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明智光秀:歴史改変録 ~逆行転生した歴史オタク、三日天下を永遠の覇権へ~  作者: 天音天成
第2章:青年・雌伏編 ~魔王との邂逅と、猿の影~

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第2章 第11話:清洲城での邂逅と、魔王の威圧感(改稿版)

永禄8年(1565年)秋。

俺(明智光秀)は、大和国から救出し、越前で「金ピカの神輿」として完璧に装飾した次期将軍・足利義昭を奉じ、ついに尾張国(愛知県)の清洲城へと足を踏み入れた。


美濃の国主である斎藤道三と強固な同盟を結んでいる尾張の覇王・織田信長は、この清洲城を本拠とし、来るべき上洛の機を虎視眈々と窺っていた。俺が仕掛けた歴史改変のスピードアップにより、史実の立政寺での対面よりも三年も早く、歴史の特異点が訪れようとしていたのだ。


「な、なんだあの行列は……!?」

「あれが本当に、京を追われて流浪の身となったという公方様(将軍)の御一行か!?」


清洲の城下町や街道沿いで警護に当たっていた織田の兵たち、そして見物していた尾張の民草たちは、俺たちが引き連れてきた入国の行列を見るなり、一様に度肝を抜かれ、口をポカンと開けてその場に平伏した。


それもそのはずだ。

史実の通りであれば、三好三人衆に京を追われ、一文無しで命からがら逃げ延びたはずの「落ちぶれた将軍家」である。

だが、今の義昭は違う。堺の豪商すら凌ぐ、目も眩むような豪華絢爛な漆塗りの駕籠かごに乗り、煌びやかな金糸銀糸が織り込まれた最高級の西陣織の着物をまとい、数百の供回りを連れて堂々と入国してきたのだ。

駕籠の周りを固めるのは、俺が莫大な金で雇い入れた、最新の火縄銃と南蛮胴の鎧で武装した屈強な傭兵たちである。その威容は、一介の大名の行軍を遥かに凌駕していた。


「十兵衛! 見よ、皆が私の威光にひれ伏しておるぞ! これもすべてお前の手配のおかげじゃ!」


駕籠の御簾みすの奥から、上機嫌で声をかけてくる義昭。俺は馬を寄せ、恭しく頭を下げた。


「はっ。将軍家の威信を示すためには、これくらいは当然の振る舞いにございます。義昭様は、どうぞ胸を張って、鷹揚おうようにお頷きください。彼らは貴方様の絶対的な権威にひれ伏しているのですから」

「うむ! 苦しゅうない、苦しゅうないぞ!」


義昭はすっかり俺に依存しきり、自分で考えることを放棄した無邪気な子供のように笑い、扇子を振って見物人に応えている。

「すべてを俺に丸投げする、都合の良い神輿」の初お披露目としては、これ以上ない完璧なデモンストレーションだった。織田家の兵たちに「次期将軍はこれほどまでの財力と威光を持っているのだ」という強烈な心理的インパクトを、視覚から完全に植え付けることに成功したのだ。


義昭を清洲城の極上の客間へ案内させ、女中たちに最上級の茶と菓子で接待させた後。

俺は単身、信長が待つ本丸の大広間へと向かった。


(いよいよだ……)


大広間の重厚なふすまの前に立った瞬間、俺の胸の奥で、重度の歴史オタクとしての血が、ドクン、ドクンと激しく脈打つ。

未来の知識チートをインストールされた俺の頭脳が、ついに戦国最大の怪物・織田信長と、歴史の表舞台で直接交わる時が来たのだ。


「入れ」


ふすまの向こうから、低く、しかし腹の底を直接揺さぶるような声が響いた。

俺が静かにふすまを開け、広間の敷居を跨いだ瞬間――俺の肌を、チリチリとした鋭い痛みが撫でた。


「……ほう」


大広間の左右には、後世に名を轟かせる『織田家オールスター』とも呼ぶべき猛将たちが、ズラリと居並んでいた。


最前列で腕を組み、鬼のような形相でこちらを睨みつけているのは、「鬼柴田」の異名をとる剛腕・柴田勝家。

その隣で、扇子をもてあそびながら冷徹な視線を送ってくるのは、冷静沈着にして織田軍の屋台骨を支える実務の天才・丹羽長秀。

さらに奥には、忍びの頭目のような鋭い眼光を放ち、少しの隙も絶対に見逃さない滝川一益。そして「退き佐久間」として知られる佐久間信盛の姿もある。


彼らが、美濃から来た得体の知れない浪人である俺に対し、一斉に値踏みするような、そして少しでも不審な動きを見せれば即座に斬り捨てるような、凄まじい殺気を突き刺してきているのだ。


