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明智光秀:歴史改変録 ~逆行転生した歴史オタク、三日天下を永遠の覇権へ~  作者: 天音天成
第1章:幼年・美濃編 ~チート赤ん坊、マムシを飼い慣らす~

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第21話:莫大な富と、暗躍する愚息(再改稿版)

稲葉山城の薄暗い密室で、俺(明智光秀)と美濃の国主・斎藤道三が『悪魔の契約』を交わし、「莫大な工作資金」と「硝石(火薬)」の極秘プロジェクトが動き出してから、数年の歳月が経過した。


時代は天文16年(1547年)。

俺が描いたチート計画は、完璧に、そして予想を遥かに上回る凄まじい速度と規模で大成功を収めていた。


俺の【絶対記憶】がもたらした最大の成果。それは、圧倒的な『経済チート(チートな財布)』の確立である。

歴史オタクである俺は当然知っていた。銀の精錬技術である『灰吹法はいぶきほう』自体は、すでに十数年前(1533年頃)、博多の商人によって石見銀山に持ち込まれていることを。

そして同時に、石見銀山は大内氏や尼子氏といった巨大な大名たちと地元国人が利権をガチガチに握っており、一介の商人が技術提供のピンハネで国を買えるほどの暴利を得るなど、不可能であるということも。


だからこそ、俺が堺の豪商・今井宗久らと結託して仕掛けたのは、単なる技術提供ではない。

当時の初期の灰吹法は歩留まりが悪く、大量のロスを出していた。そこで俺は、現代の化学知識(不純物の完全分離など)を用いて、捨てるはずの鉱滓ズリからも限界まで銀を絞り出す『極限の改良型・灰吹法』のノウハウを宗久たちに提供した。

さらに、俺の脳内にある「近代の地質調査データ」を引き出し、美濃や周辺の山々に眠る【未発見の隠し鉱脈】を道三に教え、他国の大名に知られることなく、自国の領内で密かに極上の銀を量産させたのだ。


それだけではない。宗久たちに提供した『石鹸シャボン』などの特産品の独占販売権。そして何より、彼らを巻き込んで構築した『為替手形(割符)』を用いた高度な金融ネットワーク。

これらを組み合わせることで、美濃の銀と南蛮貿易の利益は、俺の現代知識を用いた緻密な資金管理と何重ものダミー組織を経由した完璧なマネーロンダリングによって、表向きは「正当な商取引の利益」を装いながら、道三の懐へと濁流のように流れ込んでいた。


同時に、領内の人目につかない山間部に厳重な警備を敷いて稼働させた、巨大な『硝石丘しょうせききゅう』のプラントも完璧に機能していた。

民の排泄物や枯れ草、土といったタダ同然の廃棄物を、買い取り制にして農民から集める。農民はゴミを売って小銭を得られるため不満を持たず、むしろ喜んで協力した。そうして集めた汚物をバクテリアの発酵を利用して精製し、戦の勝敗を決する黄金(硝石)へと次々に変換していく。


道三は、得られた底なしの裏金を湯水のように使い、堺を経由して南蛮船から「鉄砲(火縄銃)の筒」そのものを猛烈な勢いで買い占めていた。

そして、その弾薬となる火薬は、自国の硝石丘から無尽蔵に供給される。


今や美濃の斎藤家は、道三個人の武力や権謀術数だけでなく、「経済力」と「最先端の軍事技術」においても、日の本で最も豊かで恐ろしい、アンタッチャブルな巨大国家になりつつあった。


俺という未来のすべてを知る『チート頭脳』と、道三という権力と莫大な資金を持つ『冷酷無比な実行力』のタッグ。

それは、刀と槍で領土を奪い合うというこれまでの戦国時代のルールにおいて、完全にゲームバランスを崩壊させるバグのような存在だった。


だが――光が強烈になればなるほど、そこに落ちる影もまた、どす黒く、深く濃くなるものである。


「……ええい、忌々しい!! 父上は、完全にあの明智の小倅こせがれにたぶらかされておる!」


稲葉山城の奥深く。昼間でも陽の光が届かず、重厚なふすまに閉ざされた一室で、怒号が響き渡った。

大柄な男が、怒りに任せて太い拳で畳を幾度も激しく叩きつけている。


道三の長男であり、斎藤家の次期当主とされる男――斎藤義龍よしたつだ。

六尺(約180センチ)近い巨躯を持ち、武勇に優れた彼は、史実においてこの数年後に父親である道三に反旗を翻し、長良川の戦いで実の父の首を討ち取って美濃を血塗られた混乱の渦に突き落とすことになる張本人である。


「近頃の父上は、戦やまつりごとの重要な決定のすべてを、あの十兵衛なる若造に相談して決めおる! しかも、我ら一門には用途はおろか、出所すら不明の莫大な金が裏で動いているというではないか! 次期当主であるこの俺を差し置いて、だ!」


