ブレザーちゃんとの秘密
「あの……そろそろ起きた方が」
「ふぇっ?」
揺り起こしてきたブレザーちゃんが下着姿だったので、驚愕する。
え、え、え、やらかした?
辺りを見回すと、私の家じゃなくて教室だったからブレザーちゃんと一夜を共にした訳ではないと察して安堵した。
次、体育だから下着姿だったんだ
詩織さんは私を甘やかせるつもりはないらしく先に行ってるようで姿が見えない
私も早く着替えないとな
女子高だからみんな教室で着替えてるけど、私は恥ずかしいからわざわざ更衣室にまで行って着替えてるのだ
一回、頑張って教室で着替えようとしたんだけど、なんかみんなの視線を感じて結局、着替えれなかったんだよね
立ちあがろうとしたらフラついてブレザーちゃんにもたれかかってしまう
「だ、大丈夫ですか!?」
「……大丈夫だよ」
そう強がったが目眩は治らない
ゲームのメインストーリーはクリアしたんだけど、エンドコンテンツが楽しくて夜更かしが続いたからかな?
この状態で体育はキツい気がするなぁ
「やっぱ休もうかな」
「そうした方が良いです。保健室まで付き添いますね」
「そこまで悪くないから一人で行けるよ」
「で、でも……」
勉強ならまだしもゲームなんかで体調悪くなって心配させてるのが申し訳なくなって断ったのだが、優しいブレザーちゃんは付き添ってくれようとしている。
「大丈夫だって」
「途中で倒れたりしたら危ないんで」
「それは無いって。それに……」
「あ、迷惑でしたよね。すみません」
「そうじゃなくって、私が言いたいのは……」
「い、言いたいのは?」
「その格好で来るのはまずいよ」
「ひゃい!?」
下着姿のブレザーちゃんを指差すと、彼女は真っ赤になって脱いでいたブラウスで身体を隠した。
今日からブラウスちゃんって呼ぼうかな
保健室で保険医の先生に熱を測ってもらってからベッドに横になった。
熱は無かったんだけど、先生が「少し休んでいきなさい」と言ってくれたので、そのお言葉に甘えた形になる。
熱は無いってことはサボりなんだろうか?
なんか二年になってから不真面目になった気がするなぁ……
この土日でゲームを終わらせてそれからは生活リズムを戻して真面目に生きよう
そんなことを考えながら目を閉じた。
暫く微睡んでいたら気配を感じたので目を開く
「ひっ!?」
目の前にブレザーちゃんの顔があったから私も驚いた。
体操服姿だから授業を抜け出して来たらしい
「し、心配になって様子見に来ただけです。起こしちゃってすみません。も、もう行きますね。良かったら私のノート貸すので次の授業も休んでて下さいね」
珍しく早口で捲し立てたブレザーちゃんに違和感を覚えたので起き上がって去ろうとしていた彼女の腕を取った。
「今、何しようとしてた?」
ビクッとして振り返ったブレザーちゃんがいつも以上にしどろもどろになりながら答える。
「お、お、オデコを当てて熱を測ろうとしてますた」
明らかに嘘をついたので疑念が確信に変わる。
最初は偶然かと思ったがそれは違った。
ブレザーちゃんのそういうとこ知りたくなかったな
心配してくれたのが打算的に思えてくるよ
「オデコが当たる角度じゃなかったよね?そもそも熱を測るなら手を当てれば済むんじゃないの?」
「すみません!すみません!」
「謝れなんて言ってないよ。何しようとしてたか聞いてるだけ」
「……もうしませんから」
「ちゃんと答えて」
「嫌わないで下さい、私、、奈凪さんに嫌われたら……もう、、」
ついに泣いてしまったが、それでも私は腕を離さない
「琴音」
ブレザーちゃんの名を呼ぶと、彼女は観念してぐすりと鼻を鳴らした後に白状した。
「……キスしようとしてました」
取っていた腕を離し、琴音ちゃんに冷たく言い放つ
「お仕置きだね」
すっかり怯えきっている琴音ちゃんに向けて手招きしたが、反応しないので、ベッドをトントンと叩いて催促した。
