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不正者執行されるべし  作者: 菅田原道則


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020


「四人で泊まれるかい?」


 宿屋に入るなり、カウンターにいる店員へ向けて、オジさんが指を四つたてる。店員はオジさんの背後にいる僕達を訝しんで目を細めた。


「一部屋しかないよ」


 歓待していない声で店員が言うと、オジさんは頬を緩めた。


「うん。それでいい」

「……素泊まりしかないし、前金払ってもらうよ」

「宿があるだけ十分さ、前金合わせた値段はいくら?」


 オジさんが甚平の懐を探りながら訊ねると、店員は指を三本立てる。懐から出した手をカウンターにつけてから離すと、小銭が三枚でてきた。


 店員はようやく相好を崩す。


「じゃあ、ここに記帳しな」


 店員はカウンターに置かれていた台帳を指差し、オジさんは従って台帳にペンを走らせた。


「あんたら、家族かい?」

「んー、そうそう。子供達に白銀山を見せたくてね」

「そうかい。残念だけど、あそこの銀はもうほとんど無いよ」

「みたいだ。けど、鉱夫の姿はあるね。はい、書けたました」


 オジさんがペンを置くと、店員が台帳を半回転させ名前を読み上げた。


「ヒロ・オージ。オージ一家ね」


 店員は僕、ラジエル、ブラディの順に顔をみて、オジさんへと視線を戻すとしゃがんだ。


「この近くで新しく炭鉱が見つかったからね、人も増えるさ」


 店員の言うとおり、僕達の宿探しはこの宿で八件目だった。店員は膝を伸ばすと、鍵となる木の板をカウンターに置いた。


「階段上がって二階の突き当たり、左の部屋だよ。部屋または部屋の備品の汚破損は罰金だからね」


 オジさんは鍵を受け取らずに、片手をひらひらと揺らして階段に足をかけた。それを見てブラディも先に行ってしまい、僕とラジエルは目を見合わせる。ラジエルは肩をすくめた。どうやら、鍵は僕が持っていかなければいかないようだ。


 僕が会釈をして鍵を持って後を追うと、店員はふん、と鼻を鳴らしてから、椅子が軋む音がした。


 二階は天井が低く、頭が当たりそうであった。僕達の泊まる部屋も同じ高さで、一言に窮屈である。六畳間くらいの部屋で、二段ベッドが部屋の左右に張り付きながら二つあった。そのおかげで、人一人が立っていられる直線幅の隙間の通路が出来上がっていた。通路の突き当たりには小窓があって、カビ臭いこの部屋を換気したい衝動が湧く。


「ブラディと俺がこっちで、少年とラジ子がそっちね」

「老人をこんなせせこましいところへ登らせるな」


 オジさんが勝手に寝る場所を決めると、ブラディが舌打ちをする。この二人、会話をすればずっと口喧嘩しているんだけど……主にブラディが敵意剥き出しなだけだとは思う。


「高いところ好きでしょ?」

「好きで登ってないわ」

「まあまあ、いつでも俺が背中から刺せますよってことにしておいてさ。次、お泊まりするときはブラディが下でいいよ」


 人懐っこい笑顔で物騒なことを言うオジさんに、ブラディはまた舌打ちをして左側のベッドに登った。


「私は疲れた、寝る」


 ブラディは潜り込むように入ってから、顔を出してこなくなった。


 どうして、僕はこのオジさんと、敵であるお爺さんと一緒の部屋で寝ることになったんだったっけ?


 

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