合格者
「……」
一番の功績者として称えられるジェン。その姿を、イグザムは呆然と見つめていた。
「ゴート・ジェン」
静かに、その名を呼ぶ。
「イグザムさん……」
「貴方は……なぜ動けたのですか。なぜ、その最弱のスキルしか持たない貴方が、あの場で迷わず前へ出られたのですか」
ジェンは少しだけ目を伏せた。
「……俺も怖かったです。本当は逃げたかった。でも、目の前でアヤメがゴブリンに襲われそうになってるのを見たら……体が勝手に動いてました」
「……簡単に言ってくれますね。その恐怖に抗って一歩を踏み出すことが、どれほど難しいことか……」
イグザムは自嘲するように笑う。
そして、小さく息を吐いた。
「……一番スキルの評価に囚われていたのは、この私だったようですね」
その瞬間――。
ジェンの右手が淡く輝き始めた。
「……え?」
その手の甲には、不思議な紋章が刻まれていた。
「――おめでとうございます。その紋章が現れたということは、私のスキルは試験の合格者として貴方を選んだようです」
「えっ……合格!? ってことは俺が勇者パーティーに!?」
驚くジェンに、アヤメが微笑んだ。
「当たり前だよ〜あんなドラゴンを倒したんだから」
「悔しいが、その結果に不満はない」
「同感です」
二人も続けて頷く。
「そうか……えっ、でも俺が!? Z級スキルの俺が!?」
「そのZ級スキルが大活躍したんだからいいの! ね、みんな?」
「そうですとも! 全能無敵絶対確殺、万歳です!」
「全能無敵絶対確殺、最高!」
妙にテンションの高い二人を眺めながら、イグザムは先ほどの出来事について改めて考えていた。
(しかし、何故あのようなことが……。あれほど制御不能な竜が現れるなど前代未聞だ……。いや、待て。私のスキル《試験官》は、試験を与える対象に相応しい難易度の試験を課す能力。ということは、あの竜と戦うのが相応しい実力の者が、あの中にいたということか……!? その者とは、まさか――)
イグザムがジェンへ目を向ける。
すると何故か、オズキとダマキに胴上げされていた。
「「ばんざーい!ばんざーい!」」
「うわあっ!っていうか二人とも、そんなキャラだったか!?」
宙に放り上げられながら、ジェンは様子の変わった二人へ問いかける。
「なんだか僕はもう吹っ切れました。これからは――データを捨てます」
ダマキは眼鏡を外し、謎のポーズを決める。
「奇遇だな。俺もこれからはデータを捨てる。くだらんハッタリも、もうやめだ」
オズキも腕を組み、大きく頷いた。
――そして次の瞬間。
「ぐべっ!」
ジェンは盛大に地面へ激突する。
「「あっ」」
「痛てて……。データは捨てても、俺は捨てないでくれよ……」
(……いや、流石に考えすぎか)
情けない姿のジェンを見て、イグザムは考えを改めた。
「ジェンさん。この後、貴方には勇者パーティーの皆さんと顔合わせをしていただきます。その後は王の御前にて壮行式が執り行われます」
「王様の前……。そうか、本当に俺は勇者パーティーに選ばれたんだな……」
「では参りましょう。御三方も帰り道をご案内しますので、ついて来てください」
こうして五人は、再び来た道を引き返し始めた。
その途中、アヤメがそっとジェンの隣へ歩み寄る。
「……この後、少しだけ二人で話せる?」
誰にも聞こえないよう、小さく耳打ちした。




