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波に連れ去られた想い

翌日、詩織さんの部屋から出るとすぐに綾坂が駆け寄って来た。


「ナギっち『禁忌』犯した?」

「なんか麗奈先輩みたいになってるよ」

「いいから答えて」

「『禁忌』は犯してない」


私の前髪の髪留めを睨みながら言ってきた綾坂に正直に答える。

直接的な『禁忌』は犯してないから本当だ


「……ならいい」

「そういう綾坂こそどうなの?」

「はぁ!?なんもないし!!むしろ星七先輩、寝相悪くて最悪だった。起きたら寝ぼけてる先輩に耳吸われてたし」


それはなんもないとは言えないんじゃないかとつっこもうとしたが、麗奈先輩が部屋から出て来たのでそっちに話しかけた。

先制攻撃だ


「『禁忌』は犯してませんか?」

「……私に限ってそれはないわ」


そう突っぱねながらも、麗奈先輩の顔色は優れない。

愛花先輩と一緒のベッドだったからよく寝れなかった?


昨日は私と詩織さん、綾坂と星七先輩、麗奈先輩と愛花先輩というボランティア部にとって最悪な組み合わせだったが、脱落者は出なかったようだ


朝食を食べた後に着替えてビーチに出る。

実は私もよく寝れてないので、泳がないで砂で建築物を作ることにした。

隠キャは砂遊びしがち


「な〜ぎちゃん、何作ってるの?」

「黒部ダムです」

「わぁ難工事だね。隣いいかな?」

「どうぞどうぞ」


愛花先輩が来てくれた。

昨日と違って水着の上にTシャツを羽織っている。

Tシャツに登別と書いてあるから私と一緒のセンスだ

水着の上にTシャツの方がいかがわしく見えるのは私だけだろうか?


愛花先輩は隣に座ったのに何も言わない

黒部ダムについて語り合った方が良いのか迷っていると、先輩はやっと口を開いた。


「……昨日はごめんね」


動揺してダムを決壊させてしまう

愛花先輩が何に謝罪しているかすぐに分かった。

私が指を舐めている時に反応してしまったことを言っているのだろう


「いえいえ、私が変な舐め方しちゃったからですよ」

「ううん、全然普通だったよ。私が意識しちゃっただけ」


普通じゃない

昨日、詩織さんに指を舐めている時に違和感を感じたと言われてしまった。

恐らくどっちも意識していたのだろう


「それならおあいこにしましょう」

「そうだね」


再び会話が途切れる。

愛花先輩は木の枝で砂浜に絵を描き出した。

猫、犬、パンダ、それらは感想を伝える間もなく波に消された。


「ねぇ」

「何ですか?」

「また噛んで欲しいって言ったら嫌かな?」

「……昨日、麗奈先輩に噛ませましたよね?」

「バレてたんだ」


麗奈先輩の目の下のクマと愛花先輩のTシャツから察していた。

私が愛花先輩の指を舐めたからそうなったんだ。


「昨日何かあったんですか?」

「あれから私、ちょっと変になっちゃって、いつもみたいに麗奈に噛んで貰ったんだけど、今度は麗奈が変になっちゃって大変だったんだ」

「そうだったんですね」


変になったと言うのは興奮したという意味だろう

いつもみたいに噛んで貰ったと言っているが、ベッドの上で噛んだりなんてしたら、いつもと違って興奮してしまうと思う


「私が噛むのは良いんですけど、麗奈先輩が悲しみませんか?」

「悲しむのかな……」

「悲しみますよ。愛花先輩のことが好きだから変になっちゃったんですよ」

「そうかな。そうだと嬉しいけど、もう恋愛はしないって決めてるんだ」

「何故ですか?」

「うーん、その話をするのは噛んで貰う時で良いかな?」

「はい、お腹を空かせときますね」

「どうしてお腹を空かせるの?」

「重そうな話だから胃を開けとこうかなって」

「ふふっ確かにお腹いっぱいになると思うよ」


遠くから私と愛花先輩を呼ぶ声が聞こえてきたので振り返る。

どうやらスイカ割りをするらしい


「行きましょう」

「最後にもう一個お願いしても良いかな?」

「何ですか?」

「私にどんな過去があっても嫌いにならないで欲しいの」

「一緒に罪を背負うって言ったじゃないですか、どんな過去でも受け入れますよ」


返答の代わりに愛花先輩が砂に何か文字を書いたが、それはすぐに波が連れて行ってしまった。


スイカが置いてある所に行くと綾坂にタオルで目隠しをされ、身体をぐるぐる回される。


「あれ?棒がないナー」

「別荘から持ってきましょうか?」

「問題ないわ」


ばーんと音がしたので、びっくりして目隠しを外すとスイカが割れていた。

後から聞いた話だと麗奈先輩が踵落としで割ったらしい

私はなんで目隠ししたんだよ


粉々になったスイカを食べた後に最後にもうひと泳ぎしようという話になる。

浮き輪を腰に装着した所で星七先輩が全く動く素振りを見せていないことに気づいた。


「星七先輩は泳がないんですか?」

「私はパス。髪型崩れるし」


そう言えば星七先輩は一度も海に入ってないような


「泳がないのは構いませんが、人の家の使用人を使うのはよして下さい」


麗奈先輩が星七先輩に注意した。

さっきから彼女はビーチチェアに寝そべって、トロピカルジュースを飲みながら詩織さんの家のメイドさんに扇がせている。


「べつに良い、後輩の物は私はのもの、後輩のメイドも私のもの」


生意気発言だ

後輩として先輩を躾けないといけない

綾坂も加わって三人がかりで星七先輩を椅子ごと持ち上げて海に投げ飛ばす。


「み、水着脱げた!」


なんか言ってるがお色気要因だから気にしなくて良いと思う


帰りのリムジンの中、綾坂はもう次の予定を立て出した。

麗奈先輩は相変わらず炭酸水をがぶ飲みしている。


「ねーナギっち、今度カラオケ行こうよ」

「いいよ」

「スポッチャも行こ」

「いいよ」

「お祭りも行こ」

「お祭りは先約があるんだよね」

「え、誰と!?」

「お姉ちゃんとだよ。一緒に来る?」

「うーん、やめとく」


綾坂と姉は顔見知りなのだが、二人が喋っている所をあまり見たことがない

三人で夏祭りに行っても気まずそうだし、綾坂が断るのも無理はないか

まぁ私と姉でも気まずいんだけどね!


「貴女たち、遊ぶのは良いけど部の活動も忘れないようにしなさいよね」

「部の活動とは?」

「夏休みに児童施設や老人ホームの訪問をするって言ったじゃないの」

「なんかボランティア部みたいですね」

「ボランティア部よ」


麗奈先輩は呆れながらもう一本炭酸水を開けた

変な所で常識が無い




家に帰ってくるとすぐに姉が出迎えてくれた


「電話しても出てくれないからお姉ちゃん心配したんだよ?」

「疲れたから早めに寝ただけ」


前髪の髪留めの位置を直しながら答える。

荷物を置きに二階の私の部屋に入ると姉もついて来た。

ちょうど良いからお土産を渡すことにする。


「これお土産」

「わぁ綺麗な貝殻、ありがとう」

「耳に当ててみてよ」

「……奈凪ちゃんの音がする」

「波の音でしょ」

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