表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハードモードな中央ユーラシアに転生したので、生きることを目標とします 〜 普通中世ヨーロッパじゃないの!?劣悪な衛生や環境を乗り越える、異世界・非日常ファンタジー ~  作者: 山下オクトパス
第一章:転生と「水」への絶望

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/25

01-04.穏やかな朝

翌朝、目を覚ますと、頭の奥でガンガンと鳴っていた痛みはすっかり嘘のように消えていた。

視界もクリアになり、身体のダルさもない。



「……夢、なのかな。だけど、頭の奥におじさんがちゃんといる感覚がある……」



布団の上で寝返りを打ちながら、ポツリと呟く。

あの不思議な白い空間で、お互いの考えが筒抜けになった生々しい感覚。

頼りないけれど不思議な知識を持つあのおじさん――僕の『相棒』と交わした約束の余韻と、家族の飲む水を僕たちの力でなんとかしなきゃいけないという切実な決意だけが、胸の奥にしっかりと残っていた。



隣を見ると、双子の弟であるハッサンとフサンが、丸まってスースーとまだ気持ちよさそうに寝息を立てている。

四男のナスルはまだ三歳と幼いため、両親の部屋で寝ているはずだ。

僕は布団から這い出し、中庭に降りようと、近くにあった上着を一枚羽織った。



季節は春になったばかりで、日中は暑くなるが、家の中や朝の外はまだ少し肌寒いからだ。

部屋を出て、土の階段を下りる。

中庭に出る前に厨房の前を通ると、パチパチと火が爆ぜる音が聞こえてきた。



乾燥した家畜の糞炭と綿花の枯れ枝を燃やしている匂いだ。

母のムフバットと、祖母のグルスランがお湯を沸かしているのが見えた。



「おはよう」



僕が声をかけると、火の加減を見ていたお母さんが振り返り、パッと顔を明るくした。



「おはよう、トッシュ。もう大丈夫なの?」


「うん。心配かけたみたいでごめんね」


「いいのよ。顔色も良さそうだし……もう朝ごはんは食べられそう?」


「うん、大丈夫だと思う。すごくお腹すいた」



話をしていると、中庭の入口のほうから、家畜の世話や小さな畑の作物への水やりをしてきたのだろう父のプラートが顔を出した。

日焼けした逞しい腕で額の汗を拭いながら、僕を見て少し安堵したように目を細める。



「もういいのか?」


「うん」


「そうか。では、食事をしながら少し話をしよう」


「うん、わかった」



厨房では、料理の準備が大体できてきたみたいだった。

お母さんが、作り置きの冷たいノン(平たい硬いパン)を木の盆に載せながら言った。



「そろそろだから、上から三人……あ、いえ、トッシュはまだいいわ。座っていなさい。あなた、お願いします」



お母さんは弟たちを呼んできてほしいと僕に頼みかけて、途中で父さんに頼む相手を変えた。

どうやら、丸一日も寝ていた僕は、まだかなり心配をかけているみたいだ。

少し心苦しい気もするが、ここは素直に従って大人しく座っておこう。



やがて、中庭の食卓に家族全員が揃った。

昨日会わなかった祖父のオモや、さっきまで厨房にいた祖母のグルスランも席に着いている。



「もう元気なようじゃな。まぁ、七歳まで大きくなれば、よほどのことが無い限り大丈夫だろう」


立派な白い髭を蓄えた祖父のオモが、僕を見て深く頷いた。



「そうね。顔を見たけど、なんとなく大事には至らない感じがしたさね」


祖母のグルスランも、鋭いながらも優しい目で僕を見つめる。


「お前がそういうならそうなんだろう。ほら、もう食事にしよう」


家の長である祖父のオモが、目を閉じて両手を胸の前でクロスさせた。

僕たちもそれに倣う。



「神に祈りを」


「「「神に祈りを」」」



その声に合わせて、全員で神への祝福を口にする。

毎日、毎朝の生活のすべてに信仰が根付いている儀式なのに、どこか客観的な不思議さを感じてしまう。

いつもと何も変わらないのに、なんだろう。



やっぱり頭の中にいるおじさんの感覚のせいかな……。

でも、家族のこの声を聞くと、体の芯から安心する自分もいた。

今日の朝ごはんはノン、干しブドウや干しアンズ、ヨーグルトにお茶(チャイ)だ。



食事を食べ始めると、父さんがお茶の器を置き、僕の顔を真っ直ぐに見た。



「昨日のことは覚えていると言っていたが、どうだ? 魔法は授かったのか?」



その言葉に、食卓の全員の視線が僕に集まる。


「うん。先生が言っていた感覚が分かったよ。自分の中で、なにかがパッと入ってきた感じがして……自分は『水』みたい」



「そうか、水属性か」



父さんは大きく頷いた。



「この地域では水属性を賜る人は多いからな。そんなに大量には出せないが、どうしても水が必要な時に水が出せるというのは、水が貴重なこの国では本当に大事なことだ」



「あら、水なのね」



お母さんが嬉しそうに微笑んだ。



「水属性の人は多いわりに、うちの家系や親族にはあんまりいなかったから新鮮だわ」


「そうだねぇ。うちは植物やら砂やら火やら風やらばっかりで、水はなかなか出なかったからね」



祖母のグルスランも、うんうんと頷きながらお茶をすする。



「いいよ、水は。農家になるにしても、街に出るとしても、キャラバン隊になるにしても、なんだろうと水はあるに越したことはないさ」



その大人たちの会話を聞いて、双子の弟たちが目を輝かせた。



「「いいなぁ〜!」」


「早くぼくらもまほうつかえるようになりたいな〜」


「そうだよね〜、ぼくらもまほうをたまわりたい〜」



お母さんが、そんな二人をたしなめるように笑う。


「そうね、だいたい半分くらいの子が賜るものだから……あなたたちは、どちらか一人かしらね? いい子にしていた子が、賜るかもしれないわね」



「え〜! そんなことないよ〜! 神様はそんなところまで見ていないもん、ぜったい〜!」



いたずらっ子のフサンが、急に焦ったような声を出した。



「いい子にしてたらいいんだったら、絶対ぼくだね。フサンはいたずらを辞めないとだめだよ」



ここぞとばかりに、いつもフサンを止めに入るハッサンが揶揄った。


■この時点での登場人物

・主人公(長男):トッシュ

・おじさん:????(日本から転生してきた30代?男性)

・父:プラート

・母:ムフバット

・祖父:オモ

・祖母:グルスラン

・次男(双子の兄):ハッサン

・三男(双子の弟):フサン

・四男:ナスル


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