義龍の血走った目に、暗く淀んだ殺意と、激しい嫉妬の炎が燃え盛っていた。


無理もない。彼は旧態依然とした、典型的な「戦国の武将」である。

己の武芸を磨き、戦場で槍を振るって敵の首を獲り、血を流して領地を奪い、派閥を作って権力を握る。それこそが武士の誉れであり、唯一の正しい道だと信じて疑わない。

商人上がりの父親がコソコソと裏で動かしている「経済(銀の為替)」や「化学技術(硝石の発酵)」の絶対的な価値など、彼の旧式の脳みそでは到底理解できないのだ。


彼から見れば、光秀が行っていることは「肥溜めをいじくり回し、商人どもと帳簿の数字を弄るだけの、武士の風上にも置けない下賤な所業」でしかない。

ただ、「戦場に出たこともない怪しげな若造が、偉大な父を狂わせ、美濃の実権を裏から乗っ取ろうとしている」という強烈な危機感と、自分が蚊帳の外に置かれている屈辱感だけが、彼の心をどす黒く染め上げていた。


さらに、義龍の心にはもう一つ、深く根を下ろした呪いがあった。

自分は道三の本当の息子ではなく、かつて道三に追放された旧主・土岐頼芸ときよりあきの血を引く落胤らくいんなのではないか、という美濃で密かに囁かれている噂だ。

道三が最近、義龍を「愚か者」と見下し、弟たちばかりを可愛がっているという事実が、その疑念と憎悪に拍車をかけていた。


「若君の仰る通りにございます。御隠居様(道三)は、明智の妖術に魅入られ、武士としての誇りを失われました。ここは一つ、我ら一門でこっそりと兵を挙げ、あの目障りな明智の小倅を『物理的』に排除してしまいましょう」


義龍の周囲を囲む取り巻きの武将たちが、己の保身と、新しい権力体制での出世欲から、口々に謀反を煽り立てる。

彼らもまた、古い価値観を持つ武将たちだ。槍一本で成り上がってきた自分たちの既得権益が、戦場に出ずして莫大な富を生み出す光秀という「未知の存在」によって脅かされていることに、強い恐怖を抱いていた。


「そして、明智を討ち取った後、御隠居様には此度の混乱の責任をとっていただき、美濃の実権を完全に若君へお譲りいただくのです。そうすれば、美濃は再び、正しい武士の国に戻りましょう」


「……よし。美濃の軍事力の要である有力国衆、『西美濃三人衆(稲葉一鉄、安藤守就、氏家卜全)』に、ただちに密使を送れ」


取り巻きの言葉に背中を押され、義龍の目に決意の光が宿った。


「奴らも、最近の父上の強引な専制と、成り上がりの明智の台頭には、腹の底で不満を抱いているはずだ。奴らは誇り高き武人。金と肥溜めの臭いしかしない明智の若造よりも、この俺の武威を支持するに決まっている。俺に味方するよう密かに説得するのだ」


義龍は、己の完璧な謀略の始まりにほくそ笑んだ。

西美濃三人衆という強大な軍事力さえ味方につければ、力技で父と光秀を完全に圧倒できると踏んだのだ。彼にとって、力(武力)こそがすべてだった。


だが、彼は知らなかった。

その密談で交わされた一言一句はおろか、密使の顔触れ、彼らが誰に会い、何刻なんどきに屋敷を出発するのか、その逃走ルートに至るまで。


義龍が重厚なふすまの奥で得意げに口を開いたその数時間後には、すべてが紙に記され、俺の手元に届けられているという、恐ろしい事実を。


「……愚かな。古い時代の常識ルールから一歩も抜け出せていない」


同じ稲葉山城の別の区画。

明るく風通しの良い俺の執務室で、俺は一枚の小さな密書を読み終え、囲炉裏の火に放り込んで燃やした。


戦国時代における『情報』とは、忍びを数人放って敵の陣形を探る程度のものだと思われている。

だが、俺が裏金を使って美濃中に張り巡らせたのは、そんな生温いものではない。現代の国家情報機関(CIAやMI6)をモデルにした、徹底的な『近代スパイネットワーク』だ。


義龍の屋敷にいる茶坊主、取り巻きの武将の下働き、掃除婦、さらには彼らが通う遊郭の女に至るまで。俺の資金力によって買収され、俺に情報を流すエージェントとして組み込まれている。

情報こそが最高の武器であり、情報の非対称性(自分だけが相手の手札を知っている状態)こそが、戦わずして勝つための絶対条件なのだから。


「さて……史実通りに踊り狂う哀れな義龍様を、どうやって『戦う前に』完全に詰ませてやろうか」


俺は、傍らに積まれた俺自身だけが完全に把握している分厚い『裏帳簿』に手を置き、冷たく、そして酷薄な笑みを浮かべた。

武力による謀反を、一滴の血も流さず、現代の『金融と情報の暴力』で完膚なきまでにへし折るための残酷なシナリオが、俺の脳内で完成の時を迎えていた

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