刺されなければ全て良し
文化祭まであと僅か
アクセサリーの出来栄えは更に良くなったし、生産速度も格段に上がった。
これ楽しいな。将来こういう仕事したい
「ナギっちの告白、私の誕生日にしない?」
「いいよ」
「まさか私の誕生日忘れてないよね?」
「11月9日でしょ」
「忘れるワケないか。疑ってごめんね」
綾坂に横から抱きつかれる。
告白って言うと私には恋愛的な意味に聞こえるな
秘密を打ち明けるって意味なんだろうけど
それにしても最近の綾坂は優しいな
今みたいな接触も多くなったし、なんだか勘違いしてしまいそうだ
こんなこと言ったら絶対キモがられるから言わないけど
機嫌が良い綾坂は鞄からファイルを取り出して机に置いた。
今日出た課題でもするのだろうか?
「麗奈先輩、例のモノ完成しましたぜ」
「あらそう。チェックしても良いかしら?」
「へへっどうぞどうぞ」
何故か三下口調の綾坂が麗奈先輩にファイルを渡したので、先輩の背後に回ってそれがなんなのか覗いてみる。
愛花先輩の水着姿の写真だった。
うわぁ……
これは引く
いつも澄ました顔してるけど、実はすけべだったんだ
これから麗奈先輩の対応変わってくるわー
というかこんな取引、愛花先輩の目の前でして大丈夫なの?
「こんなの駄目よ」
麗奈先輩はファイルからその写真を取り出して机の上に置いた。
「えー勿体ない。愛花先輩いります?」
「自分の水着写真貰ってもなぁ」
麗奈先輩が「これも却下」と言ってまた机の上に写真を置く
私の水着写真だった。
悲鳴をあげてから写真を取ろうとしたが、その前に愛花先輩に取られてしまった。
「奈凪ちゃんのもーらい」
「駄目です!」
「愛花先輩の手が下だからナギっちの負けだヨー」
「カルタかよ!」
次に検閲を受けたのは星七先輩の水着写真だった。
どうやら水着写真は別荘に行った時に撮られたものらしい
そうじゃなかったら怖すぎるけど
「水着は事務所通して欲しいんだけど」
「星七先輩、事務所入ってんですか?」
「これからスカウトされるかもしれない」
「じゃあ入ってないジャン!」
詩織さんの写真もファイルから抜かれた。
水着写真だけでなく、私服の写真も机に置かれる。
「なんで詩織さんの写真もあんのよ」
「需要あると思いますけどネー」
「許可取ってないでしょ」
私にも許可取ってないんだが!?
結局、水着写真と詩織さんの写真は全て除外された。
そろそろ何をやってるか説明して欲しい
「これなに?なんに使うの?」
「文化祭で『お嬢様』の為に私達のブロマイドを売るって言ったジャン!」
「綾坂ちゃんが提案してくれて、麗奈が許可出したんだよ」
「パシリ2号、まさか忘れたてた?」
そういえば綾坂のスマホの画像をプリントするとかなんとか言ってた気がする。
アクセ作りに集中し過ぎてあんま聞いてなかった。
反対しとけば良かったなー
他の写真でも恥ずかしいよ
トランプみたいにして各自に写真が配られる。
「くしゃみしそうなナギっち、欠伸してるナギっち、目薬を差してるナギっち。などなど厳選したナギっちコレクションであります。どれが好き?」
「どれも好きくない!」
私の写真はどれも変なやつばっかだった。
いつの間に撮ったんだよ。
隣の綾坂の写真を見てみると変なやつは全然無い
「ずるい。綾坂の可愛いのばっかじゃん」
「えへへ、そうかな」
抗議してるんだから照れるなよ
「そうかな」じゃなくて「そうカナー」って言え
素になんな!!
