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明智光秀:歴史改変録 ~逆行転生した歴史オタク、三日天下を永遠の覇権へ~  作者: 天音天成
第5章:本能寺の変・完全版 ~そして麒麟は飛翔する~

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第6話:灰燼に帰す本能寺と、次なる標的(改稿版)

天正10年6月2日、払暁。

夜明けの白々とした冷たい光が、東の空から静かに京の都を照らし始めていた。


一晩中、都の空を赤黒く染め上げ、天下の常識を焼き尽くしていた業火は、周囲の町屋を巻き込むことなく、本能寺の敷地内だけでようやくその猛烈な勢いを潜めようとしていた。俺が事前に「火が外へ燃え移らぬよう風下を固めよ」と厳命していたため、京の町への延焼は完全に防がれている。


かつて豪奢を極め、天下人の威光を示すかのようにそびえ立っていた本能寺は、もはや見る影もなく灰燼かいじんに帰していた。

黒焦げになり、炭化した太い柱が時折、乾いた音を立てて崩れ落ちる。パチパチと燻る残り火の熱気と、肉や木材が焦げた鼻をつく匂いだけが、そこに第六天魔王が存在したという事実の残骸として、生温かい朝の風に乗って漂っている。


「探せ! 上様のご遺体を見つけるのだ! 骨の欠片一つでも見落とすな!」


明智の兵たちは、まだ熱気を帯びた焼け跡に足を踏み入れ、槍の穂先で瓦礫をどかしながら、信長の亡骸を必死に捜索していた。

彼らは俺の茶番劇など知る由もない。本気で信長を討ったと信じている彼らにとって、主君殺しの証となる首、あるいは遺体を発見することは、己の家名を末代まで残すための最大の武功となるからだ。


「殿! こちらへ!」


やがて、すすと灰で顔を真っ黒にした重臣の斎藤利三が、興奮冷めやらぬ、しかしかすかに引きつった声で俺の元へ駆け寄ってきた。

その手には、布に包まれた何かと、黒く焼け焦げた金属の破片が握られている。


「焼け跡の最も奥深くから、上様や近習たちのものと思われるご遺体の一部と、あの方のお気に入りであった『南蛮具足』の残骸を発見いたしました! ……しかし、損傷があまりにも激しく、無数の刀傷が刻まれた上に激しく炭化しており、お顔の判別は到底……」

利三は、無念そうに首を横に振った。


「……そうか」


俺は、利三の報告を聞き、心の中で深く安堵の息を吐き出した。

あらかじめ牢屋から引きずり出して用意しておいた『身代わりの死体』の偽装工作が、完璧に機能したのだ。


「上様は、最期まで己の誇りを貫き、猛将として見事にお果てになられたか」


俺は悲痛な面持ちを作って目を伏せ、ゆっくりと深く頷いてみせた。

俺のその真に迫った「哀悼の演技」を見て、周囲にいた将校たちも、かつての主君の壮絶な最期を思い、静かに頭を垂れた。


これで「織田信長」という強烈な光は、日本の歴史から完全に消滅した。

そして、俺という「主君殺しの大悪人」に、すべてのヘイトと注目が向けられる。俺の望んだ通りの、世界を騙し切るための完璧な盤面が完成したのだ。


俺は閉じていた目を開き、腰に差していた水色桔梗の軍扇をバサリと広げた。

そして、周囲で焼け跡の捜索を続ける数千の兵たち全員に聞こえるように、腹の底から、雷鳴のような声を張り上げた。


「皆の者、よく聞け!! 上様は討ち取った! これより、この日の本は我ら明智の天下である!!」


「「「おおおおおッ!!」」」

勝利の余韻と、新たな天下の始まりに酔いしれる兵たちの勝鬨かちどきが、夜明けの空に地響きのように響き渡る。


「だが、浮かれるな! 各隊、直ちに京の町に展開し、治安維持に努めよ! どさくさに紛れて略奪や狼藉を働く者は、身内であっても即座に斬り捨てよ! 朝廷と公家衆の警護を厳とせよ! 我らは暴徒ではない、新たな秩序を築く者であると天下に示せ!!」


俺の苛烈な命令に、兵たちは即座に気を引き締め、「ははっ!」と散開していった。

史実の明智光秀も、本能寺の変の直後に京の治安を驚くべき早さで回復させている。俺もそれに倣い、ただちに都市機能の掌握に取り掛かった。


だが、俺の目はすでに、この焼け跡にも、京の都にも向いていなかった。


(魔王は無事に鳥籠から飛び立った。世界を騙す茶番劇の第一幕は、これにて完結だ。……だが、本当の問題は、ここからだ)


俺は懐から一つの封をされた書状を取り出し、傍らの影に控えていた忍びへと無言で手渡した。

「予定通り、西国で毛利と対峙している羽柴秀吉の陣営に向け、『上様討死』の報せを持たせた偽の使者を放て。……ただし、だ。決して怪しまれぬよう、極めて間抜けな密使を演じさせよ。道を間違え、農民に扮した秀吉の忍びに偶然を装って捕縛され、この書状を奪われるのだ」


「はっ。御意に。秀吉の疑り深い目を欺くため、最高の手の者を向かわせます」

忍びは音もなく一礼し、朝靄の中に溶け込むように消えていった。


史実において、本能寺の変の直後、光秀が毛利陣営に向けて放った密使は、なぜか間違えて秀吉の陣営に迷い込み、捕縛されてしまう。

この「あり得ないような初歩的なミス」によって、秀吉は誰よりも早く信長の死を知り、『中国大返し』という神速の進軍で京へ戻ってくることができたのだ。


後世の歴史家はこれを「光秀の痛恨のミス」あるいは「天が秀吉に味方した偶然」と呼ぶ。

だが、違う。

合理性を極めた俺(光秀)が、そんなマヌケなミスを犯すはずがないのだ。


これは、俺が意図的に仕組んだトラップである。

俺のチート頭脳の前に何度も出世の策を奪われ、煮え湯を飲まされ、西国へ左遷された天才・羽柴秀吉。

彼ほどの疑り深い男に、「信長が死んだ」と普通に伝えても、罠だと警戒してすぐには動かないだろう。

だからこそ、「光秀の痛恨のミスによって、自分だけが偶然にこの極秘情報を手に入れた」と錯覚させるのだ。そうすれば、あの野心家の野猿は、自分の幸運を信じて疑わず、狂喜乱舞して全軍を率いて戻ってくる。


俺は昇り始めた眩しい朝日を背に受けながら、遠く西の空――中国地方の方角を静かに睨みつけた。


遠く備中国・高松城の泥沼の中でこの報せを聞き、天下獲りの野心に目を血走らせるであろう、あの男。

彼に最高の餌を与え、この京へと誘い込み、俺があらかじめ用意した最高の『舞台』で、彼の野心を完膚なきまでに叩き潰す。


歴史オタクによる、究極の歴史改変プロデュースの第二幕が、今、静かに始動した。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

炎に包まれた本能寺から、織田信長がいかにして包囲網を抜け出したのか……


次回「第5章 第7話:土木チートの逃走路と、堺への疾走」

光秀が極秘裏に用意していたのは、まさかの「地下トロッコ」と「サスペンション付き近代馬車」!?

快適すぎる逃避行を満喫する信長たちの姿をお届けします。ぜひお楽しみに!


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