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関係リセット失敗

背中越しでも姉が息を呑むのが伝わった。

密着していた身体を少し離してこちらに振り向くのを促す。


「……それは出来ないよ」

「それじゃ安心できない。お姉ちゃんが私の身体を触っても平気でいられることを証明して」


姉は暫く躊躇していたが、やがて決心がついたのかゆっくりと振り向いた。

裸体を隠したくなったが、それじゃダメだ


これは姉だけじゃなくて姉妹の試練だからお互いに意識してはいけない

裸を晒してもなんとも思わない普通の姉妹関係に戻るんだ


「寒い、早く」

「……うん」


壊れものを触るような手つきで肩に触れられる。

そこから腕に降りてきて、摩るように洗われてから姉の手が離れた。


少し間が空いてからお腹に手が伸びてきたので、露骨に溜息を付く


「いくじなし」

「だって……」


手を完全に引っ込めてしまった姉に憤りを感じる。

自分から一緒にお風呂入って証明したいって言ってきたから勇気を出して協力してあげてるのに肝心なところで怖気ついた。


「妹のことえっちな目で見てるからそうなるんだよね?」

「違う」

「違うの?だったらなんで私のおっぱい洗えないの?」


黙ってしまった姉の胸をいきなり掴む。

彼女の瞳は私が揉む度に開いたり閉じたりした。


「もう恋人ごっこじゃなくて本当の恋人みたいにする?シスコンお姉ちゃん?」


その一言で、焦点が曖昧だった姉の目が元に戻り、胸を弄っていた私の手を跳ね除けた。


「やめなさい」

「……ごめんお姉ちゃん」


姉に怒られたのは人生で初めてだ

変な話だけど凄く嬉しく感じる。


跳ね除けられた手を膝の上に置くと、姉の手が胸に伸びてきて軽く触れ、手のひらで無機質に撫でられる。


そのまま身を任せていると、手が股の間に降りてきたので「そこはいい」と言いたくなったが、これを乗り越えないと今までしたことが無に帰してしまうと思い直して唇をぎゅっと結んだ


「終わったよ」


そう言って彼女は、私の身体に残った泡へとシャワーを向けてくる。

咄嗟に奪おうと手を伸ばしたが、当然のようにかわされてしまった。


「奈凪」

「自分でやるからシャワー貸して。お姉ちゃんは先にお風呂入ってて」

「お姉ちゃんが流してあげる」

「いいってば」


私の反論を無視してシャワーでお湯をかけられると、

あっという間に身体に残っていた泡が洗い流され裸体が完全に露わになったので、耐えきれなくなった私はついに身体を両手で隠して目を逸らした。


私から見せたり触らせたりするのは我慢出来るけど、人に見られたり触られたりするのは我慢出来ない

頑張って耐えてたけどもう限界だ


「手は横に起きなさい」

「や……」

「奈凪」


いつもの奈凪ちゃん呼びの甘々モードじゃない姉に気圧されて、隠していた手が自然と離れた。

うう……すっかり攻守交代してる。

姉の前で裸体を隠すのはおかしいけど、隠したら怒られるのもおかしいと思うよ


何も言われなくなったので逸らしていた目を姉に向けると、やけに真剣な表情で私を見つめていた。

さっきのことまだ怒ってたりする?


「お、お姉ちゃんごめんなさい。試すようなこと言っちゃった」

「ううん。奈凪ちゃんのお陰でお姉ちゃん完全に克服出来たよ」

「そっか」

「これでお姉ちゃんのこと信じてくれる?」

「……うん」

「じゃあお風呂入ろっか」


脚を交差させて湯船に浸かる。

膝が触れそうで落ち着かない

お湯よりも体温が熱い気がした。


姉は証明してくれたのに、なんでまだ恥ずかしく感じるんだろ?


視線の置き場に困る。

下を見ると姉の身体が目に入るし、上を見ると顔を合わせてしまう


「奈凪ちゃん」

「なに?」

「……好きな人っているのかな?」


思わぬ質問に驚いて顔を合わせてしまう

姉はさっきのような真剣な表情をしていた。


「いない」

「そうなんだ」


普段なら髪留めがある場所を触りながら答えた。

姉に『お姉さま』のことを言ったら生徒会長の権力を使って調べるかもしれない

『お姉さま』を自分で見つけ出したいから余計なことをするかもしれない姉には言いたくない


会話はそれだけで途絶える。

相手が友達なら貴女は好きな人いるの?と聞くのが自然な流れだが、ここで姉にそれを聞く気にはなれなかった。


姉は克服出来たと言った。

妹をそういう目で見てくるのは無くなったと思うけど、恋心も無くなったのかな?

いや、はっきり告白されたことなんて無いから元から無いのかもしれないけど、それを確認するのが怖い


え、どういうこと?

姉は私のこと好きでいて欲しいって思ってる?


脳裏に先程の姉の真剣な表情が浮かぶ

私に向ける媚びるような作り笑いや生徒会員に向ける氷の様な冷たい視線には何も感じないが、私の手を振り払った彼女の真摯な表情には胸が高まった。


なにこれ……

姉も恋愛対象に入ってる?

私が彼女を意識してるから恥ずかしいの?


「奈凪ちゃん?」

「ぶくぶくぶくく」

「奈凪ちゃん!」


考えている内に口が湯船に沈んでしまったようだ

異変を察知した姉が寄ってきたので、目の前がおっぱい一色になる。


胸の大きさくらいは勝ちたかったなぁ……(遺言)




その後の記憶は定かではない

気づいたら自室のベッドの上で横になっていた。


「奈凪ちゃん大丈夫?」

「う、うん」


起き上がると季節外れの団扇で私を仰いでいた姉と目が合った。

どうやらお風呂でのぼせてしまったようだ

はっとして自分の身体を見たらちゃんとパジャマを着ている。


姉が着せてくれたのかなぁ

ありがたいけど無防備な裸体を見られたのは恥ずかしいな


「本当に大丈夫?」

「もう平気」


尚も心配そうに覗き込んでくる姉から隠れるように布団を被る。

彼女の顔を見るとまた体温が上がってしまうような気がした。


「お水置いておくから飲んでね」

「今日はありがとう。恋人ごっことっても楽しかったよ」


姉の気配が遠ざかっていく

彼女は最後に「おやすみなさい」と、私に声を掛けてから静かに扉を閉めて出ていった。


居なくなったのを見計らって布団から顔をひょこっと出して時計を見たらまだ9時だった。

恋人ごっこ、もうちょっと続けてやっても良かったのにな……


「一緒に寝ようくらい言ってこいよばーか」


布団を被ってから文句を小さく呟く

結局、私達は普通の姉妹に戻ることが出来なかった。

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