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  作者: ちゅんちゅん
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第十四話

 宿をとって休憩した後、私達は記録閲覧室に来た。望み薄だけど、やれることはやっておきたいし。もしかしたらなにか見つかるかもしれないしね。

「私はこっちを探すね」

「俺は向こうに行くよ」

 今回もアキアースが手伝ってくれる。記録閲覧室はどこも端末があって、そこのデータベースで調べられるんだけど、本もたくさんある。端末で調べたい人もいれば本で調べたい人もいるからなんだって。私はパソコン使ってたから端末の方が調べやすいかな。アキアースもそうみたい。

 でも。四時間ほど端末にかじりついて調べたけど、やっぱり見つからなかった。わかってはいたけど、やっぱりどこかでは期待してたのかな、がっかりする。

「もう少しだけ探そう。前にも言ったけど、もし記録閲覧室全部が駄目でも、それはその時に考えればいいことだよ。難しいけど弟子入りもあるんだし」

「うん」

 アキアースがそう言ってくれる。ありがとう、一人じゃないって心強い。うん、もう少しだけ探そう。

 それから少しして。

「カナ、ちょっとこっち見て。長距離移動の魔法かどうかはわからないけど、こんなのがあった」

「え?」

 隣の席のアキアースが見ていて端末を覗き込むと、私の目に映るこちらの世界の象形文字が日本語に変換されていく。

「魔法の本。世界には魔法の本がある。本自体が意識を持ち、読む者に語りかけてくるのだ。その本には強大な力があり、所持者の心を蝕むか、または巨万の富を築く糧となる。だが、本の居場所は誰も知れず。持ち主を選ぶ本には自由に移動できる術がある」

「自由に移動ってところが気になるだろ」

「うん。私の知ってる移動の魔法はただ、物を少しだけ浮かせて持ち運びを便利にするものだけなんだけど、自由にって、なんかそれとは違う気がする」

「そんな魔法使えるんだ。すごいね、今度見せてよ。でも、自由に、か」

「うん。私、この本探したい」

「そうだね、この本を見つければ何かわかるかもしれない。意思を持つってあるからには会話らしきものができるのかもしれない」

 本が意思を持つ。ものすごく気になる。私の持っている魔法の本はそれとは違うのかな。例えば真っ白なページに急に文字が浮かび上がるとか、そういう特徴は……書いてないか。なにか特徴になるもの載ってないかなこの資料に。

「時折祭壇に戻る……?」

「祭壇か。場所は……ポールアーム山の山頂、だってさ。行く?」

「行く! 登山はしたことないけど、頑張る」

 ポールアーム山って、この王都の裏にある大きな山のことじゃない。すぐ近くだ。諦めかけたけど初めての手がかり。大変でも登らなくちゃ。

「じゃあ登山用の装備を整えないとね。悪いけど、荷物の大部分はカナのギルドの証に入れてもらいたいんだけどいい。けっこうあるんだ」

「もちろん。アキアースの好きに入れてくれていいよ。私準備とかわからないし」

 雑貨屋に来てアキアースがまず手に取ったのは靴。足首を覆って固定するハイカットタイプの軽登山靴で、次に革のマント。これは防寒兼雨具代わり。山の天気は変わりやすいからなんだって。次に手袋。これも革の手袋。杖。

 杖は足場の悪い場所や下りに使うんだって。私はアキアースがくれた杖を使う。後は水筒。でもこれは普段使ってるので十分。かと思ったら余分に二つ持っていくってアキアースが言い買うことに。どうせ指輪の中に入るんだしいっか。重さも感じないしね。

 他は旅するときに必要なものと同じだから、登山靴、マント、アキアース用の杖、手袋、携帯食料の買い足しで終わりかな。

 携帯食料はほしにくを基本にスコーンや固形スープの元を持っていく。魔法で加工して作られてるからけっこう値が張るんだよねこれ。オニオンスープと鶏がらにコーンスープの元を選んだ。昼食用のパンも忘れずに買う。これは栄養価の高いクルミ入りパンを選んだ。

