第16話 女の子の告白
奥田さんが目を覚ましたのは、保健室に運んで五分が経った頃だった。
とろん、とした瞳が僕を見つめる。
「メガネ……」
「あ、ごめん。これ」
枕元に置いていたメガネを渡す。
メガネをかけた奥田さんは、いつもと違ってどこかしおらしく見えた。
でも、無事に目を覚ましてくれたことに変わりはない。
「よかった……死んだかと思った」
「蒼井くん、大袈裟だよ」
「泡吹いてたら誰だって思うよ!?」
くすくすと小さく肩を揺らす奥田さん。
だが、その表情は徐々に曇っていく。
「私ね、まだ恋愛とかよく分からないんだ」
思わず息が止まる。
それは、意外な告白だった。
「男子といてもドキドキしないし、女子の恋バナにも興味がない。
それより……もっと他の、知識とか観察とか、そういう分野が好きなんだ」
「……そう、なんだ」
この世は多様性で満ちている。
きっと、恋をしない女子だっているのだろう。
頭では受け入れた。
でも、心がついていかない。
僕は、奥田さんに異性として意識してもらえないのか?
「変だよね」
「……変じゃない」
「変だよ。……ごめん、こんな女で。
こんな身体、してるのに」
奥田さんが胸の辺りを掴む。
グレープフルーツみたいなおっぱい。
それが、彼女にとってひどく重荷に見えた。
「しばらく一人にしてもらってもいいかな」
「……うん」
僕は何も言えないまま……気持ちの整理もできないまま、保健室を出た。
「蒼井」
そこでばったり、田所と鉢合わせた。
彼を見た僕は思わず、口を震わせる。
「なに、泣きそうな顔してるんだよ」
田所は、苦痛に耐えるように顔を歪めていた。
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