深夜
「のわー!!! 歩くの疲れたのじゃー!!!」
サキタマが駄々をこね始め、チフリが冷たく言う。
「それじゃ、ここへ置いていきましょう」
「嫌じゃー!!!」
見かねた商人代表のゴンザレスがサキタマに話しかけた。
「嬢ちゃん、馬車に乗るかい?」
サキタマは目を輝かせて返事する。
「乗るのじゃ!!」
そこでシュンが流石に待ったをかけた。
「ゴンザレスさん、依頼人の方にご迷惑は掛けられません」
だが、ハッハッハとゴンザレスは笑う。
「大丈夫ですよ、これぐらいのお嬢さん一人ぐらいなら馬にも大した負担にはなりませんからね」
なおも断ろうとするシュンだったが、素早くサキタマは馬車に乗ってしまった。
「そろそろ出発しますかな」
ガラガラと車輪を引いて馬車が動く。その周りをシュン達は歩いていた。
特に何もなく、夕暮れになり野営の準備を始める。
寝床は自分達で準備するシュン達であったが、食事は商人たちのご厄介になる契約だった。
小規模キャラバンとはいえ、肉にパンとスープも付いた豪華な食事だ。
シュンはキャラバンの食事を受け取ると、申し訳なさそうに言う。
「すいませんねぇ、食事までごちそうになっちゃって」
食事を運んだキャラバン隊員はいえいえと笑顔を作る。
「そういう契約ですから、どうぞお召し上がりください!」
サキタマはそう言われる前に食べ始めていた。
「んおー、美味い! 美味いのう!!」
一発サキタマの頭をしばいてからシュン達も食べ始める。
大人数の為、がちがちに固まっていたユキミを見てシュンは声を掛けた。
「ユキミさん、大丈夫かい?」
ユキミは顔をこわばらせながら返事する。
「だ、大丈夫!!」
シュンはフフッと笑う。
「適当に大丈夫かと聞かれて、大丈夫って返事する人は大体強がっているもんだ」
ユキミは緊張でカタカタ震えながらも、言葉は逆の事を言う。
「だ、大丈夫! 本当に大丈夫だ! 緊張なんてしていない!!!」
強がるユキミをシュンは優しく笑った。
夜も警備は続く。シュン達は交代で魔物や不審者の警備にあたった。
最初にシュンが見張りをし、少し寝たユキミが交代にやってくる。
「シュン、交代するぞ」
ユキミに気付くと、たき火の前で座っているシュンが振り返った。
「あぁ、ユキミさんか。もう少し寝ていても良かったのに」
ユキミは少しだけ微笑んでくれる。
「お前だけに無理はさせられないからな」
だが、シュンは自嘲気味に言った。
「俺はこんな事ぐらいでしか役に立てないからな」
すると、ユキミは慌てて言う。
「そ、そんな事はない!! シュンはもっと自信を持て!」
そこで、シュンは意地悪な質問をする。
「じゃあ、例えば? どんなことに役に立つ?」
ユキミは急いで考え出す。
「え、えーっと、えーっとだな……」
シュンは大きく笑う。
「ほらな、出てこないでしょ?」
ユキミは思いついて言う。
「シュンは、優しい!! いい奴だ!!」
その褒め言葉を素直に受け取らないシュン。
「ユキミさん。女性の言う『優しい人』ってのは『特に良い部分無し』で『いい人』ってのは前に『どうでも』が付くって話ですぜ?」
言われ、ユキミは落ち込んでしまった。
「そ、そんなつもりは無かった……。すまない……」
シュンはまた笑う。
「意地悪しすぎましたかね、ユキミさんは本心で言ってくれたんだろうと分かっていますよ。ありがとうございやす」
そう言われると、次にユキミは照れ始めた。
「そ、そうか……」




