愛花先輩とデート
日曜日、身支度してから部屋を出ると、廊下で姉に出会した。
彼女も整った身なりをしている。
……さては?
「お姉ちゃん、今日はなんだかお洒落だね」
「そうかな?いつも通りだよ」
「麗奈先輩とデート行くから気合い入ってる感じ?」
「ち、違うわ!麗奈とはそんなのじゃない!」
やっぱり今日がコンサートに行く日だったか
名前で呼び合うなんて随分と親密になってますなぁ
「奈凪ちゃんこそお洒落してるけど?」
「うぇ!?」
ニヤニヤしていたら、姉が思わぬ反撃を放ってきたので、面食らう
「……誰かとお出かけするのかな?」
「あ、愛花先輩とだよ」
「女の子二人きりで?」
「わ、悪い?」
「お姉ちゃんもついていっていい?」
「ダメだよ!お姉ちゃんはコンサート行くんでしょ?」
女二人で出かけると心配するのなんなんだよ!
……薄っすら感じてたけど、この人も女が恋愛対象なんだろうな
ってことはマジで麗奈先輩とくっつく可能性ある?
うーん、そしたら愛花先輩がなぁ……
それに、お姉ちゃんの興味が私から他の人に移るのもなんか嫌だ
今までデートとか言って茶化してきたけど笑えなくなってきたかもしれない
いやいやいや、そんなこと思うのは流石に自分勝手過ぎるよ
心の中に沸いた黒い感情を必死に振り払うと、お父さんの姉を呼ぶ声が聞こえてきた。
どうやら姉はコンサート会場までお父さんに車で送ってもらうみたいだ
なんか姉ばっかり贔屓されてる気がしてむかついたから私も無理矢理車に乗り込む
洒落込んだ姉妹を見て、お父さんは何か勘違いしたのか、ひたすら嘆きながらハンドルを握っていた
泣きながら運転するのって何かの違反にならないのだろうか?
目的地の待ち合わせ場所に着いたので、車から降りると姉とお父さんも降りてきやがったので無言で車に押し返す。
愛花先輩は、先に着いていたらしく、私を見つけると笑みを浮かべながら寄ってきてくれた。
「愛花先輩、可愛いです」
「えへへ、奈凪ちゃんとデートだから頑張っちゃった」
タートルネックに膝まで届く長さのロングカーディガンを合わせた格好は本当に可愛い
夏休みの時の謎Tシャツはなんだったんだ?
愛花先輩と並んで歩き、映画館に入る。
観たのは百合アニメの映画版で、ラストシーンのお互いの気持ちが通じてキスしたところで思わず涙が出た。
「めちゃくちゃ良かったですね!」
映画館の近くにあったレストランでパスタを食べながら映画の感想を語る。
興奮はまだ冷めない、もう一回観ても良いかも?
「私はつまらなかったかな」
「えっ?」
「キスの練習させて?って貴女のことが好きですって言っているようなものだと思わない?なんで気づかないかな?ってずっと思ってたよ」
「そ、それはそうかもしれませんね」
恋愛をしたことのない二人が恋愛の練習としてキスを重ねて次第には惹かれ合うというストーリーなのだが、愛花先輩には合わなかったみたい
「どうせならもっとドロドロしたの観たかったなぁ」
食事の手が止まる。
百合アニメだから好みだろうと思ったのは早計だったみたいだ
今日は愛花先輩が主役だから彼女に選ばせてあげれば良かったな
「あ、ごめんね」
「いえ……」
「奈凪ちゃんは私のこと全部知ってるからつい本音が出ちゃう」
「全然大丈夫です」
「これからもこんな感じで良いかな?」
「はい」
「嬉しいな。昔から映画観てつまらないって言える人が欲しかったんだ」
その気持ちは分かる。
相手に合わせて言葉を選んで会話するより、自分の意見を好きに言った方が楽しい
「みんな私を勝手に良い子にするんだよね。実際は浮気者でヤリマンな最低女なんだけどな」
好きに言い過ぎだろ
ここ公共の場所だからな!
この話題は続けるべきじゃないので別の話題に移ることにする
「この後どうします?」
「……どうしたい?」
愛花先輩は目を細めて私を見つめながら、自分の唇を舌で舐めた。
……やっぱりこの人は限界だ
「どこか二人きりになれる場所に行きましょう」
「ふふっまだ早いかな」
レストランから出て、商業施設に入る。
いつの間にか腕を組まれていた。
愛花先輩の服選びに付き合う
どっちが良いかな?と度々聞かれるが、ファッションに自信がないので困る。
「最後にここも寄っていい?」
「は、はい」
一緒にランジェリーショップに入る。
店内の淡い照明に照らされたレースやサテンが、どれも柔らかく光っている。
「どっちが好き?」
愛花先輩は二枚の下着を自分の身体に交互に当てながら聞いてきた。
先輩が着てる姿を想像してしまって顔が赤くなる。
どっちが好きとか答えにくいよ
せめてどっちが似合うって聞いて欲しい
「どっちかな?」
「……こっちです」
どちらかというと大人しい方に指を刺すと、愛花先輩は「じゃあ奈凪ちゃんが興奮する方にする」と言って微笑んだ
そんなこと言ってない!
レジに向かうのかなと思ったが、愛花先輩はまた下着を選び出した。
もう一枚買うの?さっき迷った方を買えば良いのでは?
「これどうかな?」
愛花先輩が私の身体に当ててきたので、びっくりして後ずさる。
私の選んでた!?
「わ、私はいらないですよ!」
「今日のお礼に買ってあげるよ」
「じゃ、じゃあなんかジュースでも奢って下さい」
「奈凪ちゃんの選んであげたいよ。ダメ?」
「……うう」
上目遣いで嘆願されて折れる。
せめてもっと手軽そうな店が良かったな
こんな高級そうなお店で買ったことないよ
当てられたラベンダーのセットを却下すると、愛花先輩は他の下着を選び始めた。
彼女の指先でハンガーをそっとめくる仕草が妙に慎重で触れているのが布なのか、私の心なのか分からなくなる。
「レースが細かいほうが上品に見えるよ。ほら、触ってみて」
言われるままに触れると、思っていたより柔らかい。
その様子を、愛花先輩は楽しそうに見ている。
「私にはちょっと早いような」
「そんなことないよ。きっと似合う」
愛花先輩も私の下着姿を想像しているのだろうか?
恥ずかしくてまた却下したくなったが、この時間が続くのも嫌なので結局それに決める。
商業施設から出ると外は少し暗くなっていて、日中よりも気温が低く感じた。
あまり遅くなると姉に心配されるな
「愛花先輩、そろそろ……」
「うん、そうだね」
愛花先輩に連れられて歩く
今日の目的はデートじゃなくて噛むのが目的だ
私から提案して、先輩が日付と場所を指定した。
愛花先輩は麗奈先輩が好きだから噛まれたくない
麗奈先輩は愛花先輩が好きだから噛みたい
そう思ってるから、愛花先輩を説得して麗奈先輩が噛むのが一番良いのだけど、そうは言っていられない状況だから私が噛むしかない
考えながら歩いていたら、眩しい光が視界に入ってきたので思わず目を閉じる。
「入ろっか?」
目を開けるとキラキラした建物が目の前に現れた。
これラブホテルってやつだ!!




