年末年始はなんやかんやでゆっくりは寝れない件
カーテンの隙間から初日が入り込む。肌を突き刺すほどに冷えた部屋。
朧げながら意識が眠りから覚めていく。しかし、布団から出るのは極めて困難な空気。毛布と布団にくるまった上にもう一つの毛布に抱きついてぼんやりと過ごす。
目を閉じているのも疲れてきたが布団からは出れずに暇になってきた頃、朝っぱらにも関わらず、元気な足音が近づいてくる。
その足音の主はノックをせずに部屋に入ってきた。
「に!い〜〜〜!朝だよ!」
「寒い」
眠気を一切感じさせない玲衣はカーテンを開け始めた。
瞼を閉じても貫通してとても眩しい光が差し込んできた。俺はほぼノータイムで抱き枕代わりの毛布に顔を埋める。
「起きて!朝ごはんできてるよ!」
「んー、あと10分だけ」
「それ絶対寝るじゃん!にい起きて」
「寒い」
玲衣は「にいはしょうがないなぁ」と聞こえそうなため息をついて俺に近づいた。
そして勢いよく掛けている布団を引き剥がす。
一般的な寝方の人ならば掛け布団を掴んでいるため抵抗できる場合が多いだろう。だが俺は両手両足で抱き枕代わりの毛布を抱いているため無抵抗に引き剥がされた。
寒さにびっくりして手足が緩んだ隙に抱き枕代わりの毛布も取られる。
寒さに身体を丸める俺の肩を玲衣が揺らす。
「に〜い、初詣行くんでしょ?遅れちゃうよ?」
「寒い。あったまってきたら起きる」
寒さに震えながら壁の方を向く。
その様子を見た玲衣はなにやら声を出しながら考える仕草をした(と思う)。
(やばい、寒すぎて正直動きたくなってきた。早く暖房とストーブがガンガン効いたリビング行きたい………。でもここまでして寒いからと動き出すのもなんか恥ずかしい。玲衣に絶対揶揄われる)
頭の中で意地を張った後悔をする事数秒、俺の背中側のベッドが沈んだ。
背中越しでも玲衣の気配が近づいてくるがはっきり分かる。
俺の背中の近くに玲衣が寝そべる。
俺は犬ではないから匂いでは判別できない。大きな音が聞こえたわけでもない。壁の方を向いている為、見えていない。味がする訳でも無い。
だけども首筋に当たる息、心地良い温かさの体温と雰囲気で動きが手に取るように分かる。
少しづつ強く感じる玲衣の息。距離が近づくにつれて俺の鼓動は部屋中に響いても不思議じゃないほどに大きく、そして速くなる。
「寒いなら私が温めてあげる」
「っっっ!」
悪魔と天使の交じった、男にとって良いところ取りをした表情で玲衣が囁く。
その言葉は耳が溶け、全身の力が抜ける魔力のようなものが宿っている。
「否定しないってことはやっちゃうよ?」
「あっ…、いや…」
否定しようとしても先ほどの囁きの威力は凄まじく、声になりきらない言葉しか出せなかった。