「お仕置きするからこっち来て横になって」
「は、はい」
恐る恐るベッドに上がってきた琴音ちゃんを抱きしめると彼女は「ひっ!?」っといつもの悲鳴を漏らす。
「嫌なの?」
「とんでもないです!」
「じゃあなんでそんな声が出るの?」
「だ、だってこんなのお仕置きにならないじゃないですか。これじゃまるで……」
「ご褒美?」
「そ、そうです」
「ちゃんとお仕置きだから安心して」
更にきつく抱きしめて琴音ちゃんの胸に顔を埋めると、彼女は身を捩って逃れようとした。
「逃がさないよ」
「さ、さっき体育の授業で動いたんで……」
「そんなの気にしないからじっとしてて」
「はい……」
琴音ちゃんが大人しくなったので、彼女の心臓の音が速いリズムで聴こえてきて、それと同時に体温もじんわりと伝わってくる。
「心臓の音がうるさいよ」
「す、すみません」
恥ずかしさを紛らわす為か、琴音ちゃんは私の服をぎゅっと握った。
「どうしてキスしようと思ったの?」
「すみません!もうしませんから!」
「すみません禁止って前に言ったよね?」
「は、はい」
「どうしてキスしようとしたか正直に答えて」
「……好きだからです」
「キスしたら『禁忌』になるのは知ってるよね?二度と私のこと抱けなくなるよ?」
「……それでもキスしたいと思いました」
琴音ちゃんは握っている私の服を引っ張りながら言葉を続ける。
「奈凪さんの周りには詩織さんみたいな綺麗な人が沢山居て、私なんかじゃ絶対に届かないから、だったらここでキスしてこの気持ちを終わらせようと思いました」
「キスしたら余計に好きにならない?本当に終わらせられる?」
「わ、分かりません」
「じゃあ試してみる?」
「えっ?」
胸に埋めていた顔を離して琴音ちゃんの長い前髪を手ですくうと、彼女の丸くなった瞳がよく見えた。
「届かないとか言ってるけど、琴音ちゃんも私の周りに居る綺麗な人の一人だよ」
「っ〜〜!?」
吐息が重なる距離まで唇を寄せると、琴音ちゃんは注射される子供みたいに目をきつく閉じる。
「ひっ!?」
反射的にデコピンされたオデコを抑えた琴音ちゃんに告げる。
「ばーか、なに期待してんの?」
「ううっ……」
「お仕置きって言ったじゃん。お仕置きとして弄んだだけ」
「こ、こんなので許してくれるんですか?」
「こんなの?琴音ちゃんの気持ちを知りながら弄んで反応を楽しんだのだから充分酷いお仕置きだと思うけどね。こういうことする女なんだから考え直した方が良いと思うよ?」
「……奈凪さんになら弄ばれても構いません」
「なんか怖い」
「す、すみません」
「冗談だって」
軽く笑ってからまだくっついていた琴音ちゃんを押して離し、起き上がって伸びをする。
「寝たらすっきりしたから次の授業は出るよ」
「大丈夫ですか?」
「うん。もう大丈夫。あ、さっきのことは内緒にするから安心してね」
「二人だけの秘密ってことですか?」
「……なんか積極的になってない?そこはありがとうだと思うけど」
「すみません!ありがとうございます!」
ベッドから降りてカーテンを開けると、そこには以外な人物が居た。
「な、なぜそこから一緒に出てきた!?」
声の主のポニテは目を丸くしながら私達を眺めている。
「別に良いじゃん。なんでここに居んの?」
「転んで擦りむいたから治療をしに来ただけだ」
「どんくさ」
「鈍臭くはない!それよりなぜ小羽と一緒にベッドから出てきたのかを聞いている!小羽になにかいかがわしいことをしたワケではあるまいな?」
小羽というのは琴音ちゃんの苗字で、その小羽琴音は私の横で固まっている。
「どちらかと言うといかがわしいことされたのは私なんですけど」
「ひっ!?」
「小羽がそんなことするハズがない!さては、また身体を使ってウチの部員を横取りするつもりだな!」
「そんな前科ないわ!」
ポニテは私のこと性の権化か何かだと思ってらっしゃるの?