(すげえ……。本物の、生きた戦国武将たちのプレッシャーだ)


俺は内心で感動に打ち震えながらも、顔には一切の感情を出さず、静かに足を踏み入れた。

だが、そんな歴戦の猛将たちの放つ殺気すら、取るに足らないそよ風に思えるほどの『絶対的な重圧』が、部屋の最奥から放たれていた。


上座。

一段高くなった床几しょうぎの上に、圧倒的な覇気と、底知れぬ狂気を薄皮一枚で包み込んだような男が座っていた。


織田三郎信長。


(これが……生きた、魔王……!)


俺の呼吸が、ほんの一瞬だけ止まった。

教科書や大河ドラマで見る肖像画よりも、ずっと精悍で、恐ろしいほどの美しさを湛えていた。無駄な肉の一切ない、いつ獲物に飛びかかってもおかしくない豹のような、しなやかで強靭な体躯。鼻筋の通った整った顔立ち。

そして何より恐ろしいのは、その双眸そうぼうだ。


一度でも目を合わせれば、魂の奥底、前世の記憶まで丸ごと見透かされ、射抜かれてしまいそうな、黒曜石のように冷たく、野獣のように鋭い眼差し。

ただ無言でそこに座っているだけで、周囲の空間そのものを支配し、自らの呼吸のペースに完全に巻き込んでしまうほどの、人間離れした圧倒的なカリスマがそこにあった。

「魔王」という後世の呼び名が、これほど似合う男は他にいない。


そして、その信長の斜め後ろには、美しい小袖をまとった絶世の美女が静かに控えている。

俺が十数年前に美濃から「最高のプロデューサー兼エージェント」として送り込んだ義妹・帰蝶(濃姫)だ。


帰蝶は俺の姿を認めると、表情は一切崩さずに、扇子で口元を隠すふりをしながら、ほんのわずかに、しかし確かな意思を持って伏し目がちに目配せをした。


『すべて順調。あなたの用意した舞台は、完全に整っているわ』


そのわずかな仕草だけで、彼女が俺に伝えたかったメッセージは完全に理解できた。

史実において謎に包まれていた彼女は、俺が徹底的に教え込んだ心理学と諜報術を駆使し、信長の唯一無二の理解者として、織田家中で確固たる地位を築き上げていたのだ。

身内の暗殺や裏切りに遭い、人間不信になりかけていた信長の孤独に寄り添い、彼を精神的に支え続けた。そして今日この日のために、重臣たちの「どこの馬の骨とも知れぬ浪人など会う必要はない」という反対を抑え込み、俺と信長が対等に話せるだけの地固めをしてくれていたのである。


「……貴様が、明智十兵衛光秀か」


信長の声が、静かに広間に響いた。

決して大声を張り上げたわけではない。だが、その地の底から響くような声は、大広間の空気をビリビリと震わせるような恐ろしい重圧を伴っていた。並の武将なら、この声を掛けられただけで蛇に睨まれた蛙のように縮み上がり、言葉を失って平伏するだろう。


「はっ。お初にお目にかかります。此度は公方(将軍)様を奉じ、遠路越前より参りました」


俺は平然と、しかし武士としての礼節を完璧に保った無駄のない動作で、深々と頭を下げた。


「公方様を無傷で保護し、その莫大な金品で飾り立てて俺の元へ連れてきた手腕、見事である。帰蝶からも、お前の『常軌を逸した頭脳と見識』については、これでもかというほど聞かされておるわ」


信長は床几から身を乗り出し、顎の無精髭を撫でながら、俺を射抜くように睨みつけた。


「だがな、十兵衛」


空気が、一段と冷たくなった。

周囲に控える柴田や丹羽たちが、無意識のうちに刀の柄に手をかけ、体の重心をわずかに前に傾ける気配がする。俺が一つでも返答を誤れば、即座に両断される死の緊張感。


「将軍という『神輿』を担いできただけで、この織田信長がホイホイと小躍りして動くと思うなよ? 確かに上洛の大義名分としては、これ以上ない極上の手札だが、それだけならば公方様だけをこちらで引き取り、貴様には適当な褒美の金でもくれてやって、この場で追い返せば済む話だ」


信長の目が、鋭い三日月の形に細められた。

そこにあるのは、血筋や権威といった古い価値観を微塵も信じない、徹底した合理主義者の冷酷な光だった。

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