01-20.信仰の日の朝
おじさんと白い部屋で「簡易ろ過器」の設計図を完成させてから、二日の月日が流れた。
その間、僕は毎朝の水汲みの往復のついでに、貯水池の周辺や乾いた川床から、ろ過の層に使うための綺麗な小石や目の粗い砂をそれとなく拾い集めた。
一番下に敷く布については、お母さんに「ちょっと物置で作業をするときに使いたいんだ」と正直にお願いしたところ、「それならこれをお使い」と、裁縫で出た麻や綿の布の端切れを快く数枚分けてもらえた。
材料はすべて、中庭の物置の隅にある口の欠けた古い壺のすぐ近くに、静かに隠し終えている。
...そして迎えた、一週間の七番目にあたる日――「信仰の日」。
第一の曜日から第六の曜日まで泥に塗れて働いてきた村人たちにとって、この日はすべての仕事を止めて神様に祈りを捧げる、一週間で最も特別で聖なる休日だった。
「ほら、フサン! 動くと襟元が曲がってしまうでしょう。せっかく綺麗に洗濯した一張羅なんだから、今日くらいは大人しくしていなさい」
中庭では、お母さんの小言が朝から響いていた。
「だってさぁ、お母さん。この服、お袖の刺繍がチックチクして痒いんだもん……」
三男のフサンが口を尖らせて、いつもと違う白い上着の袖を引っ張っている。
隣では、同じく白い正装に身を包んだ次男のハッサンが、珍しく神妙な顔をして髪を整えられていた。
この日は、普段の農作業で着る泥だらけの服は許されない。
平民の農家である我が家であっても、男性陣は全員が、お母さんやバショ姉さんが心を込めておまじないの刺繍を施してくれた綺麗な「正装」へと着替えるのだ。
七歳の僕も、襟元に美しい幾何学模様が並ぶ白い上着に袖を通していた。
『へえ……普段はみんな泥まみれで羊のウンコ集めてるのに、今日ばかりは随分とピシッと決めるもんだな。まるで、日本の日曜日の朝に一張羅を着てお出かけする家族を見てるみたいだ』
脳内のおじさんが、感心したように呟く。
「おじさん、神様の前に行くんだから当然だよ。……あ、父さん、おじいちゃんも準備ができたみたい」
家の長である祖父のオモが、立派な白い髭を蓄え、最も格式の高い刺繍入りの上着をまとって部屋から出てきた。
父のプラートや、朝早くから実家にやってきたソディル義兄さんも立派な正装に身を包んでいる。
手短にお祈りを済ませて朝食を終えると、いよいよ男たちが出発する時間になった。
この世界では、男女が共に外を出歩くことは滅多にない。
女性は別の場で似たような集まりを行うためにもう少し後になってから出かけるのだが、幼い三歳のナスルや一歳のディロロムがいる我が家では、子育てや看病、そしてお年寄りの世話のために、お母さんやバショ姉さん、おばあちゃんのグルスランは家でお留守番をすることになっている。
つまり、今回の大きなお祈りに出かけるのは、我が家の男性陣だけだ。
「トッシュ、ハッサン、フサン。迷子にならないようにね」
お母さんが、ナスルを抱っこしながら中庭の門のところで見送ってくれた。
バショ姉さんもディロロムをあやしながら笑顔で手を振っている。
「うん、行ってきます!」
僕たち男兄弟は元気よく挨拶をして、中庭の重い木製の門扉を開け、乾燥したオイアクス村の小道へと一歩を踏み出した。
家を出た瞬間、僕は村全体の独特な雰囲気に、肌が粟立つような感覚を覚えた。
いつもなら、ロバを引く農民たちの怒鳴り声や、家畜の群れが立てる砂煙で騒がしい村の小道が、信じられないほど静まり返っている。
平日に男たちが集まって賑やかに煙草を吸っているお茶屋も、この村唯一の商店も、頑丈な木の扉を閉ざして休業していた。
代わりに道を歩いているのは、我が家と同じように、白い正装に身を包んだ村の男性たちの大きな列だった。
みんな、穏やかな顔でお互いに挨拶を交わしながら、一歩一歩、広場へと歩いている。
僕たちは父さんやソディル義兄さんたちの大きな背中に続いて、いよいよ男たちの祈りの中心地である、あの大きな泥レンガの聖堂へと足を進めるのだった。




