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因縁の対決

「3ゲームマッチでやろう。キミはブランクがあるから0-30からでいいよ」


ハンデを付けてくれるみたいだけど、それでも不利だと思う

運動は体育の時くらいしかしてないし、こっちは制服だ


せめて運動靴に履き替えたいなと思っていたら部長は何故かコート中央の審判台に上がった。


「えっ?」

「僕が相手するなんて言ってないよ」

「そうなんですか」


じゃあ私と試合するのは同級生かな?

上級生の部長と試合するよりは勝ち目がある。

さっき練習を見ていた感じだとそんなに上手い子はいなかったからハンデありなら勝てるかも


「キミの相手はあの子だよ」


部長が指差した方を見ると、遠くでストレッチをしていたポニーテールの子がスタスタと歩いてきて、ネットの前で立ち止まって機嫌が悪そうに腕を組んだ

さっきは見なかった子だな。ランニングでもしてたのかな?


「久しぶりだな」

「どちらさま?」

「侮辱のつもりか?」

「そんなつもりはないんですけど」


困っていると、上から部長の笑い声が降ってきた。


「ふふっ、この子はキミが決勝で戦った相手だよ」

「あーー!?」


私はおばあちゃんか!

夏の大会で負けた相手を忘れてた。

まぁ、正確に言うと記憶からわざと消去してたんだけどね


「やっと思い出したか」

「あの時の卑怯なヤツね」

「卑怯だと?」

「うん。卑怯だよ。家族総出で来てたじゃん。おじいちゃんの遺影まで持ち出してさ。あれじゃ私が悪者みたいでかなりやりにくかった」

「家族が応援に来て何が悪い?お前には応援に来てくれる家族がいなかっただけだろう?」


応援に来てくれる家族はいた。

あの日、姉は「応援に行きたいな」と言ってくれたが、当時は仲が拗れてたから冷たく断った。

あの時の姉の悲しそうな顔は今でも忘れられない


「卑怯なのはお前だ」

「私のどこが卑怯?」

「噂によると文化部に入ったらしいな?」

「そうだけど」

「もう負けるのが嫌になって文化部に入ったのだろう?お前は勝負の舞台から逃げた卑怯者だ」

「そんなつもりない!」

「フッ、せいぜいぬるま湯で満足しているんだな」

「なっ!?」

「はいはい、喧嘩はそこまで。決着は試合で付けよう」


部長が間に入ったので、ポニテはネットから離れて位置につく

私も位置につくように言われたが、従わなかった。


「どうしたんだい?」

「……ハンデは入りません」

「大丈夫かい?あの子はあの時よりも数段強くなっているよ?」

「はい、必要ないです。その代わり私が勝ったら……」

「キミが勝ったら?」


握っていたラケットをポニテに向けて真っ直ぐ突き出す。




「全員抱かせろ」




一瞬の静寂の後に部長の笑い声がコートに響き渡る。

今回は取ってつけたような笑いじゃなくて本気で笑っているようだ

他の部員は全然笑ってない、意味を取り間違えて自身の身体を手で抑えてる子までいる。


「……キミ、ホントに面白いね」

「いいですか?」

「いいよ。その代わり負けたら玉拾いからだ。経験者でも優遇しない」

「それは最初からそのつもりです」


コートの端のポニテから「どういうつもりだ!?何を企んでいる!?」と声が飛んできたが、さっさと打ってこいよと指で合図する。


私から仕掛けた喧嘩だけど、ボランティア部をぬるま湯とバカにしたのは許せない

徹底的に叩き潰してやる。


構えるとポニテが高いトスからサーブを放ったので、フォアハンドで打ち返すと、鋭い打球がライン際に返ってきたのでギリギリ返したがスマッシュを叩き込まれた。


……数段強くなってると言うのは本当だな


次はスライスしたサーブが来た。

意表を突かれたので、弱いリターンを打ってしまう

しまったと思う間もなく、ボレーを決められまた失点した。


結局、そのままの勢いで1ゲーム取られてしまった。

次は私のサーブからだが、その前にベンチに向かう


「チェンジコートは無いよ?」

「分かってます」


ブレザーを脱いで、座って観戦してた子に預ける。