「こんなものかな」

「わ、全部出すとけっこう量あるね」

 買い物が終わって一度宿屋に戻り装備のチェック。ベッドの上に全部出すとけっこうな量があった。これだけの量がこの小さな指輪に入るのって本当すごい。

「ポールアーム山は標高二,一〇七ジレあるからね。カナは初めてだしゆっくり登ろう。歩き方も山に着いたら教えるから。多分、休憩も入れたら半日はかかるだろうし、山頂で一泊して明後日にこっちに戻る感じになると思う」

「そんなにかかるんだ」

 へー、登山って歩き方もあるんだ。知らなかった。大丈夫かな私。

「今日は早めに休んだほうがいいと思う。明日は早いから」

 じゃあ、とアキアースが私の部屋を出て行く。そうだね、明日は早いからまだ夕方だけど早めに休んでおこう。

 でもその前に。もう一度、魔法使いギルドの詳細を読んでおこう。

 まず、ギルドの証は魔力を流し込むとその本人にしか基本、扱えなくなる。そして指輪には空間収納機能が付いていて、容量は一〇畳ほどの部屋くらいある。これはパーティを組んだ者に許可を与えればその者も出し入れ自由になる、か。

 私はアキアースに許可をだしてあるから、彼は自由の出し入れが出来るんだよね。守ってもらってる分、荷物持ちくらいしたいし彼の荷物も入っているから自由に出来ないと困るもんね。

 えっと、なになに。一度許可を与えると、互いの了承なくしてはその許可を取り消すことは出来ない、か。別にこれはいいか。依頼品は証の中に入れてから転送させることができる。これは前にダグリスルの時に似たので見た。アキアースの冒険者ギルドの証じゃ入らなくて、持って行くのかと思ったら、転送盤っていうのを使ってそれで送ってた。やっぱり容量が違うとこういうところで差が出てくるんだなあ。

 あとは、金預通へお金を預けなくてもいいってことかな。お財布にもなって便利。ちなみに金預通ってのは私の世界でいう銀行。ギルドの証を持っていない市民なんかは、市民登録証に記載されている金預通の口座に現金を預けているんだって。だから、お金を下ろしたいときはそこまで行かないと行けないの。ギルド員にはそれがないから、お財布代わりにギルド証を入手使用とする人が後を絶たないんだって。だかたギルドに入ってからは、定期的に依頼を請けておかないと除籍処分なんだとか。そして、証に入っているものも没収とか。うう、それは怖い。ちゃんと依頼請けないとね。

 次は。ギルドの証は旅券や市民登録証と同じ扱いである。関所、入国証、これ一つでいい、と。

 次。ギルドの証は一度つけると死ぬまで外せない。え、外せないのこれ!? ほんとだ……でも、銀細工の指輪に緑の石でお洒落だしまあいっか。なくす心配もなくなるし。

 えっと、あとは? 依頼の際起きた事故等は自己責任。死ぬことも視野に入れ最良の選択をすべし……おっかない! この世界には保険とかないのかな。怪我したら病院に行くんだろうけど、健康保険とかないみたいだし、全部自腹なんだ。あ、そもそもそういうものがないってことは、保険なんて考える必要がないってことだよね。ふーん。

 そうだ。さっき思ったけど、依頼本当に早く請けておかないと。定期的の、その期間なんだけど九〇日なんだよね。もう魔法使いのギルド証を受け取って三一日。一日目にダグリスルの依頼してから三〇日過ぎてる。あと六〇日で除籍になっちゃうし、アキアースも多分同じ期間なんだろうし明日にでも言ってみよう。ギルドは違うけど、掟は多分似たり寄ったりだろうし。

 討伐系もいいけど、それ以外の依頼も請け負ってみたいな。その辺も言っておこう。別に戦うのが嫌って訳じゃないけど、私、この世界のこと知らなさ過ぎるから、色々なの経験しないと駄目だと思うんだ。じゃないと、いつまでもおんぶに抱っこで足を引っ張ったままになっちゃう。それだけは嫌。

 うん、だから、明日の登山も頑張ろう。


登山関係の装備はネットで調べました。ですが、鵜呑みにしないでいただけると助かります。

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