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頭脳派達

 頭脳派三人衆による騒がしい言い争いがひと段落した頃、一つの咳払いが部屋に響いた。


「……すまない。俺の自己紹介がまだだったな。俺はオズキ。スキルは『ダイ・ブラック』。A級だ」


 続いて眼鏡の青年が静かに本を閉じる。


「僕はダマキ。スキルは『アブソリュートタイム』。無論、A級です」


 最後に、椅子へ横たわる少女がひらひらと手を振った。


「ボクはアヤメ。スキルは『ラメ・データ』。これもA級だよ〜」


 全員がA級スキルの保持者。

 やはり勇者パーティーの推薦を受けるほどの者ともなれば、S級に次ぐA級スキルの持ち主ばかりなのだろう。

 すると、アヤメが興味津々といった様子で身を乗り出した。


「名前は聞いたけど、スキルはまだだったよね? 聞いてもいいかな〜?」


 ……やっぱり、その話になるか。

 この流れでは誤魔化すこともできない。


「俺のスキルは……『全能無敵絶対確殺』。Z級のスキルだ」


 言い終えた瞬間、部屋の空気が止まる。

 どうせまた笑われる。

 そう身構えながら三人の反応を窺う。

 だが――


「全能無敵絶対確殺……!?」


「Z級……!?」


「ま、まさか……」


 三人は嘲笑するどころか、揃って顔色を変えていた。そして次の瞬間。


「「「そんなスキル、僕(俺・ボク)のデータにない!!」」」


「……え?」


 予想外な反応に、思わず間の抜けた声が漏れる。


「ない……!どこにもない!データにない!」


 ダマキは慌ててノートを何冊もめくり始める。


「ば、馬鹿な……!俺のデータが……!」


 オズキも懐から大量の資料を取り出し、一枚一枚必死に目を走らせる。


「ボクのデータにもないよ〜!」


 アヤメは慌てた様子で手の甲を確認すると、袖をまくって腕を眺める。さらにズボンの裾をめくって太ももへ視線を走らせ、最後にはシャツをめくってお腹まで確認し始めた。

 露わになった太ももやお腹にまで小さな文字でメモが書き込まれていた。


「……何をそんなに慌ててるんだ?」


 三人の慌てぶりに、俺は首を傾げる。


「別にそのデータとやらに俺のスキルがなくても、D級以下の外れスキルだ。そこまで警戒する必要なんてないだろ?」


 すると、アヤメは先ほどまでの慌てた様子が嘘のように真剣な表情になった。


「……いいかい、ボクたちはあらゆるデータを集め、起こり得る事象を予測し、自分が成功する確率を導き出す――分析家だ」


 ゆっくりと言葉を続ける。


「そんな分析家にとって一番の天敵は、一切記録のない"未知"だ。未知の存在は、大きな不確定要素になる。もしかしたら、その一つが今まで積み上げてきたすべての計算をひっくり返すかもしれない」


 アヤメはまっすぐ俺を見つめた。


「それがどれだけ弱そうに見えても関係ない。ボクはその全能無敵絶対確殺なんてスキルも、そもそもZ級なんてスキルの階級も聞いたことがない。――だから、君の事を未知のデータを持つライバルとして最大限警戒させてもらうよ」


「同感だ」


「異論ありません」


 オズキとダマキも静かに頷いた。

 Z級だと打ち明ければ馬鹿にされると思っていたのに、まさかここまで警戒されるとは。

 分析家というのは、思ったよりも慎重な生き物らしい。

 ……そんなに警戒されても、実際に何もできやしないんだけどな。

 そんなことを考えていると、不意に扉がガチャリと開いた。


「お待たせしました」


 そこには、先ほど俺たちを案内してくれた王国騎士が立っていた。


「これより、勇者パーティー正式メンバー選考試験を開始します。会場までご案内しますので、私について来てください」


 騎士はそう告げると、くるりと背を向けて歩き出す。

 俺たちは顔を見合わせることもなく、その背中を静かに追いかけた。

 ——いよいよ、試験が始まる。

 自然と体に力が入り、緊張で喉が鳴った。

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