先に落ちていたり、田んぼの中にあったりと、どれもこれも無惨な有り様だった。
彼等は、どうしてこの場に留まったのだろうか?
考えたら分かる。老齢だからノルン国へ移動できなかったのだ。では家族は? 土着心は誰にだってある。あの有り様になると判りながら、いや、もしかして理解しないまま、ここで暮らしていたのかもしれない。少なくとも、子供はそのはずだ。
「こんなの、こんなの酷い」
物置にあった鍬を持って、男性の家の裏の敷地で、穴を掘りながら考えていると、自然と口から漏れでていた。
「そうですね」
隣で球のような汗を額に浮かべているラジエルが、鍬を振り下ろした。
「なんの予告もなしに、いきなり死が訪れます。言葉にすると、なんら普遍的ですね」
僕は力強く鍬を振り下ろす。鍬が硬い土を貫通して突き刺さった。
「でも、人為的なんでしょ」
「はい。人為的です」
陽が影ってきたところで、人一人が埋められる穴が出来上がった。一日通して十七個の穴を掘りきって、遂にこれで最後だ。
「僕の世界で、それは大罪だ」
「この世界でも、大罪です」
僕達は向き合う。ラジエルの碧眼は強い意志を宿らせているようだ。反対に、僕の眼には意志は宿っているだろうか。この、内から湧き上がる嫌悪が、ラジエルに伝わっているだろうか。
僕達は男性の死体を埋めて、二人で相談し、もう一日、この村で過ごすことにした。




