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ハードモードな中央ユーラシアに転生したので、生きることを目標とします 〜 普通中世ヨーロッパじゃないの!?劣悪な衛生や環境を乗り越える、異世界・非日常ファンタジー ~  作者: 山下オクトパス
第一章:転生と「水」への絶望

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01-06.脳内検索

部屋の窓から差し込む朝の光の中、僕は絨毯の上に胡座をかいて目を閉じた。

外からは、羊たちが移動するメェメェという鳴き声や、父さんたちが農具の準備をする乾いた音が聞こえてくる。


いつもと変わらない、オイアクス村ののどかな朝の音だ。



でも、僕の頭の中はいつもとは全く違っていた。


「……よし。まずは、あの『雲』について整理してみよう」


静寂の中、僕は小さく呟き、意識を自分の内側へと向ける。

そう『雲』だ。


おじさんと一蓮托生になってから、僕の頭の少し上の方には、もやもやとした不思議な知識がいっぱい詰まった分厚い『雲』のようなものが存在している感じがしている。



あの白い空間でおじさんと繋がって以来、起きている今の状態でも、僕が「知りたい」と思ったことに対して、この『雲』から勝手に「ぼんやりとした知識」が降ってくるようになっていた。

試しに、この部屋の壁である『日干しレンガ』について考えてみる。

すると、頭の上の雲から、おじさんの世界の言葉や断片的な情報がスッと脳内に降りてきた。




――『メソポタミア?』『古い時代のもの』『泥を固めて干したやつ』『雨にはめちゃくちゃ弱そう』。


(メソポタミア? なにそれ……。でも、おじさんはあんまり詳しく知らないみたいだ)



言葉が聞こえるわけじゃないけれど、僕の知らない単語や知識の断片が勝手に入ってくる。

なんだか不思議な気分だった。

おじさんの知識は、偉い学者のような難しいものではない。



でも、この僕の考えと混ざり合うことで、色々なものが違って見えてくる。

そして、何より向き合わなければならないのが、あのことだ。

おじさんとの思考共有で思い知らされた、あの水の恐怖。


「……『水』」


僕は意識して、頭の中の雲にある「僕たちがいつも飲んでいる水」について、もう一度思い返してみた。

貯水池の水をただ置いただけの上澄みには、目に見えない悪いモノがうじゃうじゃと潜んでいるという、あの恐ろしい事実。

思い出すだけで、再び背筋にゾクゾクと冷たいものが走り、胃の奥がギュッと縮み上がるような吐き気を感じた。



あの水瓶の水をそのまま飲むことなんて、もう僕の体も本能的に拒絶してしまっている。


(……いつか、家族もあの水で死んでしまうかもしれない)



さっきの賑やかな朝食の風景。

家族の笑顔が失われることだけは、絶対に嫌だ。


「自分が飲む水……いや、家族が飲む水は、なんとかしなきゃいけない」


静かな部屋の中で、僕は一人、確固たる決意を新たにしていた。

大体の方向性は見えているけれど、どうやってあの泥水を綺麗にすればいいんだろう?。




——と、そこで僕は首を傾げた。


「……あれ? そういえば」


昨日の夜、お母さんが茶碗で差し出してくれた『水』を見た時は、水を口に含む前から頭の中で強烈な警告が鳴り響いて、頭痛が起きた。

でも、今朝の朝ごはんの時はどうだっただろう。

食後に飲んだお茶(チャイ)



あれだって、昨日の水と同じもとはあの貯水池から汲んできた水を使っているはずだ。

でも、今朝お茶を飲んだときには、おじさんの拒絶反応や頭痛はまったく起きなかった。

おじさんも頭の中で、この暮らしは悪くないなとしみじみ呟いていたくらいだ。


「……どうしてだ? 水だとダメなのに、お茶だと大丈夫だったのは……」


僕はぶつぶつと呟きながら考える。

朝ごはんに出た水分と、水瓶のただの水。

その違いはなんだろう。


「お茶っ葉や具材が入っていたから……? いや、違う」


お母さんやグルスランおばあちゃんが、厨房で作っていた時のことを思い出す。

パチパチと糞炭や枝を燃やす音。

香ばしい煙。



そして、ぐつぐつと煮え立つ鍋。

すると、頭の中の雲からスッと新たな知識の断片が飛び込んできた。




――『火』『沸騰』『熱で悪いモノが死ぬ』。


「……『火』だ。火にかけて、熱くしたからだ」


火を通してぐつぐつと沸騰させれば、おじさんが恐れていたあの悪いモノたちも、みんなやっつけることができる。

だから、ただの水だと激痛が走るのに、お茶なら普通に飲むことができたんだ。


「だったら、簡単じゃないか!」


僕はパッと顔を明るくした。

これからはただの泥水をそのまま飲むのをやめて、家で飲む水を全部、一度火にかけて沸かしてから、お湯として飲むようにしたらどうだろう。

これなら、魔法なんて使えなくても、お母さんにお願いすればすぐにでも始められるはずだ。



僕が「お腹を壊さないために、これからはお湯を飲みたいんだ」と言えば、きっとお母さんだって分かってくれる。


「よし、お母さんに相談してみよう!」


見えない恐怖に対抗する手段を見つけた気がして、僕は弾むような気持ちで布団から立ち上がった。

我が家の頼もしいお母さんなら、きっとこの提案を快く受け入れてくれるに違いないと、この時の僕は信じて疑っていなかったのだった。


最初なので、今日は一気に投稿してみました。

明日からは少しずつのんびり投稿していきます。よろしくお願いします。

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