↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣と思ったら魔剣だった  作者: 明太パスタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/15

平和な国の崩壊と、魔王誕生

その日、バカッニア大国の「平和」は音を立てて崩れ去った。


かつて弱小な魔物しか現れず、人々が農具を手に穏やかに暮らしていたその国の上空に、巨大な紫黒の亀裂が走ったのは正午過ぎのことだった。


「ひ、避難しろーッ! 魔王の軍勢だ!!」


王都の街街に、悲痛な叫びと警鐘の音が鳴り響く。

天を覆う暗雲の中心に立ち集うのは、古代の眠りから呼び覚まされた数万の魔物たち。そして、その頂点に君臨するのは――漆黒の翼を広げ、かつて『聖剣』と呼ばれた魔剣を右腕と一体化させた男、新魔王カインだった。


「……脆いな」


魔王カインは、眼下に広がる美しい王都を見下ろし、冷ややかに呟いた。

かつて「ただの村人」としてこの街を訪れ、人々の温かさに胸を痛めていた少年の面影は、そこには一切存在しない。瞳には生気がなく、冷酷な虚無だけが宿っていた。


魔王カインが左手を緩やかにかざすと、王都の広場の中央、かつてカインが立ち寄った平和な石造りの街並みが、凄まじい地鳴りとともに崩壊を始めた。

地割れから溢れ出す紫黒の魔力。建造物は次々と呑み込まれ、わずか数分のうちに、禍々しい尖塔をいくつも備えた巨大な『魔王城』が突如として現れ出たのだ。


「うそ……だろ……」


王都の防衛線を構築しようとしていた兵士たちは、武器を握る手すら震わせ、その場に崩れ落ちた。

圧倒的な魔力の奔流。かつて自分たちが「世界を救う勇者様」と信じて称えていた青年が、いまや世界を破滅へと追いやる魔王として君臨しているのだ。


「我を讃えよ。我が前にひれ伏せ」


魔王カインの声が、大国中に轟き渡る。

それは恐怖の宣告であり、完璧な絶望の始まりだった。


* * *

崩れかけた王都の瓦礫の陰で、ボロボロになった身体を叩き起こす者がいた。

剣士のライルだ。


「ライル……ダメです、もう身体が……!」

涙を拭いながらミリアが必死に制止するが、ライルは血を吐きながらも、大剣を杖代わりにして立ち上がった。


「カイン様は……あんな奴じゃない……」


ライルは拳を強く握り締め、胸の奥から絞り出すように呟いた。

たしかに一撃で山を吹き飛ばし、敵を惨殺する恐ろしい姿も見た。しかし、その裏で「自分はただの村人だ」と困り果て、人々の感謝に罪悪感を抱き、夜一人で悩んでいたカインの優しさを、ライルたちは誰よりも知っていたのだ。


「あの魔剣が……カイン様を苦しめているんだ。カイン様は今も、あの暗闇の中で助けを求めている……!」


「ライル……」

魔導士のセイルが、涙に濡れた瞳でライルを見つめる。


「僕たちが止めなきゃダメだ。僕たちの手で……カイン様をあの呪いから解放するんだ!」


立ち上がる3人の瞳に、再び強い意志の光が宿る。

たとえ相手が世界を滅ぼす魔王になろうとも、自分たちを救ってくれた「大切な仲間」を取り戻すために。


天空にそびえ立つ魔王城を見上げながら、元・勇者パーティの決死の討伐劇が、いま始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。