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明智光秀:歴史改変録 ~逆行転生オタクの覇権~【第2部(外伝):第六天魔王と黄金の軍師、世界蹂躙編スタート!】  作者: 天音天成
第6章(エピローグ):大日本帝国の夜明け

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第12話:誰もが笑える世界と、昇華された想い

「ふふっ。本当に、心の底から嬉しそうなお顔ですね、十兵衛様」


俺が相棒たちの途方もないスケールの暴れっぷりに、心地よい余韻に浸りながら青空を見上げていると。

隣で一緒に手紙を読み終えた最愛の正室・熙子ひろこが、穏やかで落ち着いた、俺の心を一番癒やしてくれるいつもの声とともに、そっと俺の腕に寄り添ってきた。


「ああ。あいつら、海の外でも相変わらず手加減なしの大暴れをしているようだ。……お茶が美味しいよ、熙子。このクッキーのバターの濃厚な甘さも、俺の好みにぴったりだ」

「ありがとうございます。あなた様が以前、紙に書いてくださった『未来の製法』の通りに、厨房の者たちと一緒に分量を正確に量って焼いてみましたの。喜んでいただけて、嬉しいです」


俺の褒め言葉に、熙子は目尻に優しく上品な皺を寄せて微笑み、俺の右手に、そっと自分の両手を重ねた。

その温もりが、俺の心の一番深いところに、すとんと落ちてくる。


俺は、彼女の頭部に結い上げられた髪を見つめた。

還暦を前にして、かつての漆黒の髪には柔らかな白いものが混じり始めている。だが、上質な椿油で丁寧に手入れされたその髪は、初夏の日差しを反射して、歳を重ねた女性特有の、落ち着きのある気品に満ちた艶やかな輝きを放っていた。

その髪を見るたび、俺の胸の奥には静かで、ひどく熱い感情が込み上げてくるのだ。


前世の記憶を持ったまま、この戦国時代という血生臭く、明日死ぬことも珍しくない理不尽な世界に転生したと気づいた時の絶望。

現代の倫理観を持つ俺にとって、他人の首を獲り、領地を奪い合う野蛮な乱世は、まさに地獄だった。最初はただ「自分が前世のようにブラックな環境で過労死したくないから」「三日天下の敗北者として無様に死にたくないから」という、純粋な保身のためだけに歴史の知識を使っていた。


そして、美濃の川辺で泥だらけになって泣いていたあの幼い少女に出会い、史実において極度の貧困の中で髪を売り、天下泰平を見ることなく過労で病死するという彼女の残酷な運命を知った時。「この妻の笑顔を、何があっても守り抜く」という、極めて個人的で利己的な目的が、俺の戦いのすべてになった。

マムシ(斎藤道三)を騙して莫大な資金を引き出したのも、最初はただ、俺と彼女の安全な居場所セーフティーゾーンを確保するためだったのだ。


だが。

俺のその個人的な想いは、歴史の表舞台に立ち、数々の傑物たちと交わる中で、大きく形を変えていった。


古い権威を一切恐れず、誰よりも孤独で、誰よりも純粋に新しい世界を夢見た不器用な魔王・織田信長。彼と背中を預け合い、共に天下への道を切り開いていくうちに、俺の中には「この最高の親友バディを、史実のような悲惨な狂気と自刃の運命から絶対に救い出したい」という、強烈な友情と使命感が芽生えていた。

さらに、敵として立ちはだかった秀吉の桁外れの才能に触れ、彼を殺すのではなく世界という舞台で輝かせてやりたいと願うようになった。

そしてこの十年間、家康と共に血反吐を吐きながら国のインフラを整えていく中で、かつては野盗に怯えていた農民たちや、寺子屋で希望に満ちた笑顔を見せる新世代の子供たちを目の当たりにし……俺の「妻を守る」という小さな願いは、いつしか「この時代に生きるすべての民が、理不尽に命を奪われることなく笑い合える世界を創る」という、途方もなく巨大な理想へと昇華されていたのである。


「……貴方様のおかげで、この日の本は、誰もが腹いっぱいご飯を食べられ、誰もが理不尽に命を奪われることなく笑える、本当に素晴らしい世になりましたね」

熙子が、庭に咲き乱れる色鮮やかな紫陽花を見つめながら、愛おしそうに目を細めた。


「俺一人の力じゃない。お前がずっと、どんな時も俺の突飛な考えを信じて、隣で支えてくれたからだよ」

俺は、彼女の言葉に首を振って、優しく微笑みかけた。


「俺が歴史の歯車を強引に捻じ曲げようとした最初の理由は、ただお前を、俺のバッドエンドの道連れにしたくなかったからだ。……だが、お前を守りたいという俺の我儘わがままが、上様という最高の友を救うことに繋がり、家康殿たちと新しい時代を拓く原動力になり、気づけばこんな立派な国が出来上がっていた。……全部、俺に『守るべきもの』を教えてくれた、お前のおかげなんだよ」


俺がそう言うと、熙子は少しだけ驚いたように目を丸くし、そして大粒の涙を瞳に浮かべながら、長年連れ添った夫婦にしか見せられない、この世で最も美しい慈愛の笑顔を見せた。


「ふふっ。あなた様は、いつも私のためにと言って、誰も見たことのない素晴らしい世界を見せてくださいました。でも、その世界には、あなた様が愛したお友達や、この国で暮らすたくさんの人々の笑顔も溢れています。……それが、私は何よりも、心の底から嬉しく、誇らしいのです」


俺は妻の手の温もりを、優しく、けれど絶対に離さないという確かな意志を込めて、強く握り返した。


天下泰平も、近代化も、そして歴史の改変も、すべてはこの瞬間のためにあったのだ。

親友たちは遠い異国で笑い、国は平和に回り、隣には共に白髪の混じり始めた最愛の妻が微笑んでいる。

これこそが、俺がこの血みどろの世界で戦い抜いて手に入れた、最高の『ハッピーエンド』だった。

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