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傾国の美女

その後も告白ラッシュは続いた。

告白の呼び出しに答えながら、部活に顔を出し、合間を見計らって抱かれたカウントを稼ぐ

抱かれる度に告白が増えていった。


結局、100人に抱かれる課題を達成したのは予定よりも大幅に遅れて冬休み直前になった。


「課題達成しました」

「あら、そう」


部室で麗奈先輩に報告したら、彼女はあまり感心がなさそうに紅茶を飲んだ


「確認とかいらないんですか?」

「そんなの必要ないわ。私が何故この課題を出したか理解してもらえればそれで充分。それで?分かったかしら?」

「……答えたくないです」

「100人追加」


機敏な動きで土下座する

いつかの練習の成果が出た。


「勘弁しち下さぁい〜!惚れられるんですぅ!告白されるんですぅ!もう断るのいやぁぁっ!!」


頭を下げていてもボランティア部全員が冷めた目をしているのが分かる。


「人って告白され過ぎるとこうなるんだね!」

「麗奈先輩、もうナギっちを許してあげて下さいよ」

「まだよ。奈凪さん。顔を上げて自分が何故告白されるのか言ってみなさい」


促されたので、顔を上げて涙でくしゃくしゃになった顔を麗奈先輩に向ける。


「な、なんかよく分かんないんですけど、たぶん女の子にモテるオーラとかが出てるんだと思います」

「100人追加」

「いやぁ〜!許ちてぇぇっ!下駄箱を開けるのが怖いんですぅぅっ!!」


泣きながら麗奈先輩の足に縋り付く

とても告白されまくってる女には見えない


「もう一度聞くわ。最後のチャンスよ。貴女は何故告白されるの?」

「……んだからです」

「はっきり言いなさい」


楽しむように私の顎を上げてきたので、目を閉じてはっきり答えた。




「私が美人だからです!!」




いつもの勘違いであってくれと願ったが、麗奈先輩はもう片方の手で私を優しく撫でた。


「よく頑張ったわね」


認めたくないよー

自分のことを美人だと認識してるイタい女になりたくない!


「貴女はアイドルグループのセンターでも裸足で逃げだすような美貌を持っているの。時代が違えば国を崩していたような傾国の美女なのよ」

「そ、そこまでは!」

「まだ抗う気?普通の美人が抱きしめただけで性別関係なく何人も惚れさせることが出来ると思う?」

「『お嬢様』には惚れられてませんよ!やっぱり何かの間違いなんじゃ……」


詩織さんには好かれてると思うけど、その一人だけだ

傾国のなんちゃらとまではいかないと思う


「『お嬢様』との間には『禁忌』があるじゃない。みんな貴女をまた抱きたいから抜け駆けしないでルールを守っているのよ」

「うっ!」

「納得出来ないなら今から私が100人に抱かれてくるわ。私が一人二人にしか告白されなかったら納得してくれるかしら?」

「……そこまでしなくていいです。納得しました」

「良い子ね」


また頭を撫でられる

褒められてこんなに嬉しくないの初めてだよ


「最後にもう一度確認するわ。奈凪さんのような美少女に甘い言葉をかけられたらどうなるの?」

「……惚れてしまいます」

「そうね。だから星七先輩に言ったような甘い言葉はむやみやたらに吐かないこと。これは奈凪さんの学校生活だけじゃなくて人生全体について忠告しているのだからよく覚えておきなさい」


はっとして土下座したまま辺りを見回したが星七先輩は居なかった。

元はと言えば、私が星七先輩を口説いたからこうなった。

課題を達成したから、先輩を抱いて『お姉さま』か確かめる許可が下りたと思うんだけど肝心な日にいないな


そういえば最近全然見てない

元々、幽霊部員だけど流石にサボり過ぎだ


「あの……星七先輩を抱いても良いですか?」

「ええ、許可するわ。ただし、よく謝ってから抱くのよ」

「はい、それで次いつ来るとか分かってたりします?」

「もう来ないわ」

「えっ?」

「引退したからもう来ないわ」

「えええーーー!?」 


はよ言えー!

じゃあ今までの苦労はなんだったんだよ!

自覚させてくれたのは分かるけど、これじゃ割に合わない


「連絡したら来てくれるって言ってたよ」


愛花先輩の言葉で少し落ち着く

卒業したわけじゃないんだから、まだ会えるチャンスはある


「三年生は三学期から自由登校になるから早めに抱いておくことね」


あと数日で冬休みだからほとんどチャンスないじゃん!

