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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第Ⅷ章 崩れ始める世界

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第5話 母の古い友人『ヒイロ』

(ど、どういうことだ? 母さんの友人のはずだろ……なんで、俺たちと変わらない容姿をしているんだ?)


 目の前に現れた人物に、口を半開きのまま固まってしまう冬夜。母親の友人とは思えない幼さが残る顔、吸い込まれてしまうような真紅の瞳に長い銀髪。


(おかしいだろ、いくらなんでも若すぎる……だけど、この人から発せられるただ者ではない空気は、なんなんだ?)


 その幼い見た目からは想像できないほど、修羅場をくぐり抜けてきたような雰囲気を感じさせる。あまりのギャップに冬夜が戸惑っている様子を見て、ヒイロは苦笑いを浮かべて話しかける。


「驚かせてすみません……突然訪ねてきたらビックリしますよね」

「あ、いえ……俺の方こそ何も言わずにすみません……えっと、ヒイロさんでよろしかったでしょうか?」

「はい。ヒイロと呼んでいただいて結構ですよ」


 困惑した様子の冬夜を見ると、優しい笑みを浮かべているヒイロ。すると隣に立っていたメイが心配そうな顔で、声をかけてきた。


「冬夜くん、どうしたの? 急に固まっちゃったけど……」

「あ、ああ。なんでもないから大丈夫だ」

「ほんとに? また一人で抱え込もうとしていないよね?」


 顔を覗き込みながら鋭い言葉をかけるメイに対し、なんとか笑顔で返す冬夜。


「何を言ってるんだよ。気になることがあったら、ちゃんと相談するって約束しただろ?」

「うん。気のせいだとは思うんだけど、一瞬だけ顔が曇ったような気がしたから……」

(いったいどうしたんだ? 今日のメイ、やけに鋭くないか?)


 核心を突くような言葉を投げかけられ、顔が引きつる冬夜。


(マジかよ……い、いや、まだ気づいているわけじゃなさそうだし、ここは話題を変えて気を逸らせないと)

「そうだ! お客さんにメイのことも紹介しないといけないよな」

「うん。私もご挨拶したかったし、お願いしてもいいかな?」


 冬夜の言葉を聞くと、花が開いたような笑顔で答えるメイ。そんな彼女の様子を見ると、冬夜はゆっくり腰を下ろしてヒイロに向き直って話しかける。


「大変失礼しました。ご挨拶が遅れましたが、天ヶ瀬冬夜と申します。わざわざ訪ねてきていただき、ありがとうございます。隣りにいるのは学校のクラスメイトで大切な友人です」

「はじめまして、ヒイロさんでよろしかったでしょうか? メイといいます、冬夜くんのクラスメイトでいつも仲良くさせてもらってます」


 深々と頭を下げる二人を見ると、小さく息を吐いて話しかける。


「ふふふ、ご挨拶ありがとうございます。こちらこそ連絡もせず、突然訪ねてきてすみません……」


 先程までの笑顔は消え、申し訳なさそうに頭を下げるヒイロ。頭をあげた冬夜とメイは、慌てて声を掛ける。


「あ、頭を上げてください! せっかく来てくれたのに謝る必要なんて無いですよ!」

「そうです! ソフィーと仲良くお話して頂いたと聞きました。こちらこそありがとうございます」


 お互いが頭を床に擦り付ける異様な光景に対し、静かに見守っていたソフィーが声を上げる。


「みんなどうしたの? 何も悪いことをしていないよね?」


 不思議そうな顔をしたソフィーが三人に話しかけた時だった。


「ぷっ、あはは! ソフィーの言う通りだよ。挨拶しただけなのにな」

「ふふふ、本当だね。楽しくお話しようと思ったのに、なんでだろ?」

「ソフィーさんの言うとおりですね」


 頭を上げた三人がお互いを見ると、一斉に吹き出しながら笑い声を上げる。


「みんな、どうしたの? なにか面白いことでもあったのかな?」


 何が起こったのか理解できないソフィーが首を傾げていると、冬夜とメイが笑いながら話しかける。


「あはは、ソフィーは気にしなくても大丈夫だ。むしろお礼を言わなきゃいけないくらいだな」

「ふふ、ソフィーのおかげなのは間違いないもんね。ありがとう」

「え? なんだかわからないけど、みんなが笑顔になって良かったよ!」


 何のことかはわからないが、二人に笑顔が戻って嬉しそうにその場で飛び跳ねるソフィー。三人の様子を見ていたヒイロは目を細めながら、思わず本音が口からこぼれる。


「三人を見ていると、本当に心が暖かくなる……私がルナと一緒だったら、こんなふうに笑っていられたのかな?」


 すると何かを感じ取ったソフィーがヒイロのもとに駆け寄って声を掛ける。


「ヒイロさん、どうされましたか? 今すごく寂しそうな感じがしたので……」

「え? そんなこと無いですよ。ソフィーさんたちの様子を見ていたら、すごく心が暖かくなりまして……少し昔のことを思い出してしまいました」

「そうなんですね。私にできることがあれば、何でも言ってくださいね!」

「ふふふ、ありがとうございます」


 優しい言葉を聞き、ヒイロの表情に少しずつ明るさが戻り始める。その様子を見ていた冬夜が、何かを思いついたようにソフィーに話しかける。


「ソフィーは本当にすごいな。そうだ、せっかくだから全員のお茶を入れてほしいのだが、お願いできるか?」

「うん、いいよ」

「ありがとう。ソフィーの入れてくれるお茶が一番美味しいからさ」

「ふふふ、頑張ってとびきり美味しくするね! ヒイロさん、すぐにお持ちしますから待っていてくださいね」


 ソフィーが嬉しそうな笑顔を浮かべて、キッチンに向かって歩き始める。すると先程までの和やかな雰囲気から一変し、奇妙な緊張感が漂い始める。


(なんだ? 胸の奥がざわつく。すごく嫌な感じだ)


 はたして、笑顔を浮かべたヒイロは何の目的で二人の前に姿を表したのだろうか?

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