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「四人で泊まれるかい?」
宿屋に入るなり、カウンターにいる店員へ向けて、オジさんが指を四つたてる。店員はオジさんの背後にいる僕達を訝しんで目を細めた。
「一部屋しかないよ」
歓待していない声で店員が言うと、オジさんは頬を緩めた。
「うん。それでいい」
「……素泊まりしかないし、前金払ってもらうよ」
「宿があるだけ十分さ、前金合わせた値段はいくら?」
オジさんが甚平の懐を探りながら訊ねると、店員は指を三本立てる。懐から出した手をカウンターにつけてから離すと、小銭が三枚でてきた。
店員はようやく相好を崩す。
「じゃあ、ここに記帳しな」
店員はカウンターに置かれていた台帳を指差し、オジさんは従って台帳にペンを走らせた。
「あんたら、家族かい?」
「んー、そうそう。子供達に白銀山を見せたくてね」
「そうかい。残念だけど、あそこの銀はもうほとんど無いよ」
「みたいだ。けど、鉱夫の姿はあるね。はい、書けたました」
オジさんがペンを置くと、店員が台帳を半回転させ名前を読み上げた。
「ヒロ・オージ。オージ一家ね」
店員は僕、ラジエル、ブラディの順に顔をみて、オジさんへと視線を戻すとしゃがんだ。
「この近くで新しく炭鉱が見つかったからね、人も増えるさ」
店員の言うとおり、僕達の宿探しはこの宿で八件目だった。店員は膝を伸ばすと、鍵となる木の板をカウンターに置いた。
「階段上がって二階の突き当たり、左の部屋だよ。部屋または部屋の備品の汚破損は罰金だからね」
オジさんは鍵を受け取らずに、片手をひらひらと揺らして階段に足をかけた。それを見てブラディも先に行ってしまい、僕とラジエルは目を見合わせる。ラジエルは肩をすくめた。どうやら、鍵は僕が持っていかなければいかないようだ。
僕が会釈をして鍵を持って後を追うと、店員はふん、と鼻を鳴らしてから、椅子が軋む音がした。
二階は天井が低く、頭が当たりそうであった。僕達の泊まる部屋も同じ高さで、一言に窮屈である。六畳間くらいの部屋で、二段ベッドが部屋の左右に張り付きながら二つあった。そのおかげで、人一人が立っていられる直線幅の隙間の通路が出来上がっていた。通路の突き当たりには小窓があって、カビ臭いこの部屋を換気したい衝動が湧く。
「ブラディと俺がこっちで、少年とラジ子がそっちね」
「老人をこんなせせこましいところへ登らせるな」
オジさんが勝手に寝る場所を決めると、ブラディが舌打ちをする。この二人、会話をすればずっと口喧嘩しているんだけど……主にブラディが敵意剥き出しなだけだとは思う。
「高いところ好きでしょ?」
「好きで登ってないわ」
「まあまあ、いつでも俺が背中から刺せますよってことにしておいてさ。次、お泊まりするときはブラディが下でいいよ」
人懐っこい笑顔で物騒なことを言うオジさんに、ブラディはまた舌打ちをして左側のベッドに登った。
「私は疲れた、寝る」
ブラディは潜り込むように入ってから、顔を出してこなくなった。
どうして、僕はこのオジさんと、敵であるお爺さんと一緒の部屋で寝ることになったんだったっけ?




