月が綺麗ですね
ユキミの様子にシュンは頭の中に疑問符が浮かぶ。
「どうしたんだユキミさん?」
髪をフリフリし、慌てながらユキミは答える。
「い、いや、シュンが、その、つ、月が綺麗だって……」
「まぁ、ほら? 月は綺麗でしょ?」
ユキミは段々と、自分だけが勘違いしていたことに気付く。
「あ、あぁ、月は綺麗だな……。えっと、私の地元では、有名な文学者が、その……」
シュンは、またまたユキミが言っている事の意味が分からなかった。
「ぶ、文学者? 何でいきなり?」
ユキミは顔を赤くさせながら言い続ける。
「そ、その、文学者が月が綺麗ってのは、その、あ、あ、あ、相手がすすす」
シュンは上半身を起こし、暴走するユキミに優しく言った。
「ユキミさん、まぁまぁ落ち着いて」
少し落ち着いたユキミは俯いていた。
「す、すまん。何でもない」
シュンは良く分からないまま、また寝そべった。
落ち着いたユキミはシュンに話しかける。
「シュン。見張りは私がやる。テントに戻って休むといい」
そう言うも、シュンは横になったまま目を瞑る。
「外の方が気持ちいいんでね、このまま寝ますわ」
ユキミはそのシュンの言葉に短く返す。
「そ、そうか……」
揺らめくたき火を見ながらユキミはシュンに話しかけた。
「な、なぁ、寝たか?」
返事は無い。
ユキミは自分の心にあった言葉を出す。
「正直言って、一人の見張りは心寂しかったんだ。シュンが居てくれて良かった……」
「美人にそう言ってもらえて良かったですよ」
シュンが突然返事をしたので、ユキミはビクッとしてしまう。
「き、き、貴様シュン!! 起きていたな!!」
だが、またも返事は無い。
一本取られたなとユキミは顔を赤くして俯いた。
しばらくして、次はチフリが見張りをする時間が近付いてくる。
30分前にはチフリは外へやって来た。
「ユキミ先輩、代わりますよ。って、なんでシュン先輩も居るんですか?」
振り返ってユキミは答える。
「ち、チフリ。まだ、早くないか? シュンはここで寝るって……」
はぁっとため息を付いてチフリは激しめにシュンを揺さぶって起こす。
「うわっ、なんだ!?」
チフリは呆れながら言った。
「交代の時間です」
シュンは寝ぼけながら返す。
「別に、俺はこのまま寝ていても良かったんだがな」
嫌そうな顔をしてチフリが言った。
「シュン先輩と二人きりなんて、嫌なので」
「うぉーん! 辛辣ぅー!!!」
チフリが見張りを交代し、それぞれ別のテントへユキミとシュンは戻る。
やがて、空は明るくなり、月は隠れ、朝日が昇り始めた。
「よう、おはようチフリさん!」
シュンが一人で伸びをしながらチフリの元へとやって来る。
チフリは短く挨拶を返した。
「おはようございます」
遠くの朝日を見ながらシュンは言う。
「いやー、清々しい朝だ」
それに対しての感想の代わりに、チフリはシュンに告げた。
「シュン先輩。ユキミ様に手を出したら命はありませんよ?」
釘を刺され、清々しい朝から一変し、シュンは嫌そうな顔をする。
「わーってるって」




