第二十五話
「いやあ今回の討伐依頼はやりやすかったぞ。どうだお前ら俺らと組まないか」
「いいなそれ。俺らと組めば依頼もより取り見取りじゃんよ」
オルガさんとレグザさんが私とアキアースにカイーナさんを勧誘してくる。でも、私たちにはしなきゃいけないことがあるし。こうして人数増えての旅も楽しいだろうけど。
「すみません、俺とカナには目的があるんです。あまり人に知られたくないので、せっかくですが」
「そうかい。なら仕方ねえな。またなんかの依頼で組むことになったらそん時はよろしく頼むぜ」
「じゃあな」
わ、あっさり引き下がるんだ。もっとこう、そう言わずによとかいって食いつくかと思ったんだけど。でもああそっか。あんまりがっつくとトラブルになりそうだもんね。これからも良好な関係を気づきたいならそれはやっちゃいけないことだし、なによりオルガさんとレグザさんは短い付き合いだったけど、そんなことしそうな人には見えなかったもの。こういうふうにあっさりした別れの方が似合ってるよね。
そしてオルガさんとレグザさんと別れた後、私はあることを考えていた。
それは私とは違う魔法使いに会うっていうこと。だって、混合魔法はできたけど、これから先、碌な知識もないまま旅するのもどうかと思うんだ。今のままじゃ駄目だよね。
カイーナさんの知り合いだっていう火の魔法使いに会えないかな。手がかりを探すのがもちろん一番大事なのはわかってるけど、まだまだ見つからないし依頼だってどんどんこなしていくし、魔法を使いこなすのも大事なことの一つだって思う。それに、魔法を使いこなせなきゃ異世界転移の魔法なんてあることがわかったとしても、きちんと使えるかわからないしね。
うん。カイーナさんにお願いしてみよう。
「ではわたしもこれで……」
「あの、カイーナさん。お願いがあるんです。聞いてもらってもいいですか」
「なんでしょう。わたしでよければお聞きしますよ」
疑問符を浮かべるアキアースを置いといて、私はではわたしもこれでと行こうとするカイーナさんを呼び止める。カイーナさんもなんですかと首をかしげて私の言葉を待ってくれた。引き受けてくれるかな。
「あの、カイーナさんが言ってらしたお知り合いの火の魔法使いさんにお会いしたいんです。実は私、流れの魔法使いで。魔法は独学なのでたいした知識がなくて。だから、他の魔法使いに会って見識を深めたいなって思って、それで」
「それでわたしに頼んだと」
「はい」
「いいですよ。彼はジャグダンにいます。私が彼に引き合わせましょう」
「ありがとうごうざいます! アキアース。これも手がかりに必要なことなの。お願い」
「ああ、そういうことなら俺は構わないよ。カイーナさんよろしくお願いします」
「任されました」
やった。これで初めての魔法使いに会える。随分簡単に引き受けてくれたなあ。いい人だ。
「ただ今からだと旅車ももう出てはいませんし、明日の朝にしましょう」
そう言ってカイーナさんは歩いて去っていった。
「じゃあ俺たちも宿屋へ戻ろうか」
「うん」
カイーナさんを見送って私たちも宿屋へ帰ることにする。
宿屋の一階で夕食を終えた後に部屋へ戻ってきた私は、ベッドに座ってふうと一息をつく。そこでふと思い出す。そうだ。火の魔法使いさんに会う前に、あの私の魔法の本をまた見てみようかな。もしかしたらなにか書いてあるかもしれないし。
「なにか書いてあるかな」
パラパラとページを捲っていくと……あ、あった! なんだろう、なにが書いてあるんだろう?
「えと、なになに……死の魔法? え、死?」
なにそれ。死?
対象を死へと追いやることのできる禁断の魔法。対象にされた者の生命力の強さは関係ない。なすすべもなく冥界へと送られるだろう。この魔法さえあればお前はこの世界で勝者も同然だ……なにこれ。なんでこんな魔法が急にでてくるの。それになにこの書き方。まるで私に話しかけているかのよう。魔法の名は……。
「キリ……だめ。言っちゃだめ。怖い」
キリト。それがこの魔法の名前。危ない。誰にもかけるつもりはないのに言っちゃうところだった。いやいや、かけるつもりはないっていうか、こんな魔法かけちゃ駄目でしょ。でも魔物相手だったら試してみる価値はあるかな。怖いな、なんで今この魔法なの? どこかで使う場面でもでてくるのかな。そんなのないほうがいいに決まってるけど。
なんか嫌なもの見ちゃった。今日は悪夢見そうでやだなあ。でも早く寝てもう忘れちゃったほうがいいよね。あ、他にはなにか載ってないかだけ見ておこう。
「うーん。ないか。じゃあもう寝よう」
嫌な感じで胸が一杯で不安だけど、私は布団に入ってもう寝ることにした。ちゃんと寝れるかな。
翌朝。
「おはようカナ、元気ないねどうしたの、寝不足?」
「うん、そんなところ。じゃあ朝食終わったらカイーナさんのところに行こうか。たぶん冒険者ギルドにいるよね」
朝起きたらなんだか寝たりない。悪夢は運よく見なかったけど、なんだか眠い。考えないようにしようと思ったけど、やっぱりそうそうすぐできるもんじゃないよね。あんな魔法見ちゃったら。だって、私はもう魔法使いなんだもの。実際に使えちゃってるんだもの、もし寝言で言っちゃってたらとか考えちゃうとさ、なかなか眠れなくなるよ。
はあ、眠い。早く考えないようにしたいなあ。
朝食を終えた後に向かった冒険者ギルドの入り口にカイーナさんが立っていた。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした。別れる時に待ち合わせの場所を言ってなかったので、ここで会えてよかったです。待っていて正解でした」
「おはようございます、カイーナさん。きっとここにいるだろうなとは思っていたので」
「おはよう、カイーナ。じゃあさっそく旅車の発着場に行こうか」
三人揃って発着場に行くと既に数人が乗り込んでいるところだった。旅券代わりにそれぞれのギルド証を見せて料金を払うと、私たちは後ろから二番目の旅車に乗り込んだ。今回の旅車は四連結みたい。一番後ろは護衛の冒険者の人が乗っているみたい。
「カイーナさん。お知り合いの火の魔法使いさんってどんな方なんですか」
「そうですね。実は彼は聖職者なんです。旅の神父をやっていましいてね、布教活動に力を入れているんですよ。彼の得意な魔法は浄化の炎といいまして、主にアンデットに効果が高い魔法なんですよ」
「浄化……さすが神父さんって感じですね。旅のですか、どうやってお知り合いになったんですか?」
「幼馴染なんですよ」
ふふと笑うカイーナさん。何か思い出し笑いでもしたかのよう。
「幼馴染ですか」
「ええ。昔から彼は堅物でね。女性から人気もあるのに一向に気づかない鈍いところもありますが、純朴な性格で人柄もいいんです。カナさんやアキアースさんも会ったらきっと気が合いますよ」
「それは楽しみだな。でも旅の神父か……どこかで似たような人に会ったような?」
そうだっけ? どこかで似た人に会ったかなあ。忘れた。
その後もいろいろと話しをしながら旅車に揺られて、なかなか快適な旅だった。人が増えると話題も増えて、飽きてきた旅車もまた新鮮な気分になるものなんだな。カイーナさんに感謝。




