百合ハーレム部だった
倒れている麗奈先輩を綾坂と二人がかりで起こしてから、紅茶を飲ませて蘇生させていると、ここでようやくタイマーが鳴った。
瞬殺じゃん
かなり手加減されてたし、完敗と言っても良い
「よく分かんないけど、なんで今更、愛花先輩に照れてんノー?」
「生き返ったばっかなんだから喋らせない方が……」
「いいわ。もう大丈夫よ」
麗奈先輩は紅茶を一口飲んでから呟く
「愛花が言った通り、私の恋愛対象は女性なの」
いやいやいや、なんか衝撃的なことを言った雰囲気出してますけど、レズ部の部長が今更何言ってんのって感じなんですけど
「そんなん知ってるし」
つっこもうかと思ったが、綾坂が先に言ってくれたので手間が省けた。
「なんで愛花先輩に抱きつかれただけでこんなことになったのか聞いてんノー」
「この部活のメンバーは全員、私が選んだのよ」
「それも知ってますけど」
「つまり全員が私のタイプってことよ」
「この人、何言ってんの?」
「分かんない」
綾坂に尋ねられたが、私にも分からない
この部活はボランティア部じゃなくて麗奈ちゃんのハーレム部だったってこと?
……ちょっとキモいな
大敗北を目の当たりにして、麗奈先輩への尊敬が薄れてるのを感じる。
数時間前は、お姉ちゃんと錯覚するくらいだったのに
「タイプだからああなったってことですカナ?」
「さっき私と抱き合った時は、別に普通だったけどね」
「はぁ!?抱き合った?ナギっちボランティア部、全員に手ぇ出してない?」
「そ、そういうのじゃない!」
更に追求される前に麗奈先輩に問いかけることにした。
今は私じゃなくて麗奈先輩のターンでしょ
「タイプなのは愛花先輩だけでは?私やお嬢様と抱き合ってもそんな風にならなかったですし」
「前にボランティア部は顔採用って言ったでしょ」
「言ってましたね」
「抱き合うのは良いけど、好みの顔と向き合うのは耐えられないの」
「つまり、麗奈先輩が好きな顔を揃えたから部員と見つめ合うと照れちゃうってことですカナ?」
確かめる為に綾坂が麗奈先輩に抱きついて顔を近づけると、先輩はまた赤くなってプイッと顔を背けた。
言っていることは本当だったらしい
そういえばかなり前だけど、麗奈先輩をお姉さまだと勘違いしてソファの上で見つめ合った時に赤くなってたような気がする。
「ホントだ!可愛い!」
「死に上がりなんだからやめなよ」
「ナギっちもやってみなヨー」
「えっ?」
気の毒だけど、ちょっとやってみたい気もするな……
少しだけなら良いかな
反対側に抱きついて顔を軽く寄せてみると、麗奈先輩はすぐに赤くなって顔を背けたが、その方向には綾坂の顔があったので、また背けた拍子に私と近距離で見つめ合ってしまう。
そんなループが何度か繰り返された後に麗奈先輩はついに俯いてしまったが、綾坂は逃すまいと覗きこもうとする。
「もうやめてあげようよ。ホントに死んじゃうよ」
「……私は死なない。例え地獄に堕ちたとしても何度だって這い上がって戻ってくるわ」
「もうそのキャラ無理ですよ」
そうつっこんでから尚も覗きこもうとしている綾坂の頭を抑えて止めた。
「離してよナギっち。髪触らないで。これ特訓だから」
「特訓?」
「そうだよ。なんだかよく分からないけど、麗奈先輩は愛花先輩に勝たなきゃいけないんだよね?だったら弱点克服しないとだよ」
確かに克服はしないといけないんだけど、こんな荒治療で大丈夫なのかな?
なんか綾坂、楽しそうだし特訓と称して自己肯定感高めてない?
「そうだ!ゴールデンウィークに麗奈先輩の強化特訓しよ」
「強化特訓って何すんの?」
「不眠不休で見つめ合うのだよ」
「こっちも死ぬって」
私の連休の予定が思わぬ形で埋まってしまった。