もっと簡単に私の容姿を気付かせる方法なかったんかな?

……ないからこうなったのか


「ところで、奈凪さんはクリスマスの予定は空いてるかしら?」

「……麗奈先輩、何言ってんの?」


綾坂が麗奈先輩に冷たい視線を送った。

……これって麗奈先輩も私に惚れてるってこと?


「そういう意味じゃないわ。奈凪さんが特定の誰かとイヴを過ごしたら絶対に勘違いされて大変なことになるからボランティア部で過ごすのが一番だと言っているの」


それを聞いた瞬間、綾坂の顔がパッと輝く


「クリスマス会!?プレゼント交換はありますカナー!?」

「300円まで」

「少な!小学校の遠足のおやつかよ!」


綾坂が粘り強く交渉して、プレゼントは2000円までになった。

私もワクワクしてきたけど一つ懸念がある。


詩織さんのことだ


クリスマスを一緒に過ごせないとなると、また身体の一部を差し出すことになるかもしれない

……それは出来るだけ避けたい


おへそをあげた後に詩織さんが「次はどこでしょう?」と言いながら私のスカートの奥を見てきたことをはっきり覚えている。


これ以上身体を差し出すわけにはいかない

愛花先輩にほっぺを触られそうになった時の気持ちを認めたくない


「夏のお礼に詩織さんも呼ぼうと思うのだけど、どうかしら?」

「へっ?」


詩織さんのことを考えていたから思考を読まれたみたいで面食らう

やめときましょうと言おうとしたが、思い直した

詩織さんをボラ部のクリスマス会に呼べば一応一緒に過ごしたことになるから身体の一部を差し出すことは回避出来る。


「いいと思いますよ」


詩織さんと仲があまりよくなさそうな綾坂も別荘のお礼はしとかなきゃだね」と言って同調した。

お礼より自己保身を図っている自分が情けなくなる。


「それなら会場は奈凪さんの家になるわね」

「な、なんでそうなるんですか!?」

「貴女の家が一番詩織さんが喜ぶからよ」

「そんなぁ!」


クリスマス会場は私の家になってしまった。

星七先輩も呼ぶって言ってたから、六人が来ることになるな

親に怒られないと良いけど……




帰り道、隣を歩く綾坂が心配して声をかけてくれた。


「大丈夫?」

「大丈夫じゃない、飾り付けとかした方が良いのかな?ツリーなんて持ってないよ」

「そっちじゃなくて人間関係の方」


ああ、そっちか

そっちに比べればクリスマスの準備なんて羽根のように軽いもんだ


明日も告白されるんだろうか?

課題が終わったからといって告白が終わるわけじゃない


みんなの悲しそうな顔は脳裏に焼きついている

私は人を傷つけ続けている


「人間関係はなんとか頑張るよ」

「結局、何人に告られたの?」

「そんなの数えてない」

「ウチのクラスだと?」

「半分くらいかな」

「ええっ!?それ気まずくない?」

「……私のせいだし」

「麗奈先輩のせいもあるよ。流石に荒治療過ぎると思う」

「そこまでしないと分からなかった私が悪いんだよ」


あの後、麗奈先輩は「どうしても辛かったら貴女のお姉さんに頼むけど」と言ってくれたからフォローは考えてくれてたらしい


断ったけどね

姉の権力を使ったらなんとかしてもらえるかもしれないけど、出来るだけ頼りたくないし、なんでこうなったか聞かれるだろうから、そこからボラ部の裏活動が明るみに出る恐れがある。


家の前まで来て、綾坂がまだ着いてきてることに気づいた。

彼女の家はもっと手前なんだけど、心配して着いてきてくれたのかな?


「ありがと」

「なにが?」

「心配して着いてきてくれたんでしょ?」

「まぁねー!」


綾坂はその場で軽く跳ねてツインテールをぴょこぴょこさせたので思わず笑ってしまう


綾坂が幼馴染で本当に良かった。

恋愛が絡む打算的な行為に霹靂していたから、見返りを求めない友情が心に染みる。


「せっかくだから久しぶりに夕飯食べてく?」

「それもいいけどさ、本当に大丈夫?」

「……辛いよ」


本音が溢れでた。

綾坂にならかっこ悪い自分を曝けだせる。


「じゃあさ……」


綾坂が私の肩を掴んで顔を寄せた。

夕日に照らされた彼女の髪が普段より明るく見える。




「ヨリ戻そうよ」

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