勝負はここからだ


叩きつけるようにサーブを放つと、ネットに跳ね返される。

今度はコントロールを重視して打つと、リターンエースを取られてしまった。


「そんなサーブが私に通用すると思うな!」


うっせーと呟きながらスライスしたサーブを打つと、ポニテは打ち返してから前に出てきた。

相手がいないところに打つのが定石だけど、打球が強烈だったので正面に飛んでしまう


またやられると思ったが、ポニテはたまたま吹いた強風に気を取られたのかボールをネットに打ち込んでしまった。


相手のミスだけど、得点には変わらない

ここから私の流れに持っていくぞ


今度は普通のサーブを放つ

リターンが山なりに返ってきてボールが大きく跳ねたので高く跳んでバックハンドで思いっきり打ち返すとポニテは一歩も動けなかった。


「その程度?」

「くっ……」


本当に私の流れになり、1ゲームずつの同点になったので、周りのテニス部員がざわざわし出した。


ポニテのサーブが来る。

どういう訳か、最初より打球が弱かったので遠慮なく打ち返すとライン際に入ったボールをギリギリで拾われたが、チャンスボールだったのでまた跳んでダンクスマッシュで決めた。


次はラリーが暫く続いて、ポニテの打球が際どいところに入ったが、飛び付いて取ると、弧を描いたボールは彼女の頭に当たった。

なにしてんだ?


3ゲーム目は私の圧勝で、2ゲーム取ったことになるから勝ちが決まった。

奈凪ちゃんテニス部編は回避したことになる。


「ひ、卑怯だぞ」


ネットの前で握手しようと手を出してやったのに、ポニテはこの後に及んで負け惜しみを言ってきた。


「卑怯な要素なんてどこにもないけど?」

「し……」

「し?」

「下着を見せてきたじゃないか!?」

「へっ?」


今更遅いのにスカートを抑える。

早く言えー!

制服のままめちゃくちゃ跳んだり跳ねたりしてたよ

途中で風が吹いてからポニテが弱体化したのそれだったの?

は、はじかしい……


「そうだったの?僕からは見えなかったよ。残念だなぁ」


審判台の上に居た部長には見えなかったらしいが、周りのテニス部員たちは真っ赤な顔をしていて、ブレザーを預けた子に至っては、そのブレザーで顔を覆っていた。

あんまシワにしないで欲しい……


「何はともあれキミの勝ちは揺るぎない。約束通り抱いていいよ」


部長が手を広げながら近づいてきたので、私も手を広げて受け入れる。


……違う


『お姉さま』では無かったけど、すぐに離れるのは失礼に当たると感じ、そのまま抱擁を続ける。


「綾坂さんに怒られますよー」

「ははっ、それはマズイな」


他の部員に茶化されて部長は私から離れた。

えっ?綾坂?

部長の恋人って綾坂なの?

綾坂の好きな人って恋人のこと?

んーでも殆ど一緒に帰ってるし、そんな気配無かったけどな


考えていると、目の前に他の部員が来たから、ちょっと戸惑った後に抱きしめる。

いつの間にか行列が出来ていた。

全員抱かせろって言ったこと、ぱんつのショックで頭から飛んでたよ


列の最後のブレザーを頭に被ったままの子を抱きしめてから、離れていたポニテに近寄ると、彼女は後ずさった。


「い、今は汗をかいているから……」

「気にしないけど?」

「わ、私は気にするんだ!」


同級生だから無理にする必要ないか

でも仲直りはしたいから手を差し出すと、ポニテは手を自分の服で拭ってから握ってくれた。


「卑怯とか言ってごめんね」

「……私こそすまなかった」


私が笑いかけるとポニテも少し笑った。

思わぬ形だったけど、あの夏の嫌な記憶が払拭されたみたいだ


「抱き合う約束は守る。教室に行けば良いか?」

「それならボランティア部に来てよ」

「何故ボランティア部に?」

「来れば分かるよ」


手を振ってテニスコートを後にする。

疲れたから今日の活動はこれで止めて、ボラ部でまったりしようと部室の前まで来たが足が止まった。


ブレザー返してもらってねー!!

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