紫の毛布にくるまった少年
太陽が平面世界の縁から昇った。その黄色い顔が、黄金の島を朝の光で照らした。太陽は茶色い目を開き、偉大なるアトランティスの島と、世界の首都にして巨大な柱の都、アクロポリスを微笑みながら見下ろした。
ああ、なんと美しい光景だろう。黄金の壮麗さに満ちた大地は、光を浴びて輝いていた。
アトランティスの島。そこでは川が液体の黄金となって流れていた。それは聖なる水であり、アトラスの脇腹に刻まれた傷口から湧き出るものだった。なだらかな丘の牧草地に生える草も、畑の小麦も、すべて黄金色に染まっていた。聖なる意志が創造した生命の源が、大地のあらゆるものに宿っていたのだ。
アトランティスの大地が黄金に輝き、完全なものとなったのは、アトラスの身体のおかげだった。
六千四百万エーカーにも及ぶ黄金の丘陵、河川、森林、湖。そのすべてが、ひとつの存在の傷口から永遠に流れ続ける水によって生み出されていた。
そこは豊穣の地だった。作物が枯れることはなく、病が大地を襲うこともなく、人々は何世紀にもわたって生き続けた。湖から立ち上る水蒸気によって雲までもが黄金色に染まっていた。島の河口では、純粋な聖水が汚れた塩水の海と混ざり合おうとしながら、激しく流れ続けていた。
このアトランティス島には、アトラスの平面世界に住む全人口の三分の一以上が暮らしていた。
彼らの生活は、ほかのどこにも比べられないほど恵まれていた。健康、幸福、そして快適さにおいて、彼らに並ぶ者は世界のどこにもいなかった。
広大な大都市に暮らすアトランティス人たちは、豊かな生活を送り、多くの子どもをもうけた。常に十分な食事に恵まれ、健康と力に満ちていた。彼らは自然な死を迎えるまで、平均して二百年から三百年もの長い年月を生きた。
人口が密集するこの黄金の島の中心には、巨大な山岳都市アクロポリスがそびえていた。高いオリンポス山の頂に築かれた都市である。
都市の城壁、建物、水道橋、神殿、そして塔は、いずれも高くそびえ、精巧な大理石と黄金で造られていた。まばゆい輝きを放つその建築物は、意味と美しさを追求し、細部に至るまで洗練された技術と入念な配慮によって設計されていた。
この山上の都市には、何百万もの人々が暮らしていた。
そして彼らの頭上には、世界の救世主にして守護者、偉大なる黄金の巨人アトラスが立っていた。
柱を支えるアトラスは、聖なる意志そのものが現世に顕現した姿だと信じられていた。
アトラスは、黄金の身体を持つ男だった。衣服を身につけず、山頂で太陽の光を浴びて輝いていた。百マイル以内に暮らす者なら誰でも、彼が永遠に苦闘する姿を目にすることができた。
その身長は千二百三十三フィート。男を二百人積み重ねたほどの高さだった。筋肉は完璧な均衡を保ち、理想的な肉体を形作っていた。
それほどの巨人が、どれほど苦しんでいることか。
筋肉はぴくりと震え、脚は揺れていた。それでも、彼は決して止まらなかった。
世界が創造されて以来、どんな災厄が訪れようとも、彼は一度たりとも支えることをやめなかった。あの大洪水のときでさえ、彼は耐え続けた。
輝く黄金の瞳は、完璧な顔の中で光を放ち、静かに天空を見上げていた。彼は両手で柱を支え、その上に広がる空の重みを受け止めていた。
彼の頭上、世界の正確な中心には、巨大な石柱がそびえていた。
幅千フィートの基部から上へと伸びる柱は、雲を突き抜け、視界の届かない彼方まで続いていた。その頂上では、エントロピーが大空を押し潰そうとする凄まじい圧力がかかっていた。
それでも、アトラスの肉体と聖なる意志の力によって、崩れ落ちようとする天空は、かろうじて押し留められていた。
その間も、彼は世界の運命を嘆き、涙を流していた。
かつて世界は、彼を裏切ったのだ。
大洪水以前、人々は繁栄の絶頂にありながら、彼に背いた。その結果、巨像どもが大地を蹂躙し、巨大な黒曜石の槍を彼の脇腹に突き刺した。
その傷口からは、今日に至るまで聖水が流れ続けている。
聖なる意志が大空から天上の水を降らせ、腐敗した人々を滅ぼした後、水は静まり、海と島々を形作った。そして、このアトランティス島も生まれたのである。
それから五千年以上の時が流れた。
槍はとうの昔に風化して砂となり、風に吹かれて遠い土地へと散っていった。しかし、槍が残した傷だけは消えなかった。
