第11話:地獄の底まで。最愛の妻との誓い
天下人の暗殺者として、汚名を被る覚悟。
震える俺の言葉を聞いて、熙子は――まったく、動じなかった。
彼女の大きな瞳は、一ミリの揺らぎも、恐怖の色もなく、真っ直ぐに俺を見つめ返している。
「あなた様」
熙子は、俺の背中から前に回り込み、正座をして俺の目を真っ直ぐに見た。
そして、俺の大きな手を、自らの両手で包み込んだ。
「あなた様が、上様をどれほど深く理解し、バディ(相棒)としてお慕いしているか。私は、一番よく知っております」
熙子の言葉に、俺はハッとした。
「平和になったこの日の本で、破壊の力を持て余した上様が、どれほど苦しんでおられるかも。……あなた様の大芝居は、上様を救うための道なのですね?」
「……ああ。このままでは、上様は狂気に飲まれて自滅する。だから俺が、悪役を演じて舞台を降ろしてやる」
「ならば、何も恐れることはございません」
熙子は、聖母のような、だが武士の妻としての強靭な覚悟を持った微笑みを浮かべた。
「あなた様が創る新しい世を、私は信じております。それに、あの御屋形様を救えるのは、世界中であなた様しかおりません」
「熙子……」
「あなた様が地獄の底へ落ちるというのなら、私もどこまでも、喜んでお供いたします。……ですから、どうか胸を張って、あなた様の信じる道をお進みください」
その言葉に、俺の心に巣食っていた恐怖と重圧が、嘘のように消え去っていった。
未来の知識を持つ「異物」として、常に孤独な戦いを強いられてきた俺。だが、この女性だけは、俺の異質さをすべて包み込み、無条件で信じてくれるのだ。
「愛しているよ、熙子」
俺はたまらず、彼女を強く、強く抱き寄せた。
熙子もまた、俺の背中に腕を回し、優しく撫でてくれた。
俺はこの子を絶対に幸せにすると誓ったが、本当に救われているのは、いつだって俺の方だった。
「必ず、上様を救い出し、俺たちで誰も見たことのない新しい日の本を作ろう。……お前が安心して、ずっと笑っていられる世界を」
「はい、十兵衛様。……ずっと、お傍におります」
最強の精神的支柱を得て、俺の迷いは完全に消え去った。
翌日から、俺は一切の躊躇を捨て、歴史の歯車を破壊するためのクーデター準備を、最終段階へと移行させたのだった。
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