リストバンドの因果
翌日の放課後、廊下に出ると、隣のクラスの綾坂も出てきたところだったので、二人で一緒に部活へ向かうことにする。
「生徒会長、ナギっちのお姉さんが再選したらしいね」
「もう決まったの?」
「知らなかったん?なんか他の候補者全員が直前で立候補を取り消したらしいヨー」
「独裁国家かよ」
そんなことを喋りながら廊下を歩いていると、前から一人の生徒が「センパーイ!」と叫びながら走って来た。
去年まで三年生が付けていた緑リボンを付けているから一年生らしい
私と綾坂に後輩の知り合いなんて居ないから、きっと私達の背後に居る『先輩』に向けて言っているのだろう
廊下は走るなとちゃんと指導してもらいたいもんですな
「どぅっふ!?」
その一年生に急に抱きつかれたので変な声が出た。
人違いですよ!
「奈凪センパーイ、こんなところに居たんですね。テニス部に行っても居なかったんで探しましたよ」
「ええっ!?」
「……センパイの匂い、落ち着きます。やっぱり直で嗅ぐと格別ですね」
どうやら人違いではないらしいけど、私の胸に顔を埋めているので誰だか分からない
こんな栗色の髪した知り合い居たっけかな?
「きっも、、コイツ、ナギっちの匂いめちゃくちゃ嗅いでんジャン」
綾坂に引き剥がされた一年生は、そのままの勢いで綾坂に抱きつく
「……こっちの人も中々良い匂いがしますね」
「きもきもきっも!離れろや!!」
綾坂に押された一年生はまた私に抱きついた。
何このループ?
「……やっぱり奈凪センパイの匂いが一番好きです」
「コイツなんなん?ナギっちの知り合い?」
「分かんない」
「え、忘れました?」
驚いた一年生が私の胸から顔を上げたので目が合った。
「あっ……テニス部の」
「そうです!奈凪センパイの後輩の朝霧みうっす!」
みうは、中学の時のテニス部で私を唯一慕ってくれていた後輩だ
あの時は黒髪だったし、パーマもかかってなかったので誰だか分からなかった。
高校デビューってやつ?
「あ、コイツ、ナギっちの物欲しがるキモい奴じゃん」
「コレクションしてるだけですよー」
あの時から変な子だとは思ってたけど、なんか磨きがかかってる気がするなぁ
色々欲しがるけど、いきなり抱きついてくるような子じゃなかったよね?
「てか、それウチの制服じゃなくない?」
綾坂の一言で、みうは待ってましたとばかりに私から離れて着ているブレザーを広げて見せた。
「これもコレクションの一つで奈凪センパイがくれたモノなんです」
「え、マジ?」
「うん。卒業式の日にあげた」
「あげんなし」
「このリストバンドも奈凪センパイが引退した時にくれたモノで、貰ったその日から方時も外してないんです。毎日、奈凪センパイの良い匂いを嗅げて幸せです」
「それはもうお前の匂いだよ!」
綾坂のつっこみを無視して、みうは引力に引かれるようにして私に抱きつく
もしかしてこの癖が付いたのって私のせい?
「じゃあ匂い補充して下さい。今日はこのリストバンド付けて部活して欲しいです」
「なんか勘違いしてない?」
「えー何をですかぁ?」
「私、テニス部じゃないよ」
「えっ!?」
みうが驚いて離れた隙に綾坂に手を引っ張られてボランティア部の部室に向かったが、あとちょっとで捕まってしまった。
「なんでテニス部じゃないんですか!奈凪センパイの汗の匂い嗅ぎたいです!」
「……マジで気持ち悪い」
本気で引いている様子で綾坂が呟く
マジな時は「きっも」じゃないんだ
10年以上付き合いあるけど初めて知ったよ……