その傷こそが、アトランティスを黄金の島へと変えたのである。
島のとある邸宅。丘の高みに建つその家からは、偉大なる柱の都アクロポリスを見渡すことができた。
そこには、裕福なアトランティス人に典型的な、豪奢な邸宅が建っていた。磨き上げられた大理石に黄金の装飾が施され、室内には精巧な赤い織物があしらわれていた。
建物の二階にある一室では、十五歳の少年が眠っていた。
巨大な羽毛のベッドに横たわり、絹のような紫色のシーツに包まれていた。整った顔は大きく柔らかな枕に沈み、艶やかな金髪は髪留めで後ろにまとめられていた。左目のすぐ下、頬には小さなほくろがあった。
そのとき、装飾の施された木製の両開き扉の向こうから、女性の声が聞こえた。
「サイラス様」
美しい少年サイラスは、心地よい眠りから大きな青い目を開いた。
目覚めて最初に思ったのは、ただ一つ。
「起きよう」
彼は素早く上半身を起こし、紫色のシーツを脇へ押しのけると、豪華なベッドから降りた。
堂々たる長身の彼は、部屋に入ってきた美しい召使いの少女を見下ろして尋ねた。
「風呂の準備はできているか?」
少女はうなずいた。
「はい、若様。いつものように温かく保っております」
「よし」
そう答えると、彼は裸のまま浴室へと向かった。
中に入ると、白い陶器の浴槽があった。彼はその中に身を沈めた。
浴槽の温度は、金属製の筒のような形をした古代の遺物によって調整されていた。表面には温度を設定するためのつまみが付いていた。
サイラスは、これを素晴らしい品だと思っていた。古代の人々が残した、再発見し、研究する価値のある遺物だった。
アトラスの平面世界に広がる古代の深奥から発見される、こうした謎めいた遺物。浴槽を温める装置のようなものに触れるたび、サイラスは探検家になりたいという思いを強くしていた。
父は彼に商人となり、自分の跡を継ぐことを望んでいた。
しかし、サイラスは今日こそ、父の遺した重荷を捨て去る日だと決めていた。父の名声に縛られることなく、自分自身の遺産を築く。自分自身の道を歩み、自らの意志で偉大さを手に入れるのだ。
彼はいつもより早く入浴を切り上げた。その日の出来事を思うと、落ち着いて湯に浸かってはいられなかったのだ。
風呂から上がると、最も上等な服に着替えた。白い絹の衣服に、紫色のショールを合わせた。召使いたちに髪を整えさせ、切りそろえさせると、母親に話をするために部屋を出た。
彼は母親のもとへ向かった。
母親は美しく、若々しい金髪に青い目をした、曲線的な体つきの女性だった。その態度には、どこか気取ったところがあった。
「決めたよ、母さん。僕は商人にはならない。聖なる意志は、間違いなく僕のために探検家ギルドへの道を用意してくださっている。それに、母さんだってずっと前からこうなると分かっていたはずだ。だから、説得しようとしても無駄だよ。僕は十五歳だ。もう一人前の男なんだ」
息子の大胆さに慣れきっていた母親は、呆れたように目を回した。
「まだそんな馬鹿げたことを言っているの? お前の父親は、この世で最も偉大な商人なのよ。それなのに、お前はただの探検家になろうというの? 考えてごらんなさい。もし、二百年先であってほしいけれど、もしお父様が亡くなったら、私たちの家族はどうなるの?」
「父さんは死なないよ――」
「お前しかいないのよ……あの人のたった一人の息子なの。お父様は、自分のすべてをお前に託しているのよ」
サイラスは目をそらした。
「そんなこと、僕は頼んでいない」
「この世界がどれほどの苦痛をお前にもたらすか、分かっていないのね」
母親は甘い声で言った。その言葉は、毒のように彼の心へ突き刺さった。
「自分がどれほど恵まれているかも理解していない。お前はこの島から出たことがない。苦しみというものを、本当の意味で知ったこともないでしょう――」
「予想どおりだね。母さんはいつも同じことを言う」
サイラスは言い返した。
「母さんが育った世界の果ての貧しい村で、僕も育てばよかったのかな。でも、だからといって、僕が与えられたものすべてを当たり前だと思っているわけじゃない」
彼の声は次第に大きくなり、感情がこもっていった。
