紅茶をどうぞ
シュンはふと、火にかけていたポットを手に取る。
「そうだ、眠気覚ましにコーヒー淹れようと思っていたんですわ。ユキミさんはどうですかい?」
コーヒーと聞いてユキミは一瞬戸惑った。
「こ、コーヒーか。そうか、コーヒー……、か」
シュンは察した。ユキミさんコーヒー飲めないなと。
「ユキミさん、コーヒー苦手?」
「に、苦手なわけない!!」
虚勢を張るユキミだったが、シュンはハハッと笑う。
「ユキミさんは紅茶にでもしときますか。商人さん達からは好きに飲んで良いって言われているんでね」
ユキミはホッとしたように、頷く。
「そ、そうか……。頼む」
シュンは自分の分だけコーヒーにするのも面倒だったので、紅茶を二杯淹れた。
それを見てユキミが尋ねる。
「シュンはコーヒーでなくて良いのか?」
「あぁ、紅茶でも良かったんで。お砂糖はどうします?」
シュンの質問に、ユキミは目を伏せ照れながら返した。
「その、多めに……」
「承知!」
シュンはユキミの為にスプーン三杯紅茶に砂糖を入れてやる。
ユキミはそのコップに注がれた、湯気の出ている紅茶を受け取ると礼を言う。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」
シュンは熱い紅茶をすすった。
「いやー、紅茶も良いもんですね」
「ほ、本当だな」
そう言いながらもユキミは紅茶にまだ口を付けていない。
「あれ? ユキミさんもしかして熱いのダメ?」
「え、あ、その、サヴィ家は代々猫舌だ……」
それを聞いてシュンは大笑いする。
「なんですか、その可愛い一族は」
顔を赤くしながらユキミは呟いた。
「少し、冷やしても良いか?」
「構いませんぜ」
ユキミは氷魔法を手のひらに使い、紅茶を冷ます。
シュンはなるほどとその様子を見ていた。
「便利ですね、氷魔法」
「これぐらいなら、飲めるな」
水色の戦化粧をした唇をカップにちょんと付ける。
「あ、甘くて美味いな」
「そりゃ良かった!」
シュンは紅茶を飲み干すと、その場に寝転がった。
それを見てユキミは焦る。
「け、警備なら変わるから、テントで休むと良い」
だが、シュンは目を開けたまま空を見上げていた。
「もう暖かい季節ですし、虫よけも塗ってある。それに、こうして夜空を眺めるの好きなんですわ」
そう言われ、ユキミも満天の夜空を見上げる。
「ほ、ほんとうだ。綺麗だな」
シュンは手を空に伸ばして言う。
「あの輝く星は一つ一つが宝石だって言われてますけど、どうなんでしょうね?」
「そ、そうだな。どうなんだろうな」
ユキミは相槌を必死に打っている。
「今夜は月が綺麗ですねぇ」
そう言われた瞬間。ユキミは顔を今日一番真っ赤にしてシュンの方を素早く見た。
「な、何を言っているんだ!?」




