生贄になる運命だった
部室でアクセサリーを作る日々が続く
少しずつ慣れてきて大分出来栄えは良くなった。
「奈凪ちゃんと綾坂ちゃんのクラスは何するの?」
「ウチのクラスは脱出ゲームやりますよ」
「わぁ楽しそう」
「遊びにきて下さいヨー」
「うん、絶対行くね」
愛花先輩は手を合わせて楽しそうに笑った。
ウチのクラスは文化祭で脱出ゲームをする。
クラスでもメイド喫茶を提案して却下された綾坂は最初ぶーたれてたが、今や率先して準備してくれている。
「愛花先輩のクラスは何するんですか?」
「ウチはお化け屋敷だよー」
「もっと手間が掛からないのが良かったのに……」
愛花先輩と同じクラスの麗奈先輩が愚痴をこぼした。
ホラーは苦手だけど、高校の文化祭だったらそこまで怖くなさそうだから行ってみたいな
星七先輩のクラスは何するんだろ?
今日居ないから確認出来ないな
確認と言えば、やっぱり星七先輩が『お姉さま』かどうか確認したい
星七先輩に対して恋愛感情は無かったが、この前、一瞬ときめいたのは事実
先輩が『お姉さま』だと判明したら好きになるのかもしれない
勿論、綾坂を出し抜いたりする気はないから、星七先輩を抱きしめて確認する前に、綾坂には了承を得る。
「ナギっちなんで私見てんの?」
「うぇ!?」
無意識に綾坂をじっと見ていたらしい
誤魔化しは彼女に通用しないので嘘にならない用に答える。
「や、綾坂に言いたいことがあって」
「なになに?」
「……ここでは言えない」
「え?」
綾坂は作っていたアクセを机の上に落とした。
ここで星七先輩が『お姉さま』かもしれないと言うことは出来るけど、綾坂に先輩を抱く了承を得ることは出来ない。
綾坂の星七先輩への恋心が先輩たちにもバレてしまう恐れがあるからだ
「そ、それって二人っきりの時には言えるってことだよね?」
「うん」
そうだ、文化祭の時に言おう
LINEや帰り道でも言えるけど、こういう大事なことは区切りの日に言った方が良い
「良かったらさ、文化祭二人で回らない?」
「その時に言ってくれるってこと?」
「うん、それまで待ってくれる?」
「……待つのは良いけど、バッチリ決めてよね。ナギっちは肝心な時にダブルフォルト打つんだから」
綾坂の発言に違和感を感じたが、麗奈先輩が口を挟んできて思考は中断された。
「悪いけどそれは叶わないわ」
「二人の好きにさせてあげようよ」
「愛花先輩の言うとおりです。好きにさせて下さい。私とナギっちはもうその覚悟が出来てます」
なんの覚悟だろう?
私と星七先輩を取り合う覚悟が出来てるってこと?
「奈凪さんが文化祭を一緒に回る相手は既に決まってるわ」
へー奈凪さんは一緒に回る相手決まってるんだ
……奈凪さんって私じゃん。初耳なんですけど
「……麗奈先輩がナギっちと一緒に回るってこと?」
「違うわよ」
「じゃあ誰ですか?」
そもそも私が文化祭一緒に回る相手を勝手に決められてるのおかしくない?
私って実は王族の血が流れてて政略結婚させられるの?
「奈凪さんの姉よ」
よりによって一番最悪な名前が出た。
比べられるのは平気になったが、文化祭を姉妹で回るのは恥ずかし過ぎる。
姉は私と居ると妹溺愛モードになるからクラスメイトにベタベタされてるのを見られるのはマジできつい
「なんでナギっちがお姉さんと回らないといけないんですか!?」
「奈凪さんの姉を部室に入れたくないの。頭脳明晰な生徒会長が、ここのカーテンとソファを見て疑問を感じないとは思えないわ」
「文化祭の生徒会長なんてめちゃくちゃ忙しいから来る暇ないですよ!」
「貴女、幼馴染の癖に奈凪さんの姉のシスコンっぷりを知らないの?どんなに忙しくても必ず妹の様子を見に来るわ」
「ぐっ……」
「だから奈凪さんと話すのは文化祭以外にしてちょうだい。そしたらもうとやかく言わないから」
「分かりましたよ……」
綾坂が引き下がって勝敗が付く
なんも喋ってないのに姉と文化祭回ることになった。完。
家に帰って夕飯を食べた後に姉の部屋を訪ねる。
私はまだ諦めていなかった。
確かに姉はシスコンだが、生徒会長は文化祭の全体総括を担うからめちゃくちゃ忙しいので断る可能性がある
彼女は他者に興味がないが、権力欲は人一倍あり、来年の会長選挙に差し支える行動は控えるかもしれない
「どうしたの奈凪ちゃん?」
「今、時間ある?」
「奈凪ちゃんの為ならいくらでも時間作れるよ」
あ、これ駄目だわ
「文化祭って忙しいよね?」
「お姉ちゃんのこと?生徒会で既に何回もシュミレートしてるし、起こり得るトラブルに対するマニュアルはテロリスト侵入時も含めて全て網羅してあるからそこまで忙しくはならないかな」
「そ、そっか」
優秀過ぎるんですけど
絶対、私達みたいに楽しくお喋りしながら準備してないよ
生徒会の役員を馬車馬の如く働かせてそう
「奈凪ちゃんが作ったアクセサリー絶対買いに行くからね。個数制限ってあるの?全部買いたいな」
やっぱり部室に来るつもりだったよ
私は生贄になる運命だったんだ
「あのさ……」
「なにかな?」
「文化祭、私と一緒に回らない?」
忙しいなら無理にとは言わないを付け足す前に姉はその場にぺたんと座り込んだ
宝くじに当たってもこうはならないだろうな
「……お姉ちゃん実は奈凪ちゃんと一緒に回りたかったの」
「私に遠慮しないでよ」
「うん、そうだったね」
「じ、じゃあそういうことだから」
泣きそうになってる姉を残して部屋から出ようとすると、小さな声で呼び止められた。
聞こえなかった振りをするのも可哀想なので振り向く
「なに?」
「今夜、一緒に寝たいな」
「……調子乗りすぎだばーか」
バタンとドアを閉める。
振り向かなきゃ良かった。