「母さん、分からないの? 僕はすべてを捨てる覚悟があるんだ。だって、ここでの暮らしは鎖みたいなものだから。こんなのは人生じゃない。生きる意味なんてない。ただ快楽に溺れるだけの、空虚な生活だ……」
声が詰まった。
「それに……ここに一日とどまるたびに、僕の野心が少しずつ、安楽さに負けて失われていくんだ」
「出ていきなさい!」
母親は金切り声を上げた。
「愚か者になりたいなら、勝手になればいいわ! そして、どこか世界の果ての溝で、何の意味もなく死にかけたとき、自分が何を手にできたはずなのか、思い出すことね!」
サイラスが部屋を出ると、母親は扉を激しく閉めた。
「忌々しい女だ」
召使いたちに別れを告げることもなく、サイラスは屋敷を出た。
丘の麓にある町では、召命のくじ引きが行われていた。
彼は一人だった。
母親は自室にこもったままだろう。父親は商売のため、遠く離れた土地に出向いていた。二人に対して、彼はそれ以上の期待などしていなかった。
町の広場に到着した頃には、鐘はとっくに鳴り終わっていた。
彼は大勢の人々で埋め尽くされた広場を見渡し、人垣をかき分けて列へと向かった。列はいくつもあった。彼は最も短い列に加わり、順番を待った。
前に並ぶ少年たちは、不安そうに聖騎士団の僧侶たちのもとへ進んでいた。名前を石板に刻まれ、それを大理石の巨大な容器へ入れていく。
やがて、サイラスの番が来た。
「名前は?」
僧侶が尋ねた。
「サイラス・ダリウス」
「ダリウス?」
僧侶はその名に聞き覚えがあるようだった。
「いや、サイラスだけでいい」
僧侶は彼を一瞬見つめ、それから答えた。
「よろしい。そう望むのなら」
僧侶の指に刻まれた紋章が光り、石板に文字が刻まれていった。
「サイラス、金髪、青い目、左頬にほくろ」
石板を手渡すと、僧侶は付け加えた。
「ダリウスの息子よ、お前のことは知っている。くじから逃れようなどと考えるな。どれほど裕福であろうと、聖なる意志の定めから逃れることはできない」
サイラスは片眉を上げた。
「ええと……分かりました」
名前を刻まれた石板を受け取ると、黄金の聖水が満たされた大理石の容器へと入れた。
それから群衆の中へ戻り、身なりのよい少年たちの輪に加わった。彼らは、七枚目の石板を引き当てたら何をするか、互いに話し合っていた。
サイラスの父、ダリウス自身も、かつて七枚目の石板を引き当てた人物だった。
七枚目の石板こそが、父の成功の理由だと言う者もいた。
しかし、サイラスはそうは思わなかった。
人は時に、何かをあまりにも強く信じるあまり、知らず知らずのうちに、自分自身でその真実を作り出してしまうことがあるのだ。
やがて最後の少年が石板を入れ終え、一人の僧侶が宣言した。
「すべての名前が容器に入りました。それでは、これよりくじ引きを始めます」
僧侶は手に刻まれた黄金に輝く紋章を起動させ、容器の上で手をかざした。そして祈った。
「聖なる意志よ、ひとつの名を選び、浮かび上がらせたまえ」
すると、石板が水面に浮かび上がった。
僧侶はそれを取り上げた。
「デマラスの息子、キリアン。お前が聖なる意志によって最初に選ばれた者だ」
少年は前へ進み、石板を商人ギルドの籠へ入れた。
七枚目までは、ほかの少年たちも皆、同じように商人ギルドを選んでいった。
そして、ついに七枚目の石板が水面へ浮かび上がった。
人々の期待が高まる中、僧侶がその名を読み上げた。
「フレデリックの息子、ヴィクター」
群衆から驚きの声が上がった。
自分たちの名前が呼ばれなかったことに、誰もが息をのんだ。
サイラスは七枚目の石板を望んでいた。そのため、自分の名前が聞こえなかったことに、少なからず落胆した。
彼はいつも、自分が最も重要な人間であるかのように感じていた。そのため、自分が七枚目の石板を引き当てられない可能性など、考えたこともなかったのだ。
彼はため息をつき、わずかな衝撃を落ち着かせた。
そもそも、七枚目の石板にまつわる迷信など信じていない。だから、これくらいで動揺するつもりはなかった。
彼は容器のそばに立ち、次々と読み上げられる名前を熱心に聞いていた。
そのたびに、次こそ自分の名前が呼ばれると確信していた。
しかし、現実は違った。
三百人の名前が読み上げられても、彼の名前は呼ばれなかった。
