ボランティア部の洗礼
「どういうつもりなのかしら?」
みうが離れてくれなかったので、仕方なくボランティア部の部室に連れて来たのだが、案の定、麗奈先輩に詰められる。
「懐かれちゃったから仕方なく……」
「ウチではあんな変態飼えないわよ。捨てて来なさい」
麗奈先輩の視線の先には愛花先輩に抱きついて猛烈に匂いを嗅いでいるみうの姿があった。
「……甘い匂いがしますね。甘さの奥底に危険な匂いが潜んでいます」
「……麗奈」
「なによ?」
「喰べていい?」
「ダメに決まってるじゃない」
慌てて愛花先輩からみうを引き離す。
この人はわるいおねえさんだから近づいちゃダメだよー
「……匂いが良過ぎてあんまり好きじゃないですね」
私の拘束から逃れたみうが麗奈先輩を嗅いだが、香水の香りはお気に召さなかったようで自分から離れようとしたが、麗奈先輩に肩を掴まれて引き戻される。
「ちょっと待った」
「なんですか?」
みうの顔をまじまじと見る麗奈先輩。
……まさか
「顔が良いわね」
紅茶を飲んで心を落ち着かせようとしていた綾坂が「ブッーー!?」っと吹き出した。
悪しき伝統を引き継がないで欲しい
「貴女、ボランティア部に入る気はない?」
「奈凪センパイが居るかと思ってテニス部に入っちゃいましたよ」
「掛け持ちでも構わないわ。今なら奈凪さんの匂い嗅ぎ放題よ」
「たまに他の人の匂いも嗅いで良いですか?」
「いいわよ。この部活は部員だけじゃなくて他の生徒の匂いも嗅げるから貴女に合ってると思うの」
「じゃあ入ります」
麗奈先輩が引き出しから入部届を出そうとしたが、反対意見が飛び出した。
勿論、綾坂からだ
「顔採用はんたーい!」
「ウチに顔以外の採用基準はないわ」
「だからって限度がありますヨー!『お嬢様』の匂いをクンクンしてたら誰も来なくなりますって!」
「それは自然にやるように矯正させなさい」
「そんなん無理だし!」
「出来るわよね?教育係?」
今度は私が紅茶を吹き出しそうになった。
え、私に言ってる?
「奈凪さんが連れてきた可愛い後輩なんだから貴女が教育係を勤めるのは当たり前よね?」
「さ、採用決めたのは麗奈先輩じゃないですか」
「ねぇねぇ奈凪ちゃん?」
「何ですか愛花先輩?」
「私がやろっか?」
「……だったら私がやりますよ」
愛花先輩に任せたらみうが喰べられちゃうよ!
しょうがないなぁ……
反対派が抑え込まれて教育係が決まったところで麗奈先輩が改めて入部届を机の上に置く
「ここにサインと判をしてくれるかしら?」
「ハンコなんてテニス部の入部届にはいらなかったですよ?」
「ウチではいるのよ。無いならこれを使いなさい」
麗奈先輩が胸ポケットから口紅を取り出したので、みうにバレないようにニヤニヤする。
アレをやるんだ
私もやられたボランティア部の洗礼を……
「これどうするんですかぁ?」
「キスするのよ」
「なるほどです」
みうは口紅の先端の匂いを軽く嗅いでからゆっくりと唇に塗り、入部届にキスをした。
その様子を見た私達は声をあげて笑う
「……騙したんですか?」
「ごめんごめん」
膨れたみうの機嫌を取ろうとして紅茶を淹れてあげたのだが、彼女は更に渋い顔をした。
「……これおしっこ入ってません?」
「入ってるワケないでしょ!」
麗奈先輩が一蹴する
どこのアバッキオだよ
そんなマフィアみたいな洗礼はボランティア部には無いのだよ