私はキャラ作りに厳しんだ
ペンも配られた。『お嬢様』へのメッセージを書くらしい
アイドルみたいでくすぐったい
中々メッセージが思いつかなくて頭を捻っていると、詩織さんが来てくれたので、ペンを置いてソファに向かう
「アクセサリーは作り終わりました?」
「もうちょっとかな」
「奈凪さんが作られたアクセサリーは全て欲しいです。個数制限はあるのですか?」
「ど、どうかな?」
「予約は出来るのですか?」
「多分出来ないと思う」
なんか姉とキャラ被るな
とりあえず私のだけ売れ残る心配は無さそう
「実はブロマイドも売るんだよね」
「それも全部欲しいです!」
「私のは変なのばっかだよ」
「奈凪さんのものはどんなものでも全部欲しいのです」
そう言って詩織さんは私の頬を撫でた。
二人にしか分からない動作にどきりとする。
家族の姉相手だとそんなに感じないが、詩織さんと話していると自己肯定感がぐんぐん満たされていくのを感じる。
「これから部室の飾り付けもするんだ」
「私もお手伝い致しましょうか?」
「大丈夫だよ。そんな盛大にやるわけじゃないし。詩織さんのクラスは準備終わったの?」
「私のクラスはもう終わってます」
「そっか。時間作って遊びに行くからね」
「……はい。奈凪さんのクラスは準備進んでいますか?」
「そっちも大体終わってるかな」
いつもならとっくに抱かれてるのだが、どういう訳か詩織さんは文化祭の話を止めない
以外とこういうイベントが好きなのだろうか?
「……どうして?」
「え?」
「どうして誘ってくれないのですか!?私はずっと文化祭の話をしているのに!気付いてるのに気付いていない振りをしているのですか!?」
いきなり両手でポカポカ叩かれる。
詩織さんは私と文化祭一緒に回りたくて、文化祭の話をしてたんだ
カーテンの外で「ぐえっ!」って声が聞こえてきた
恐らく綾坂が私を助けようとして麗奈先輩に拘束されたのであろう
「し、詩織さん」
「……なんですか?」
詩織さんに抱きついて打撃を止めさせる。
ボクシングのクルトンってやつだ
彼女は大人しくなってくれたけど、この次の発言によってはまた暴れるかもしれない
刺される以外は良しとしよう
「実はもう一緒に回る人は決まってるんだ」
「……私以外の女がいるということでしょうか?」
あれ?
私って詩織さんと付き合ってたっけ?
「そ、そうじゃなくてお姉ちゃんと回るんだよ」
「家族を大事にするのは大切なことです。でも家族はいつでも会えるじゃないですか!?」
「そうだけど……」
「私は放課後しか会えませんが、いつも奈凪さんのことを想っています。勉強や習い事をしている間も、貴女がいま何をしているか想いを馳せています。少しくらい私の気持ちに応えてくれても良いじゃないですか!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
「就寝前に奈凪さんがいま他の女に抱かれてると想うと酷く胸が痛くなります」
「そんな時間に抱かれてない!」
レズ風俗だと思ってらっしゃる?
アラームが鳴ったが、このまま詩織さんを帰らせるのは可哀想だ
「今回は許してよ」
「許しません」
詩織さんは私の胸から顔を離してぷくっーっとむくれた。
なんか頬袋に餌を溜め込んだリスみたいだ
「どうしたら許してくれるの?」
「……また奈凪さんのモノを下さい」
「じょ、常識的な範囲なら」
「勿論そのつもりです」
条件が成立して詩織さんと離れる。
まだ頬が膨らんでたから、指で押して破裂させると、バシッと肩を叩かれた。
ほっぺとは違う箇所をあげることになった。
常識的な範囲に絞ったから変なところは指定してこないだろう
おでことかかな?
カーテンを開けて席に戻る。
綾坂は自分の席で突っ伏していた。
……魂が抜けてる
麗奈先輩、締め過ぎてない?
作業に戻ろうとすると、詩織さんの写真が私の机の上に置いてあるのに気付き、思わず手に取った。
誰かが変な気を使って置いたのだろうか?
……こう見ると詩織さんホントに発育良いな
「なぜそんな写真を持っているのです!?」
振り返ると詩織さんが真っ赤な顔をして立っていた。
帰らないで着いてきてたの?
「こ、これは」
「奈凪さんの破廉恥!」
弁解する前に詩織さんは私が持っていた水着写真を奪って出て行ってしまった。
「ヤンデレちゃんに破廉恥扱いされてやがんの」
星七先輩に揶揄われる
写真置いたのお前かよ