その頃には、商人ギルドの籠はテーブルから下ろされていた。
残された少年たちは落胆した。
この裕福な町に暮らす者たちは、父親と同じように商人となることで、自分たちの地位を守ろうと望んでいた。しかし、その道はすでに閉ざされてしまった。
少年たちは打ちひしがれた。
一方、サイラスはまだ驚いてはいたものの、探検家ギルドを選べるという確信を失ってはいなかった。
探検家ギルドは一般的に人気がなかったため、最後まで籠が残っているはずだと考えていたのだ。
六百枚目の石板が選ばれた頃には、職人ギルドと聖騎士団の籠も、ほぼ満杯になっていた。
それでも、サイラスの名前はまだ呼ばれていなかった。
彼は心配していなかった。すぐに自分の名前が呼ばれるだろうと考えていた。
やがて正午になった。
九百枚の石板が選ばれても、サイラスはまだ呼ばれていなかった。
聖騎士団と職人ギルドの籠が埋まっていくにつれ、彼は不安を感じ始めた。
そして今、探検家ギルドが最も人気のある選択肢となっていた。
少年たちが次々と石板を手に取り、探検家ギルドの籠へ入れていくのを、サイラスは見つめていた。
籠がいっぱいになっていくにつれ、彼の額には汗がにじみ始めた。
そして千九十八枚目の石板が選ばれたとき、僧侶が告げた。
「探検家の必要人数は満たされました」
サイラスは、僧侶が籠を持ち上げ、テーブルの下へ置くのを呆然と見つめていた。
自分の目と耳が信じられなかった。
彼はその場に立ち尽くした。
くじ引きは続き、これ以降の石板は航海士ギルドの籠へと入れられていった。
群衆の空気は沈んでいた。
まだ選ばれていない少年たちは、自分たちが社会的な地位を維持する機会を失ったと確信していた。すでに、這い回る害虫のような惨めな人生を送る覚悟を、心の中で決めていた。
やがて航海士ギルドの籠も満杯になった。
残されたのは、ただ一つの籠だけだった。
まだ選ばれていない少年たちは、恐怖に包まれていた。
サイラスは黙ったまま、なぜこんなことが起きているのか、理解しようとしていた。
聖なる意志は、自分の野心を嫌っているのだろうか。
父母の望みに従わず、商人になることを拒んだ自分を罰しているのだろうか。
そんな考えが頭をよぎった。
それでも、ほかに選択肢がなくなってからも、彼の名前はなかなか呼ばれなかった。
太陽が正午を過ぎ、ハンターギルドの籠がほぼ満杯になった頃になって、ようやくその時が訪れた。
千三百四十六枚目の石板。
最後の石板まで、あと五枚というところだった。
僧侶は運命の石板を手のひらに載せ、そこに刻まれた文字を読み上げた。
「サイラス、金髪、青い目、左頬にほくろ」
サイラスは沈黙した。
その場に立ち尽くし、動くことさえできなかった。
目の前の状況に向き合うことも、それを認めることも、恐ろしかった。
認めてしまえば、それが現実であると受け入れなければならないからだ。
やがて、彼のことを知っている数人が群衆の中から彼を押し出し、無理やり前へ進ませた。
「あれはダリウスの息子じゃないか?」
「彼がハンターだって?」
「ダリウスの商会を継ぐ、たった一人の跡取りだと聞いていたが」
「こんなことが起きるかもしれないのに、息子を一人しか持たなかったダリウスは、どれほど愚かな男なんだ?」
群衆はひそひそと少年について語り合った。
サイラスは、すっかり混乱した様子で、ゆっくりと前へ進んでいった。
呆然として手に力が入らず、何度も石板をつかみ損ねた。それでも、ようやく手に取ると、籠のところまで歩いていき、それを中へ落とした。
その瞬間、彼の思考も、野心も、望みも、すべてが川を流れ落ちる水のように、指の間から消えていくように感じられた。
彼は前のめりに倒れ、両手と両膝を地面についた。
その顔には、永遠に消えないかのような衝撃の表情が凍りついていた。
テンプル騎士が片手で彼をつかみ、肩の上へ持ち上げると、脇へ運んで背中を地面につけた。
サイラスは空を見上げた。
視界はぼやけ、焦点が合ったかと思えば、またぼやけた。
彼は身じろぎもせず、横たわっていた。
僧侶たちが、
「召命を変えたい者は、列に進み出なさい」
と告げている声さえ、耳に入らなかった。
サイラスは、本当に自分の人生が終わったのだと感じていた。




