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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第Ⅷ章 崩れ始める世界

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第9話 過去の事件とロザリオ

(なんか様子がおかしいぞ……そう言えば、レアさんが奇妙なことを言っていたな……聞いてみるか?)


 ヒイロの慌て方に不信感を抱いた時だった。以前レアが話してくれた言葉が冬夜の脳裏に浮かび、思わず口に出してしまう。


「そういえば、母さんに関して思い出した事があるのですが……」

「思い出したこと……ですか? どんなことでしょうか」


 冬夜の言葉を聞いてヒイロの顔が一瞬曇った。しかし、すぐに笑顔で聞き返す。


「ありがとうございます。母さんの主治医で、小さい頃からの友人だという方から聞いたのですが、子どもの頃に何か()()に巻き込まれ、その人のご両親に保護されたと聞きました……もしかして、ヒイロさんなら何かご存知ありませんか?」

「え……事件……ですか……」


 冬夜の問いかけを聞いたヒイロの表情が一変する。先程までの取り繕った笑顔は消え去り、顔面から血の気が引いて真っ青になり、そのまま固まってしまう。


(あれ? なんで固まった? なにかまずいことを言ってしまったか……)


 ヒイロの変わりように驚き、冬夜が困惑し始めた時だった。


「……あの事件を知っている人がいたんですね。そうなると、私が考えているよりも深刻なのかもしれません」

「ヒイロさん? 何と仰られ……」


 ヒイロの呟きを聞き、冬夜が問いかけた時だった。三人がいる和室の空気が一変し、外から響く虫の鳴き声や風の音が一切聞こえなくなる。


「冬夜くん、なんだか様子がおかしいよ……すごく嫌な感じがしてきてる」

「ああ、そうだな……メイ、何が起こっても俺のそばを離れるなよ」


 心配そうな表情で声を掛けるメイに対し、僅かに体を寄せて声を掛ける冬夜。すぐに視線を目の前にいるヒイロに戻すと、俯いたまま何かを呟き続けていた。


「……私のせいで、ルナを巻き込むことになってしまった。私と出会わなければ、違った人生を歩んでいけたかもしれないのに……でも、ヒイロタイトを託したということは、そういうことだよね」


 俯いていたヒイロがゆっくり顔を上げたほんの一瞬――彼女の瞳が、異様な光を帯びた気がした。


(……え?)


 冬夜とメイはあまりの変わりように言葉を失った。彼女の目は赤く光り、頭には――猫のような耳が生えていた。そして、先程までの友好的な雰囲気は消え去り、まるで獲物を狩るような視線を二人に向けていた。


「ヒ、ヒイロさん……いったいどうされたのですか?」


 恐る恐る冬夜が問いかけるが、ヒイロから返ってきた言葉は予想外のものだった。


「彼女が託したヒイロタイト……本当にふさわしい実力の持ち主か確かめる必要があります」

「何を言っているんですか? そもそもヒイロタイトって何のことか……」


 困惑した冬夜が声を上げると、彼女はゆっくり右手を持ち上げて首についたペンダントを指差す。


「あなたが首から下げている()()()()こそ、私がルナに託した物……何が何でも彼女に奪われるわけにはいかないのです。本当に持つ実力に値するか……私を納得させてみてください!」


 言い終えると同時に手を鳴らすと、地震が起きたかのように家全体が激しく揺れ始める。


「と、冬夜くん、すごく揺れ始めて……」

「メイ、すぐに座卓の下に隠れろ!」

「で、でも、それだと冬夜くんやヒイロさんが危ないよ」

「大丈夫だ……すぐに結界を張るから少しの間だけ避難してくれ」


 指示を聞いたメイは小さく頷くと、すぐに座卓の下へ潜り始める。その様子を見た冬夜は小さく息を吐くと、目を閉じて詠唱を始める。


「うまくいくかわからないが、やるしかない! 闇よ、集え……我が意志を壁とし、深淵の理を盾とせよ――何人も通させない『守護黒域(シャドウ・ドミニオン)』」


 両手を体の前に突き出し、詠唱を終えた冬夜がゆっくりと目を開ける。首から下げたロザリオの中心が、彼の言葉に呼応するように輝き始める。次の瞬間――冬夜の足元に影が集まり始めると渦を巻き、二人を包み込むように円形の結界を形成していく。


「ふふふ……ちゃんと闇魔法を使いこなしているところを見ると、彼女が託したというのは間違いではなさそうですね」


 漆黒の結界が冬夜とメイを包み込む様子を見たヒイロは、嬉しそうな笑顔を浮かべながら呟く。するとすぐに険しい顔になり、目を細めながら言葉を続ける。


「しかし、本番はこれからです……本当に後継者としてふさわしいのか、この目で確かめるまでは!」


 大きく息を吐いたヒイロが目を閉じる。すると空中に一筋のヒビが入るとガラスが軋む音が響き、景色が歪み始める。


「さあ、見せてください……あなたの持つ真の力を!」


 宣言をするかのように声を上げ、目を見開くと三人を取り囲んでいた空間が音を立てて崩れ落ちる。しばらくすると、大きな地震のような揺れと轟音が収まり始めると、冬夜がゆっくり目を開ける。


「揺れが収まったみたいだな……一体何が起こったんだ?」


 ゆっくり目を開けた冬夜が周囲を見渡すが、自ら張った結界の壁に阻まれて何も見えなかった。


「あ、そうだった。咄嗟に結界を張ったことを忘れてた……そんなことより、メイは無事……って、いってぇ!」


 慌てて立ち上がった冬夜が自分で張った結界に頭をぶつけ、悶絶していると足元から声をかけられる。


「冬夜くん、大丈夫? すごく鈍い音がしたけど……」

「ああ、大丈夫だ。自分で張った結界のこと忘れてた」

「ふふ、おっちょこちょいなんだから」


 口元に手を当ててほほ笑んでいるメイの様子を見て、自然と笑みがこぼれる冬夜。

 しかし、この時彼はまだ知らなかった――この直後、思いもよらぬ事態に巻き込まれていくとは……

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