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明智光秀:歴史改変録 ~逆行転生した歴史オタク、三日天下を永遠の覇権へ~  作者: 天音天成
第3章:天下布武・完全攻略(チート)編 ~先回りされる秀吉~

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第13話:金融制裁① ~関所撤廃と超低金利貸付~

「金融制裁、だと……?」

信長は床几に座ったまま、その聞き慣れない言葉を口の中で転がすように呟いた。

怒りに任せて比叡山を灰燼に帰そうとしていた「魔王」の双眸には、今や破壊衝動に代わって、底知れぬ知的好奇心の光が宿っていた。


「はい。武力による焼き討ちは、一時的な恐怖を煽ることはできても、我々に『仏敵』という拭いがたい汚名を着せることになります。今後の天下布武において、それはあまりに致命的な負債リスクです」

俺は扇子で地図を指し示しながら、静かに、しかし力強く言葉を紡いだ。

「だからこそ、我々は血を流さずに彼らの首を真綿で絞め上げます。比叡山の権威の源泉である『金脈』を完全に破壊するのです」


「なるほど。理屈は分かった。だが十兵衛、どうやって奴らの金脈を断つというのだ?」

「二つの手を使います。一つ目は、上様の絶対的な権力を用いた『関所の完全撤廃』です」


俺は地図上の、比叡山周辺に点在する関所の印に、次々とバツ印をつけていった。

「比叡山周辺の関所をすべて叩き壊し、商人が自由に、無税で商売できる『楽市楽座』を大々的に宣言していただきます。これまで比叡山が商人から吸い上げていた莫大な通行税と運上金(みかじめ料)の収入を、明日から完全に『ゼロ』にします」

「ふむ……。我々の領内で行っている楽市楽座を、京周辺にまで拡大するということか。確かに奴らの懐は痛むだろう。だが、それだけでは奴らの『土倉(高利貸し)』の商売は潰せんぞ? すでに貸し付けている金からは、利子を取り立て続けることができるのだからな」

信長の指摘は鋭い。戦国時代のトップに立つ男の頭脳は、経済の理屈を瞬時に理解し始めていた。


「ええ、その通りです。そこで二つ目の策が活きます。……堺の会合衆・今井宗久殿から引き出した莫大な資本を使い、我々自身が『銀行』になります」

「ぎん……こう?」


現代の金融システムを表す言葉を聞かされ、信長だけでなく、周囲で聞いていた柴田勝家や丹羽長秀といった武将たちも一様に首を傾げた。


「簡単な話です。現在、比叡山の土倉は、周辺の領民や小さな商人たちに法外な高利息で金を貸し付け、彼らの生き血を啜っています。ならば我々は、織田家の御用商人である今井宗久殿の資金力を背景に、領民たちに対して『無利子、あるいは超低金利』で金を貸してやるのです」


「なっ……!?」

その瞬間、陣幕の中にどよめきが走った。


「無利子で金を貸すだと!? 明智殿、正気か! そんなことをすれば、我らの金がただ出ていくだけではないか!」

柴田勝家が血相を変えて口を挟んだ。無理もない。当時の常識からすれば、金を貸して利息を取らないなど、狂気の沙汰でしかないのだ。

だが、俺は冷笑を浮かべて勝家を一瞥した。


「勝家殿、目先の銭にとらわれてはいけません。我々が超低金利で金を貸し出せば、民はどう動くでしょうか? 誰もがこぞって、比叡山の高利貸しから離れ、我々『織田銀行』から金を借りるようになります。比叡山には、新たな客は一人として寄り付かず、一銭の新規利息も入らなくなる」


俺は信長に向き直り、さらに悪辣な現代の企業戦略――『M&Aと債務引き受け』の概念を説明した。

「さらに、現在すでに比叡山に多額の借金をして首が回らなくなっている者たちについては、我々がその借金を『肩代わり』して、比叡山へ一括返済してやります」

「借金の肩代わりだと? ますます我々の持ち出しが増えるばかりではないか!」

「減った分は、借金苦から解放された領民たちに、我々の『楽市楽座』で大いに商売をさせ、豊かになったところから適正な『税』として回収すればよいのです。我々は数年がかりで投資を回収します」


俺は言葉を区切り、悪魔的な笑みを深めた。

「一方、比叡山はどうなるか。我々が一括返済してやったことで、一時的に手元に大量の現金が戻ってきます。しかし、我々が市場を独占しているため、その金を誰かに貸し出して利息を得る道が『完全に断たれている』のです。彼らは数万人の僧兵や傭兵を抱え、毎月莫大な給金と食費を支払わねばなりません。収入の道が絶たれた状態で、手元の現金が目減りしていく恐怖……。新たなお金を生み出せない彼らの資金繰りは、数ヶ月以内に完全に立ち行かなくなります」


武力ではない。圧倒的な「資本力」による市場の独占と、意図的な価格破壊ダンピング

現代の巨大多国籍企業が、豊富な資金力を使ってライバル企業を干し上がらせる悪辣極まりない手法を、俺は戦国時代に持ち込んだのだ。


「名付けて……『完全金融制裁』です」


陣幕は、水を打ったように静まり返った。

誰もが、己の理解を超えた次元で展開される「目に見えない戦」の恐ろしさに戦慄していた。


「……くくっ、はははははっ!!」

沈黙を破ったのは、信長の高笑いだった。

「金融制裁、か! 銭を使って敵の首を絞める。血を一滴も流さず、油の一滴も使わず、ただ『銭の巡り』を変えるだけで、あの誇り高き霊峰を地獄へ叩き落とすというのだな! 愉快だ! 実に悪辣で、お前らしい策だ、十兵衛!」


信長は獰猛な笑みを浮かべ、バァン! と膝を打った。

「よし、この比叡山包囲網、全権をお前に委ねる! 今井宗久の莫大な資本を使い、存分に奴らの金脈を断ち切ってみせよ!!」

「はっ。御意のままに」


俺が恭しく頭を下げたその時、陣幕の隅で平伏していた木下藤吉郎(秀吉)の背中が、小刻みに震えているのが見えた。

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